【王将戦】追い込まれた菅井竜也八段 攻めの姿勢も「1日目の失敗」挽回できず「諦めず頑張りたい」

[ 2024年1月29日 05:00 ]

第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局第2日 ( 2024年1月28日    島根県大田市・国民宿舎さんべ荘 )

<第73期ALSOK杯王将戦第3局・2日目>3連敗を喫し険しい表情で質問に答える菅井八段(撮影・会津 智海)
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 挑戦者の菅井竜也八段(31)は無念の3連敗。藤井王将に初めて向かい飛車をぶつけたが、ダメージを与える場面は訪れなかった。白星のないままカド番に立たされた振り飛車の第一人者。第4局では立ち直りのきっかけをつかみたい。

 どう指しても通じない。知恵を絞りきって繰り出す手順が、ことごとくはじき返される。敗色濃厚の最終盤、菅井はぼうぜんとしたまま中空に視線を向けるしかなかった。その姿勢に力感はもはやない。かすかなうなずきを繰り返し、持ち時間を1時間12分も余したまま駒を投じた。

 「1日目から失敗したというか…自分の考えに甘いところがあって、形勢を損ねる将棋になってしまった。ちょっと自分のふがいなさを感じています」。対局直後、約150人のファンで埋まった大盤解説場への移動中は頭を抱え、足取りは巨象のように重かった。ショックの大きさを如実に物語る。

 対藤井で初めて見せた向かい飛車は「ずっと同じ戦型(三間飛車)が続いたので、ちょっと違うことをやってみよう」という意図から採用したという。目先を変えた序盤戦は、確かに8冠王者を戸惑わせた。

 対抗型での戦いは他の誰と比べても一日の長がある。豊富な経験を背景に軽やかな指し手を進めたが、31手目に▲6六角と合わせ、2度目の角交換を行った後の35手目▲7八飛に代えて「普通は5八金(左)と上がるべきだった。一番普通に指すのが一番良かった」と痛恨の選択ミスを猛省する。

 これが「1日目の失敗」。以降は「攻めるしかなくなっているので、しっかり受けられると負けになる将棋」に追い込まれた。息苦しさを感じながらも55手目には正立会の福崎九段が「鬼手」と評した▲5六角(第2図)の勝負手を放ったが、正着の応手△7五歩を冷静に打たれて万策尽きた。普通の相手なら別の一局になっていた可能性もある。だが盤を挟むのは天下無双の絶対的王者。第1日に着手したわずかなほころびを見逃してくれるはずはない。

 後がない状況で迎える第4局へ「スコア的にかなり厳しいですが、最後まで諦めず頑張りたい」と必死さを示す菅井に、失うものは何もない。地面にはいつくばりながら食らいついていくしかない。

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