「鎌倉殿の13人」大河史に刻む死闘!中川大志が語る舞台裏 鎧は原形なく…小栗旬提案「ぶん殴られたい」

[ 2022年9月18日 21:00 ]

「鎌倉殿の13人」畠山重忠役・中川大志インタビュー(上)

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第36話。鶴ヶ峰。壮絶な殴り合いの末、畠山重忠(中川大志・上)は北条義時(小栗旬)にトドメを刺さず…(C)NHK
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 俳優の小栗旬が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は18日、第36回が放送され、俳優の中川大志(24)が“武士の鑑(かがみ)”ぶりを体現してきた武将・畠山重忠の“最期”が描かれた。「畠山重忠の乱」(元久2年、1205年)のラストシーンは、主人公・北条義時(小栗)との壮絶な殴り合い。時代劇異例の“肉弾戦”に、重忠の誇りと魂を込めた。中川に撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。鎌倉を舞台に、御家人たちが激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 第36回は「武士の鑑」。深まる北条時政(坂東彌十郎)と畠山重忠(中川)との対立。りく(宮沢りえ)を信じる時政は、3代鎌倉殿・源実朝(柿澤勇人)の下文を手に入れ、三浦義村(山本耕史)和田義盛(横田栄司)稲毛重成(村上誠基)らを招集。重忠の嫡男・重保(杉田雷麟)を人質に取るよう命じる…という展開。

 重忠は妻・ちえ(福田愛依)に「行ってまいる」と告げ、武蔵国を出発。鎌倉を目指した。由比ヶ浜に誘い出された重保が抵抗したため、義村たちは殺めざるを得ない。「殺らなければ、殺られていた」(義村)「坂東武者の名に恥じない立派な最期でござった」(義盛)。愛息が騙し討ちに遭ったと知った重忠は二俣川の手前から鶴ヶ峰に移り、陣を敷いた。

 北条義時(小栗)は戦回避のため、大将に名乗り。義盛が単身、説得を試みたが、重忠の意思は揺るがず。重忠が鏑矢を放ち、決戦の火ぶたは切られた。

 重忠は北条泰時(坂口健太郎)を狙い、義時をおびき出す。2人の乗った馬が交錯。義時の刀が折れる。2人は兜を脱ぎ、再び突進。義時は馬上から重忠に飛びつき、2人とも馬から落ちた。

 義村「手を出すな!誰も手を出してはならぬ」

 鎌倉方の兵が2人を囲み、重忠と義時の一騎打ち。最初は小刀で斬り合うが、すぐにボクシングのような殴り合いに。重忠が優勢。地面の小刀を拾おうとした義時の腕を重忠が踏みつける。しかし、義時が跳ねのけて小刀を奪い、倒れた重忠の首に。そこから重忠が義時の足を取って倒し、馬乗りに。渾身の力を込めた右の拳を義時の顔に見舞うと、喉元に小刀を突きつけた。義時も観念したその瞬間、重忠が振り上げた小刀は義時の顔の横の地面に突き刺さった。

 重忠はフッと笑って立ち上がると、馬にまたがって去っていく。仰向けの義時は動けず、涙。唇の震えが止まらなかった。

 「戦は夕方には終わる」(語り・長澤まさみ)

 時政と北条時房(瀬戸康史)が実朝に戦勝報告。重忠は「手負いのところ、愛甲三郎季隆が射止めました。間もなく、首がこちらへ届くとのことにございます」(時房)。重忠の首桶を前に、傷だらけの義時は時政に「次郎は決して逃げようとしなかった。逃げるいわれがなかったからです。所領に戻って、兵を集めることもしなかった。戦ういわれがなかったからです。次郎がしたのは、ただ、己の誇りを守ることのみ。(首桶を時政に差し出し)検めていただきたい。あなたの目で。執権を続けていくのであれば、あなたは見るべきだ!父上!」と迫った。

 「畠山重忠の乱」の合戦シーンは今夏に3日間、静岡県富士宮市で大規模ロケ。馬から落ちた後の重忠と義時の一騎打ちは最終日のラストに撮影を行い、中川はこれをもって自身のクランクアップを迎えた。

 台本のト書きには「義時と重忠の一騎打ち」とあったが、中川は「台本が上がってきたタイミングで、このシーンについて小栗さんと一緒にお話をさせていただく機会がありまして。『きれいな立ち回りじゃなく、泥臭いものにしたい』というお話を頂いて、僕も『まさしく同じ考えです』と。畠山と義時は10代の頃からの幼なじみで、いくつもの戦を共に乗り越えてきた旧知の仲。『そんな2人が、最後は子どものケンカみたいに泥臭く戦えたらいいよね。オレは畠山重忠という男に、ここで思い切りぶん殴られたいんだよね』と小栗さんの思いもうかがって、そこから(第36回演出の)末永(創)監督、アクションチームと色々なパターンの動きを練って、リハーサルを重ねて、あの殴り合いに行き着きました」と明かした。

 「あの時代、素手で殴り合うのはあまりないということなんですけど、畠山の生き様、この戦に懸ける信念を1発1発の拳に凝縮できたんじゃないかなと思っています。なので、僕としても凄く納得のいく畠山重忠の最期になりました」

 義村の「誰も手を出してはならぬ」から、重忠が地面に小刀を突き刺し、立ち上がるまで、オンエア上は約2分半。「夏の暑さの中、3日間のロケの最後の最後。もう僕も小栗さんも体力的にかなりボロボロの状態で、スタッフの皆さんにとっても本当に“戦”だったと思います。なので、トータル何分間殴り合っていたかは記憶にないんですけど、体感としてはあっという間でした。もしかしたら、トータル10分以上はお互い殴り合っていたかもしれません。たぶん、歴代の大河ドラマの中で、あそこまで着物と鎧が破壊されたシーンはないんじゃないでしょうか。着物もビリビリに破けまして、鎧も至る所が破損して原形をとどめていませんでした。2人とも満身創痍で演じ切りました」。まさに大河史に残る“死闘”を繰り広げた。

 重忠は義時にトドメを刺さず、誇りを貫いた。

 「これに関しては、全部を解説しすぎるのもちょっとどうかなと思いつつ」としながらも「これまで北条家も義時もたくさんの人を葬り去ってきましたが、殺されるということがどういうものなのか、畠山が義時に本気で示しにいった。そういうシーンだったのかなと思っています」。命拾いした義時は死の恐怖を味わい、打ち震えた顔だった。その上で「義時が板挟みになって調整のために駆け回っている姿を、一番見てきたのが畠山。だから、この先、鎌倉をどうにかできるのは義時しかいないということも一番分かっている。そういう畠山の思いが義時に伝わったらいいなと、畠山重忠の乱に向かっていきました」。第35回「苦い盃」(9月11日)のラスト、重忠の「本当に、鎌倉のためを思うなら、あなたが戦う相手は」に、義時は「それ以上は」と言葉を濁した。しかし、重忠の“魂の拳”を食らって目を覚まし、ついに父・時政追放を決意した。

 =インタビュー(中)に続く=

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