データで見る八村の第46戦 流れを変えた8回のドリブル スティールされることの意味

[ 2020年8月8日 13:29 ]

ペリカンズのホリデーにボールをはたかれる八村(AP)
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 第2Qの5分すぎ。ウィザーズは41―39と2点をリードしていた。しかしここで目を疑うようなオフェンスがあった。もし「流れが変わった」という部分を“一点”に求めるならここだ。ミスをしたのは八村塁(22)だが、その責任はコート上にいたガードのイッシュ・スミス(32)、ジェローム・ロビンソン(23)の両ガード、フォワードのトロイ・ブラウンJR(21)、センターのトーマス・ブライアント(23)も負わなくてはいけない。

 フロントコートに入ったウィザーズはまずボールを持ったロビンソンがハイポスト近くにいたトーマスをスクリーンにして右に回り込もうとした。しかしその右斜め前にいたペリカンズのドリュー・ホリデー(30)の動きが視野に入って、バックコートから上がってきたばかりの八村にパスをしてしまった。

 問題はここからだ。右サイドにいた八村の前にはウイング・ポジションにブラウンJR、コーナーにはスミスがいた。つまりサイドライン際の前方に味方が2人。スペースがないと判断したスミスはベースライン際を抜けて逆サイドに行ったが、まずこの選択が決定的に違う。八村をマークしていたのは2018年と19年にオール守備チーム(18年はファーストチーム、19年はセカンドチーム)に選出されているホリデーなのだ。

 76ers時代を含めて通算712試合に出場して1試合平均のスティール数は1・5回。今季60試合で99回のスティール数はリーグ8位(平均1・6回は10位)にランクされている。だからリスクを回避するには逆サイドに行くのではなく、トップに上がってローリングしながら八村からボールをもらうことだったはずだ。背番号8を見放したとき?ショットクロックは残り17秒。なぜ時間がたっぷりあったのに、ホリデーと正対している八村を取り残したのかがわからない。

 次にブラウンJR。八村はロビンソンからボールをもらったとき一瞬、前に行こうとしている。ところがブラウンJRが目の前にとどまったままだったのでスペースが空いていなかった。やむなく八村はドリブルしながら後ろに下がる。ペリカンズのイートワン・モーア(31)を背にしたブラウンJRは左手をコーナーの方に指し示してリードのパスを要求しているが、重心を低くしたホリデーに密着された八村にパスをする余裕はなかった。

 ならば最初にパスをしたロビンソンがボールをもらいに行かなくてはいけないが、正面左で立ったたまま動いていない。ボールにミートとしようという意思をまったく見せていなかった。

 残った解決策は八村とは逆の左サイドにいたロビンソン、スミス、トーマスの3人が協力して1人をオープンにすることだが、3人全員で八村の動きを見ていた。これはウィザーズのオフェンスが安定しない要因だと思うのだが、ボールのないサイドでの“ひと仕事”がこの場面でも見られなかった。

 なぜ体の大きいブライアントはベースライン際を抜けてきたスミスの“壁”にならなかったのだろう?スミスがそれを利用してロビンソンに代わってトップに上がれば、八村がパスをするターゲットがそこにあったと思う。

 さて、このあとどうなったか?ホリデーの圧力に押されて後退した八村は右手で7回もドリブルをするはめになり、8回目でレッグスルーから左手に持ち替えようとしたところをホリデーにスティールされた。ボールが股の間を抜けた瞬間を狙われていた。正対しているガードの選手に、フォワードの選手が肩を回さないままにボールを持つ手を変えたことが原因。ホリデーはそのまま速攻でレイアップを決め、スコアは41―41の同点となった。

 このプレーでホリデーは八村のハンドリングに弱点があることがわかったのだろう。193センチのガードであるにもかかわらず、スモール・ラインアップとなったときには身長で10センチ上回るウィザーズのルーキーとマッチアップし、後半にも八村が両手で持っていたボールをはたき落としている。スコアだけ見ると流れが変わったのは第3Q以降の「線」のような感があるが、伏線となったのは相互協力を得られずに孤立してボールを奪われた第2Qの「点」だった。

 スティールは個人記録の中でもっとも地味な部門かもしれない。しかしホリデーのように1試合で1回以上を記録している“ディフェンダー”はその1回だけで試合の流れを変える可能性を秘めている。ホリデーはウィザーズ戦で両軍最多の28得点をマーク。ターンオーバーは7回と多かったが、それを2回のスティールで帳消しにした。これこそがNBAのゲームメーカー。今季46試合でスティール数が37回の八村にとって、目の前にいたライバルは何かを教えていたように思う。(高柳 昌弥)

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