王将戦・戦国時代(5) 渡辺棋王「飛車みたい」本多忠勝の繊細な腹の探り合い

[ 2018年10月2日 18:00 ]

本多忠勝に扮する渡辺明棋王(撮影:浦田 大作)
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 将棋の第68期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の挑戦者決定リーグ戦が開幕した。昨期の残留4人に加え、予選を勝ち抜いた3人の計7者による、棋界で最もハードな総当たり戦。果たして久保利明王将(43)に挑む権利を手にするのは…。参加7棋士に加え、7番勝負で挑戦者を待ち受ける久保王将の8人が戦国武将に扮(ふん)し、それぞれ心境を語った。全8回の連載をお送りする。

 本多忠勝に扮し「漫画で読んだだけなんですが徳川家康の側近で、将棋で言えば飛車みたい」と笑顔で印象を話す渡辺棋王。藤井聡太・現七段が史上5人目の中学生棋士として話題になったが、「4人目」はこの人だ。デビュー以降の台頭ぶりはすさまじく、初タイトルとなる竜王を獲得したのは弱冠20歳の時。計20期の戴冠を誇り、うち王将は13〜14年(第62、63期)に就位歴がある。

 若手の旗手として注目を浴び続けた俊英も気がつけば34歳。今回のリーグ戦も郷田真隆九段(47)に次ぐ年長者だ。「上から2番目になったんですね。それだけ若い人が出てきているってことでしょう」と感慨深げに話す一方で「ここである程度やれれば若い人に対抗できる。だめならシュンと沈んでいくのかな」と決意を示した。

 天才中の天才が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する世界。「直感」や「第一感」といったアナログ的思考が主流の業界にあって、整合性のとれた論理的な考え方を好む。感想戦や中継解説などで理路整然に語る姿に感銘を受けるファンも多い。

 そんな渡辺は最近の将棋界について「ここ1年くらい、凄い新戦法が出てこない。プロの将棋自体が煮詰まってきたかなって感じます」と分析している。観戦しているアマチュアから見ると「どれも同じ将棋に見えるのでは?」。そんな意識下で指すプロの対局とはなんだろう。「みんな同じ形をだいたい知っているわけで、ということは凄く細かいところから戦いが始まるんです」という。序盤、中盤での繊細な腹の探り合いにプロ棋戦の醍醐味(だいごみ)が隠されている、との主張だ。

 将棋以外でも、競馬や欧州サッカーの知識は半端ない。野球も大好きで、特にヤクルトがお気に入り。「父が巨人ファンだったから反抗するために(笑い)」と告白するが、シーズン中は週初めに先発投手のローテーションを調べて勝敗を予想するなど、競馬的な楽しみ方を実践しているとか。実に多才な人だ。(我満 晴朗)

 ◇渡辺 明(わたなべ・あきら)1984年(昭59)4月23日生まれ、東京都出身の34歳。2000年3月に四段昇格を決めた。永世竜王、永世棋王の資格を持つ。漫画家・伊奈めぐみ夫人との間に1男がいる。

 このインタビューの全文はlivedoor NEWSに掲載される。

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