伊調、残り10秒大逆転V!川井梨にリベンジ 五輪5連覇へ第一歩

[ 2018年12月24日 05:30 ]

レスリング全日本選手権最終日 ( 2018年12月23日    東京・駒沢体育館 )

優勝しガッツポーズの伊調(手前は川井梨)(撮影・西海健太郎)
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 視線の先に5連覇が見えた!女子57キロ級決勝で五輪4連覇の伊調馨(34=ALSOK)が、川井梨紗子(24=ジャパンビバレッジ)との五輪金メダリスト対決を3―2で制し、3年ぶり13度目の優勝を決めた。残り3秒で逆転したリオ五輪をほうふつさせる、残り10秒での大逆転劇。前日敗れた川井梨に雪辱を果たし、2年間のブランクを経ても世界トップクラスの実力を証明。東京五輪の代表争いでもライバルを一歩リードした。

 普通の選手なら当たり前のことかもしれない。「やったー!」と声を上げ、手を叩き、両手でガッツポーズ。だが伊調がやるとそれは特別な意味を持った。「ガッツポーズは満足している感じがして好きじゃないけど」。厳しい自己評価で笑顔もめったに見せないのが伊調。世界選手権はもとより、五輪でも見せなかったような単純な喜びの姿に、この優勝への思いが詰まっていた。

 前日の1次リーグ初戦で敗れた川井梨との再戦は、同じようにロースコアでのせめぎ合いとなった。「川井選手の守りの強さだったり、自分の勇気のなさだったり」。互いに技による得点がないまま、残り30秒で1―2。だがここからが五輪4連覇の真骨頂だった。

 「チビっ子レスリングの時代から残り30秒の練習を欠かさずやってきた。それが最後に出たのかな」。スタンドで見守った姉・千春さんは試合後にそう語った。八戸クラブで指導してきた恩師の沢内和興氏も「ラスト30秒まで競っていけばと思っていたんだ」とニンマリだった。

 「ラスト何秒かもよく分かってなくて、キャッチすることだけを考えていた」。伊調は相手が一瞬引いたのを見逃さず回り込み、右脚をつかんだ。粘る川井梨をねじ伏せて3―2。残り10秒。「どうやってタックルに入ったのかも覚えてない」。一朝一夕で身についたわけではない粘り。リオ五輪の時のように、それを発揮した大逆転だった。

 2月に発覚したパワハラ問題で悩みながらも、4月に本格的に練習を再開。周囲の支えの大きさ、そしてレスリングへの愛情を再確認した。「練習が楽しくて髪を結ぶ時間ももったいなかった」と髪の毛を15センチもばっさり切った。ブランクを乗り越え、現役世界女王の川井梨を倒したことで「全く見えなかった」という東京五輪もようやく「ボヤっとだけど見えた」

 36歳で迎える東京五輪まで、あと2年。「伸びしろはある。感覚を全て取り戻した上で進化していきたい」と語る伊調のレスラー人生、そのラストスパートがここから始まった。

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2018年12月24日のニュース