サンウルブズまさかの除外 申し訳なさと怒り“太陽”は沈ませない!

[ 2019年4月23日 11:00 ]

サンウルブズのメンバー・姫野=中央(撮影・吉田 剛)
Photo By スポニチ

 【W杯への鼓動】スーパーラグビー(SR)に16年から参戦する日本のサンウルブズ。日本代表を強化し、国内に新たなラグビー文化を築いている。19年W杯の最大のレガシー(遺産)の一つになるはずだったが、主催者SANZAAR(サンザー)との参戦契約が切れる20年シーズン限りのリーグ除外が決まった。チームを運営するジャパンエスアールの初代代表理事を務めた田代芳孝特別顧問(68)は今、何を思うのか。

 ◆「存在価値をファンと選手感じている」
 今季ホーム最多の1万6805人の観衆を集めた19日の秩父宮ラグビー場。強豪ハリケーンズ(ニュージーランド)を追い詰めた試合内容はもちろん、施設上の多くの制約を受けながらも、精いっぱいの趣向を凝らした演出で、国内のSR公式戦初のナイトゲームは大いに盛り上がった。

 何よりファンの感度が鋭い。スペクタクルなプレーに声が上がり、ターンオーバーやトライシーンでは耳をつんざく大歓声。そしてスクラムでは狼の遠吠えをまねた「アウォーン」の雄叫び。日本代表戦ですら築けていない文化がそこにある。

 「寂しさというより、怒りと申し訳なさ。なぜもっと大事にしないのか。チーフスやワラタスに勝って、喜ぶような醍醐味(だいごみ)が他にあるのか。SRの魅力を超えるものが簡単にできるとは、とても思えない。それを考えれば、日本協会は必死で残留する努力をしなければいけなかった」

 やるせなさそうに語る田代氏。どんぶり勘定だった日本協会の財務にメスを入れ、働きが買われて13年に理事に就任した。SR参入でも財務を担当。「エディーさん(ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ。サンウルブズでディレクター)は“金に糸目をつけずにやれ”と言った。理解しつつもきつかった」と衝突がなかったわけではないが、立ち上げで大きな役目を担った。

 日本協会が参戦継続に積極的に動かなかった理由は、財務負担の大きさが一因とされる。だが「確かにリスクはあるが代表強化費を実質的にぐっと軽減した。スポンサー料も初年度は目標を満たさなかったが、今は超えている。価値も上がっている」と話す。さまざまな要人と折衝してきた経験から、サンザーについても「割と臨機応変。マリノスCEOも本当は残したいと思っているはず」。だからこそ日本協会の消極姿勢に首をかしげる。

 ◆もう一度交渉すべき
 今後、サンウルブズや日本代表強化策はどうあるべきか。協会からは何一つ具体案が示されていないが、田代氏は「もう一度、参戦できるように交渉すべき。存在価値をファンと選手は感じているのだから」と断言した。世界最高峰とされるリーグに、W杯で1勝しかしていなかった当時の日本が参入できたこと自体が画期的だった。千載一遇の機会を、たった5年で終わらせるべきではないとの考えだ。

 国内のトップリーグは、現在もプロ選手と社員選手が入り交じってプレーする。世界ではプロ化が進み、今も急速に競技レベルが上がる。取り残されないためにも、プロチーム=サンウルブズの存在意義は大きい。「プロフェッショナルだといろんなものを残す」。サンウルブズの有形無形の価値が、20年以後の日本ラグビー界にも必要不可欠と信じている。

 ▽サンウルブズの除外 3月22日にサンザーが正式発表した。同日、東京都内で日本協会の坂本専務理事が会見。サンザーが提示した21年以降の参戦継続条件が、15チームを維持した場合と除外した場合の放映権料の差額の負担、他チームの渡航費の負担などだったと説明した。負担額は一部で年間10億円と報じられ、発表直前に通達されたと主張。

 一方でサンザー側は、昨年の夏ごろには諸条件を日本協会に提示したとしており、両者の主張は食い違っている。

 ◇田代 芳孝(たしろ・よしたか)1950年(昭25)8月9日生まれ、東京都世田谷区出身の68歳。日比谷高―京大法学部。ラグビーは高校から始め、京大3年時に全国大学選手権に出場。宿沢広朗(元日本代表監督)擁する早大と対戦。4年時は主将を務めた。2000年に日本協会の財務担当となり、13年6月に理事就任。15年5月にジャパンエスアールの代表理事に就いた。現役時代のポジションはフランカー。

 《日本代表候補練習 田村不在の好機に松田10番アピール》ラグビーW杯日本代表候補は千葉県浦安市で今季国内第2戦となる27日のウェスタンフォース戦(秩父宮)に向けて練習を再開し、SO松田力也(パナソニック)が「たぶん10番で先発することになる。得意とする(自ら走る)仕掛けを見せたい」と語った。20日の国内第1戦で10番をつけた田村(キヤノン)がサンウルブズに合流したため不在。出番が回ってくる可能性が高いだけに「うまくゲームコントロールしたい」と意気込む。その試合では12番で先発し、田村のプレーを観察。「隣で学んだ」と手本にしつつ、10番争いで先輩の背中に近づく。

 《1次リーグで激突 スコットランド堀江ら警戒》ラグビーのW杯1次リーグA組で日本と対戦するスコットランドのグレゴー・タウンゼンド監督が22日、公認キャンプ地となる横浜市の高校生を対象としたクリニックに参加し、日本代表の印象について「とてもスキルレベルが高い。ファンの応援もあり、タフな試合になるだろう」と語った。19日に行われたスーパーラグビーのサンウルブズの試合や、20日の日本代表候補の強化試合も観戦したという。堀江(パナソニック)らをキープレーヤーとして挙げ「両試合を通じてアタックがよくできていた。キックもうまく使えていたので、気をつけないと」と警戒した。

続きを表示

この記事のフォト

2019年4月23日のニュース