【玉ノ井親方 視点】初顔に破れた朝乃山、安易に組みすぎ 照ノ富士の相撲を参考にすべき

[ 2021年5月16日 20:56 ]

大相撲夏場所8日目 ( 2021年5月16日    東京・両国国技館 )

<夏場所8日目>内掛けで豊昇龍に敗れた朝乃山(撮影・久冨木 修)
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 朝乃山が初顔の豊昇龍との一番で、屈辱的な負け方をした。右を差して、左で上手を取る狙い通りの形に一見なったが、胸を出して組んでいたため、内掛けで体勢を崩され、土俵に仰(あお)むけにさせられた。

 いつも言っていることだが、朝乃山は攻めがまともすぎる。右四つになれば力を出せるという自信があるから、その形を狙うのだろうが、相手も大関に十分な状態にさせないように研究してくる。

 現実と理想は違う。万全の体勢になるまで慎重に取るのではなく、もっと自分から動くべき。前に出ながら右を差す。左を取ったらすぐに引きつけて投げを打って揺さぶってみる。先手々々で動いていれば、この日の展開も違っていたはずだ。

 豊昇龍は前日の貴景勝戦で、立ち合いで変化して墓穴を掘った。そのため、朝乃山戦は思い切り当たって、やれることをやり切ろうという気持ちだったはずだ。四つに組んでからの内掛けは時々見せるが、大関は予想もしていなかったに違いない。不意を突かれたような感じだった。警戒していれば、安易に胸を出して組むようなこともなかったはずだ。

 先日もコラムで書いたが、朝乃山は同じ右四つの照ノ富士の相撲をもっと参考にした方がいい。大栄翔戦の照ノ富士は前かがみになって、前傾姿勢の角度を保ったまま差しにいった。だから前に出る圧力もあった。逆に朝乃山は無理にまわしを取りにいってしまい、胸を出して上体が浮いたり、上手を取れないと下手一本の相撲になってしまう。そういうところが照ノ富士との差になって表われている。

 今の朝乃山は壁にぶつかっている時期だが、私はそれも悪くないと思っている。相手が研究してくるなら、自分はそれ以上に研究して、足りない部分を補っていく。それを続けていけば、結果はおのずと出てくる。その積み重ねが将来につながる。(元大関・栃東)

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2021年5月16日のニュース