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カペッロイズム“負けないサッカー”浸透がカギとなるドイツ戦

[ 2010年6月25日 15:21 ]

スロベニア戦で勝利を喜ぶイングランドのカペッロ監督

 【リトバルスキー氏のスペシャル興奮観戦記 イングランド1―0スロベニア】イングランドは1次リーグで一番いい試合をしたと思います。徐々に連係は良くなっているし、運動量も増えた。何よりデフォーの先発起用が正解だった。ヘスキーよりスピードがあって、ゴールを決めた場面のように危険な場所に飛び込めますからね。ただ、途中で交代したルーニーは少し心配ですね。3月に右足首を負傷してから体調やリズムが戻っていないように感じます。

 1次リーグでやや苦しんだ感もありましたが、イングランドは優勝できるかと聞かれれば、可能性は十分あると答えます。なぜなら、優勝経験のある選手がいるからです。ルーニーはマンチェスターUで、ジェラードはリバプールで欧州CLを制している。私の経験から言えるのは、王者になるためには“チャンピオンプレーヤー”が必要だということ。技術的にうまいだけでは、その資格がありません。決勝戦のような重圧のかかる試合でも冷静に戦えて、PKを任されても成功だけを考えられるポジティブなメンタリティーを持つ選手が、W杯のような大舞台でチームを頂点に導けるのです。

 また、偉大な指揮官も不可欠です。90年イタリア大会で私たちが優勝した時はベッケンバウアー監督でしたが、選手起用が絶妙でした。決勝トーナメント準々決勝のチェコスロバキア戦から準決勝のイングランド戦で先発3人を入れ替えた。その中には私も含まれていて、準決勝では出番がありませんでしたが、休養十分で先発復帰した決勝戦は良いプレーができて優勝に貢献できました。

 イタリア人のカペッロ監督は、イングランドに足りなかったものをもたらしてくれる指揮官だと思います。1つは組織的な守備力で、1次リーグ3試合で1失点と結果が出ている。もう1つが“負けないサッカー”をする力です。一発勝負の決勝トーナメントで必要になるのがアウェー戦のような戦い方ですが、伝統的にイングランドはイタリアに比べて敵地で弱い。なぜなら攻撃的にいき過ぎる部分があるからです。残念ながら“いいサッカー”が“勝てるサッカー”とは限らない。06年大会でホームのドイツが準決勝で、優勝したイタリアに負けたように。カペッロ監督が選手の考え方を変えられるかが、カギになると思います。

 1回戦の相手は私の母国ドイツになってしまいました。66年イングランド大会決勝(イングランド4―2西ドイツ)のように、激しい戦いを繰り広げてきたライバル関係にある。ただ、私が対戦した時の印象で言えば、相手選手の方が神経質で感情的でした。なぜかって?W杯の優勝はドイツの3回(54、74、90年)に対して、イングランドは1回(66年)だけ。私たちの成功にジェラシーを抱いているからだと思います。そんな歴史的背景にも注目していただきたいですね。(元西ドイツ代表、ボルフスブルク・コーチ)

 ▼ピエール・リトバルスキー 1960年4月16日、ドイツ・ベルリン出身の50歳。現役時代はドリブルを得意とし、ケルン、市原(現千葉)、仙台などで活躍。西ドイツ代表通算73試合18得点。W杯は82年スペイン大会準優勝、86年メキシコ大会準優勝、90年イタリア大会優勝に貢献。引退後は監督として横浜FC、シドニーFC、福岡などを指揮。今月、ボルフスブルクのコーチに就任。

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2010年6月25日のニュース