京産大 史上初主将3人制で23季ぶり関西制覇 3つのスローガン「自主性」「進化」残すは「日本一」

[ 2021年12月23日 05:30 ]

<京産大ラグビー部>表彰式で笑顔を見せる共同主将の(左から)檜垣、広田、平野

 関西大学ラグビーAリーグを制した京産大が、全国大学選手権で初の日本一へ挑む。チームの初戦は26日の準々決勝で、熊谷ラグビー場(埼玉県熊谷市)で日大と対戦する。今季は、チーム史上初となる主将3人制を敷いて、23季ぶり5度目の関西制覇を果たした。次は全国で歴史の扉を開く。

 令和版の三本の矢だ。京産大は今季、チーム史上初となる主将3人制を敷いた。それぞれが個性を生かし、お互いを支え合った。

 トロイカ体制の一角を担ったSH広田瞬は「3人がいろいろな視点でチームを見ていた。1人なら全てを背負わなければいけないが、負担も分散できた」と効果を説明した。

 テンポのいい球出しが光る広田は、バックスリーダーも務める。「人前で話すのが得意でない」と語る職人かたぎのため、「ランニングで一番にゴールし、タックルで一番、体を当てた。先頭に立って、チームを鼓舞することを心がけている」と背中でチームを引っ張ってきた。

 スポークスマンはプロップ平野叶翔(かなと)が担った。強いスクラムと、ジャッカル(タックル後に素早くボールに絡んで反則を奪うプレー)を武器にFWをまとめた。ゲームキャプテンも務め、ほがらかながら一本筋が通った性格でラグビーに欠かせぬレフェリーとのコミュニケーションでも能力を発揮した。

 フランカー、No・8桧垣大宇(たいう)は、2年から活躍した期待のFWだったが、今春、練習中に右膝前十字じん帯を損傷し、今も戦線離脱中だ。悔しさを押し殺して、相手の分析やセットプレーの研究を買って出て、チームの頭脳になった。

 メンタル面でも周囲を支えた。今春、同大に20―21で惜敗。落胆が大きかった広田は「故障で外から見ていた桧垣に、“試合内容は負けていない。やってきたことが出せていた。引きずったら負け”と言われて、救われた」と振り返った。


 ピッチ内は平野と広田がコントロール、桧垣が裏方としてサポートした。強固なトライアングルが勝負強いチームをつくった。近大、同大、天理大との接戦に全て競り勝った。関西を7戦全勝で制し1998年度以来、23季ぶり5度目の栄冠をつかんだ。

 スクラム、モールで主導権を握り、ボールを早く大きく動かしてバックスで仕留める伝統の形は、大きくは変わらない。プラスαとして、3人は、新チーム発足時に3つのスローガン、「日本一」、「進化」、「自主性」を設定した。

 3つのうちの2つは達成し、残るターゲットは「日本一」だけだ。全国大学選手権の最高成績は、7回ある4強。初の決勝、そして頂点へ、広田は「関西を優勝して実力を実感している。3人でやってきたことを日本一という形にできれば」と力を込める。今年こそ関東の壁を打ち破る。

 《CTBジェイミー・バカラヒは相手を蹴散らす筋肉の塊》
 CTBジェイミー・バカラヒ(4年)はバックスの突破役だ。パワフルな突進で、相手を蹴散らす。ベンチプレス170キロはバックスNo・1の数値で、1メートル77、100キロの体は筋肉の塊。全国大会で「フィジカルバトルで貢献したい」と、肉体自慢に燃えている。トンガ生まれで、日体大荏原入学のために来日した。大学を選ぶ際、厳しいと評判の京産大の練習に、当初は不安を抱いていた。しかし、今では「厳しいところを選んで良かった。高校の時は全然、走れなかったが、今は試合で動ける」とスタミナがつき、欠かせぬ戦力に成長した。学校生活も奮闘している。日本開催のW杯に沸いた19年。体育の講義で、教授から「ラグビーの魅力を語る授業をして」と依頼された。ルールや試合の楽しみ方を、日本語で説明した。「みんなが一番知りたがっていたのは、スクラムの仕組み。でも、僕、バックスだから経験がない。自分もスクラムは怖いですと答えました」。大人数の前でプレゼンテーションをしたのは、今でもいい思い出だ。全国大会では「ひたむきにがんばるところを見せたい」と力を込める。さらりと口にするが、「ひたむき」と同じ意味を持つトンガ語はないそうで、「最初は意味が分からなかった」と苦笑いする。我慢強く、一つの目標に向かうという精神を、仲間や、大西健元監督に教えられた。最終学年になり「ひたむきさ」を体現する立場になった。同じ留学生、ロックのアサエリ・ラウシー(3年)とフナキ・ソロモネ(1年)にも見本を示す。攻守で体を張り、勝利に貢献する。

 《前に出るFW第3列が堅守のカギ》
 FW第3列の活躍なくして、23季ぶりの関西制覇は実現しなかった。フランカーの福西隼杜(3年)、三木皓正(2年)、No・8藤井颯(4年)の3人は、タックルの雨を降らせ、相手の攻撃を封じた。さらに、タックル後にボールに絡むジャッカルも連発。今季の堅守を支えた。広瀬佳司監督は「3人がタックルで前に出るから、周囲もディフェンスで勢いが出る」と信頼を寄せている。バックスはSO家村健太(3年)のハンドルさばきに注目。WTB松岡大河(2年)、船曳涼太(2年)、CTB堀田礼恩(4年)はスピードに優れる。敵陣で反則を得ればFB竹下拓己(3年)の出番。現役時代、「スーパーブーツ」の異名を取った広瀬監督に仕込まれたキックで、得点を積み重ねる。

 ▽京産大ラグビー部 1965年(昭40)の大学開学とともに創部。大西健元監督が73年に就任し、74年Aリーグ昇格。同氏が指揮を執った47シーズンで、関西リーグ4度制覇(90、94、97、98年度)。全国大学選手権には82年度に初出場し、今年度で35回目の出場。最高成績は4強(83、85、90、93、94、97、06年度)。主なOBは、世界殿堂入りをした大畑大介、元日本代表の吉田明、田中史朗ら。

続きを表示

この記事のフォト

2021年12月23日のニュース