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タダしい競馬の見方塾 ~ジャパンカップ~

[ 2021年11月30日 17:30 ]

ジャパンカップを制したコントレイルと涙ぐむ福永騎手
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 キャリア豊富な競馬記者Aがレース結果を詳しく解説する「タダしい競馬の見方塾」。今回は28日に開催された「ジャパンカップ」編。

 初めて見るシーンだ。福永騎手が泣いていた。それも号泣に近い。いろいろな思いを背負っていたのだろうと思う。そして、コントレイルが勝つことで重荷を全て下ろすことができた。馬が見せた強さへの素直な感動もあっただろうし、感謝の気持ちもあっただろう。勝って、ここまで泣ける。この感受性の高さが福永騎手を名騎手たらしめているのだと改めて感じた。

 向正面でキセキが上昇してハナを奪い、一気にラップが上がった。1200メートルを過ぎてから11秒台が続いた。こうなると、力のある馬による真っ向勝負となる。先に先頭に立ったオーソリティ。間隔は詰まっていたが、それでも前脚を高く上げ、ファイティングポーズを示した。2着に終わったが価値のある銀メダルだ。シャフリヤールも伸びかけたが、いざオーソリティとコントレイルの年長馬2頭の間に飛び込もうとした瞬間、手前を替えてわずかに勢いが鈍った。しかし、このプレッシャーを経験したことが次走以降に生きることは間違いない。格下相手なら見下ろして走れるはずだ。こちらも収穫十分の3着。いい経験になった。

 そしてコントレイル。不利なく運び切った福永騎手も素晴らしいが、そのライディングに応えた馬も大したもの。馬体重は8キロ減。究極の仕上がりだった。3冠制覇の後は2、3、2着。このまま種牡馬入りさせるわけにはいかない。何としても汚名返上を。福永騎手の思いが痛いほど伝わってきた。福永騎手はプレッシャーと真正面から付き合うタイプだろう。重圧から逃げず、考えて考えて、突破する方法を見いだし、実行し、最後に笑う。しんどい作業と向き合える騎手だ。だから、ここで勝ち切ったことは福永騎手にとっても素晴らしい経験となった。単勝1倍台で迎えるラストランのジャパンカップ以上にプレッシャーのかかるシーンはなかなかないが、たとえば凱旋門賞で最後の直線、手応え十分に先頭に立ったとしてもプレッシャーでフォームが乱れるようなことはないはずだ。そして、そういうシーンが実際に訪れてほしい、福永騎手なら突破できると改めて感じた。

 ♤競馬記者A スポニチSIVA運営に携わる競馬記者。取材歴は20年超のベテランで、メディア出演実績も多数。本人いわく「運だけは人一倍」。

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