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タダしい競馬の見方塾 ~有馬記念~

[ 2021年12月28日 17:10 ]

有馬記念を制した横山武騎手とエフフォーリア(左)
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 キャリア豊富な競馬記者Aがレース結果を詳しく解説する「タダしい競馬の見方塾」。今回は26日に開催された「有馬記念」編。

 見応えのあるグランプリだった。戦前の予想通り、パンサラッサが逃げ、距離を置いてタイトルホルダーが2番手。1000メートル通過59秒4も大方の予想通りだ。タメ逃げはしないが無茶な大逃走もない。あとはどこで後続がつかまえるか。それがエフフォーリアなのか、クロノジェネシスなのか…。

 勝負を先に”仕掛けた”のはエフフォーリア・横山武だ。3角を回ったところ。動きそうで動かなかった。横山武はタイトルホルダーで菊花賞を制しており、あの馬の強さは知っている。だから、きっと2番手を手応え良く進むタイトルホルダーを捕まえに動く…。クロノジェネシスのルメールは恐らくそう考えた。だから、目の前にいるエフフォーリアが動いたら、その直後に動こうと考えたはずだ。ところが…。目標が動かない。じれたことだろう。

 クロノジェネシスは動くタイミングを失ったことで窮地に追い込まれる。前にエフフォーリア、外にステラヴェローチェ。ストレスがかかった。残り150で先頭に立つエフフォーリア。ここしかないタイミング。坂でクロノジェネシスとの差が開く。内のディープボンドも並ぶまでの脚はない。最高のタイミングでタイトルホルダーを捉え、クロノジェネシスの気持ちを折った。完璧な騎乗だった。

 「あいつは凄い騎手になる」。父である横山典がそう語ったことがある。まだプロの騎手になる前だ。普段の生活からなぜ、そこまで予感できたのかは分からない。だが、周到に準備し、臆することなく果敢に勝負を仕掛ける肝っ玉は、明らかに名騎手となる素材だ。たぐいまれな分析能力、そして考え抜くことができる頭脳。将棋の藤井聡太4冠とも共通するものがある。将棋に藤井がいるように、競馬には横山武がいるのだ。

 ♤競馬記者A スポニチSIVA運営に携わる競馬記者。取材歴は20年超のベテランで、メディア出演実績も多数。本人いわく「運だけは人一倍」。

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