石川遼と星野陸也が日光で過ごした「特殊な1週間」

[ 2021年7月9日 08:30 ]

<日本プロゴルフ選手権第1日>同組でラウンドする星野陸也(左)と石川遼(撮影・西尾大助)
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 【福永稔彦のアンプレアブル】男子ゴルフのメジャー日本プロ選手権は4日まで栃木・日光CCで開催され、金成ヒョン(22=韓国)の日本ツアー初優勝で幕を閉じた。

 最終日の終盤まで池田勇太(35フリー)、稲森佑貴(26=国際スポーツ振興協会)との激しい優勝争いが繰り広げられ、会場に足を運んだギャラリーにとっても見応えのある戦いだったはずだ。

 この大会、少し違った形で注目を浴びたのが石川遼(29=CASIO)と星野陸也(25=フリー)である。

 2人は2週前、海外メジャー全米オープンに出場した。帰国後は2週間の隔離が求められるため、本来なら日本プロ選手権には出場できないはずだった。

 しかし、大会を主催する日本プロゴルフ協会などが政府に働きかけ、ともに五輪の強化指定選手だったことから特例措置で出場が認められた。

 ただし、日本プロゴルフ協会が作成し、政府から了承を得た対応マニュアルに則り、厳しい感染防止対策を取ることが条件だった。

 2人はいわゆる「バブル」の中で生活する必要があった。6月27日に帰国すると、空港から関係者の車で日光CCへ直行した。

 大会中は日光CC内のロッジの1フロアを確保。そのフロアの部屋に宿泊し、食事はコースで内のレストランで作った料理をロッジ内のラウンジで取る。試合と練習以外に、そのフロアから出ることは許されなかった。

 練習場には2人の専用打席が設置され、他の選手や関係者と接触しないようにガードマンと運営スタッフが警備に当たった。使用したボール、カゴなど用具は全てスタッフが消毒。関係者からの物品の受け渡しも直接行うことは禁止された。

 練習ラウンドは2人が同組か単独で行うことが義務づけられ、予選ラウンドも同組のペアリングになった。

 石川、星野と同様に全米オープンに参戦した浅地洋佑(28=フリー)は強化指定選手でなかったため、特例出場の許可が下りなかった。そのため2人の出場に対しては、批判的な意見もあった。

 しかし、日本プロゴルフ協会関係者は「特別扱いしているという声もあるが、2人が難しい環境の中でも大会に出場してくれたことも分かってほしい」と訴えた。

 2人のバブル生活はホールアウトと同時に終わったわけではない。予選落ちした星野はコースで決勝ラウンドが行われた週末もロッジで隔離に専念。週明け、全英オープンに出場するため渡英した。

 石川は大会後、首都圏の指定された場所でさらに1週間の隔離生活を送る。練習のための外出は認められているが、日本プロゴルフ協会関係者が同行し、監視することになっている。

 19位で大会を終えた石川はこんなコメントを残している。

 「かなり特殊な1週間になったけど、覚悟していたよりも不便、不自由を感じることはなかった。果たしてこれが正しかったのか、いろんな見方はあると思うけど、当事者として気をつけることは気をつけてルールに従ってプレーしようと臨んだ。サポートしてくれた方、ゴルフ場の方、他の選手たちにも戦いにくかったかもしれないので感謝したい」

 最終日、石川の組には最終組に劣らない大勢のギャラリーがついていた。今回の措置にはさまざまな見方、意見がある。それでも2人が出場したことに意味はあった。そう考えている。(スポーツ部専門委員)

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