【玉ノ井親方 視点】2差単独首位の尊富士 今は強さしか見えない。ただ、そう簡単に…

[ 2024年3月19日 19:53 ]

大相撲春場所10日目   ○尊富士(押し出し)大の里● ( 2024年3月19日    エディオンアリーナ大阪 )

<大相撲10日目>大の里を押し出しに破る尊富士(撮影・井垣 忠夫)
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 尊富士の強さが際立つ一番だった。これが勢いの怖さかもしれない。

 立ち合いは腕をクロスさせて大の里に右を差させないようにした。左を差して、右をのぞかせながら前に出た。

 対する大の里は右を差せずに右上手を取る。それが勝負の明暗を分けた。

 尊富士は1メートル84、143キロの体だが、1メートル93、175キロの大の里からすれば小柄。まわしを取れば、投げて勝てると判断したのだろう。

 体を開きながら呼び込むように上手投げを打とうとした。だが、尊富士の前に出るスピードと厳しさが想像以上だった。

 投げを打つことなどできず、そのまま後ろに下がって土俵を割った。

 尊富士の強さしか見えない相撲だった。

 新入幕の力士が10連勝するのは、1960年(昭35)初場所で11連勝した大鵬さん以来、64年ぶりだそうだ。左を差して前に出る相撲に徹していることが結果につながり、集中力も日に日に増している感じだ。

 明日、11日目は新大関の琴ノ若と対戦。琴ノ若も王鵬を一蹴して、安定感は大関陣の中で一番ある。

 琴ノ若にすれば、大関として新入幕の力士に負けられない思いもあるだろうが、それが重圧にもなる。

 一方の尊富士は大関の胸を借りるつもりで、思い切ってぶつかることができる。そう考えると尊富士に分がありそうに思える。だが、琴ノ若は簡単に懐に入られないように、立ち合いで少し横にズレて当たるなど、何か工夫してくるだろう。

 尊富士が大関に勝てば視界は広がるが、何が起きるか分からないのが相撲の難しさ。そう簡単に勝ち続けられるものではない。
(元大関・栃東)

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