「バイプレイヤーズ」遠藤憲一&光石研が語る“名脇役の絆”「まだまだ」高みを目指す刺激に

[ 2018年3月7日 07:00 ]

遠藤憲一×光石研対談(下)

テレビ東京「バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜」で再び共演、対談を行った遠藤憲一と光石研(C)「バイプレイヤーズ2018」製作委員会
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 俳優の遠藤憲一(56)と光石研(56)は名脇役たちが再び本人役で共演したテレビ東京の連続ドラマ「バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜」(水曜後9・54、全5話)のメンバー。対談を行い、37年前の“初共演”時の思い出、2月21日に急逝した大杉漣さんを中心とした“バイプレイヤーズの絆”を明かした。(インタビューは大杉さんが亡くなる前の2月20日、撮影の合間に行いました)

 ドラマは約1年ぶりの復活となり、深夜(金曜深夜0・12)の40分枠からプライム帯(午後7〜11時)の1時間枠に昇格。昨年1〜3月に放送された前作「〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」に続き、大杉さん、遠藤、光石、田口トモロヲ(60)松重豊(55)が出演。寺島進(54)はスケジュールが合わず、今作は休んだ。

 前回は、6人が共同生活を送る“おじさんだらけのテラスハウス”として話題に。今回は、テレ東制作の朝ドラ「しまっこさん」で共演することになった5人がロケ地を間違えて無人島に流れ着き、サバイバル生活を強いられる。何とか助かり、島の廃屋“島ハウス”で共同生活をしながら「しまっこさん」の撮影に臨む姿を描く。

 ――お二人の初共演はいつになりますか?

 【光石】浩介さん(※1)のVシネマだと思うな。ただ、題名とか詳しくは覚えていないですね。

 【遠藤】正確には、オレがまだエキストラをやっていた頃に「ただいま放課後」(※2、1981年)で共演しているよね。光石さんはレギュラーで、オレはエキストラ。芝居の絡みはなかったけど。

 【光石】ラグビー部が舞台の学園ドラマで。遠藤さんは対戦チームのメンバーでいらっしゃったんです。

 【遠藤】オレは大人数で「ファイト、ファイト」と土手を走っていました。

 【光石】でも、僕、遠藤さんのことを覚えていたんですよ。

 【遠藤】あんなに大勢いたのに?(笑い)

 【光石】背が大きいというのもあるし、やっぱり目立っていましたから。その時は名前も存じ上げなかったですが、その数年後に遠藤さんが「青が散る」(83年10月クール、TBS)というドラマに出演されて「あっ、あの時の人だ」と思ったんですよ。

 【遠藤】光石さんはレギュラーだったから、オレはもちろん存在としては分かっていたけど。現場で話もしていないのに、よく覚えていたよね。ただ、最初に一緒にやったのは何だろうなぁ。浩介さんの「リセット」(※3)は確実に覚えているよね。

 【光石】覚えてる。あれはもう、ドキドキしながら本当に楽しかった。

 【遠藤】光石さん、オレ、根岸季衣さん、伊藤洋三郎さん、片岡礼子ちゃん。5人の自殺志願者が“自殺の名所”ビルの屋上にたまたま集まったという設定で、全部アドリブなの。

 【光石】僕らがどこで何をやってもいいように、カメラが15台ぐらいあって、ずっと撮っていて。

 【遠藤】手を上げたら死んだという設定なんですが、全部アドリブだから展開が全く読めない。根岸さんが死のうと思って手を上げた時、オレが止める芝居をしたんだけど、根岸さんが手を上げたのが分からなくて、手を上げたまま引き戻しちゃった(笑い)。

 【光石】その時、僕は先に死んでいたから、横で見ていて腹抱えて笑っちゃって。「戻した〜」と思って。アレは笑ったわ〜。本当におかしかった。いつだったか、遠藤さんが「オレ、飛び道具持ってきたからさ」という日があって。「何だろう」と思っていたら、芝居中にカメラか何かを出したんだよね。「その程度か。何が飛び道具だよ」と思って(笑い)。また急におかしくなって。

 【遠藤】(爆笑)

 ――お互いの印象はいかがでしたか?

 【光石】僕はね、遠藤さんのことは本当にリスペクトしていて。こんなにナチュラルな芝居をする人は同世代にいないと思っているんですよ。真顔のおもしろさたるや、右に出る人がいない。どこまでまじめにやっているのか、笑わせようしているのか、境界線が全く分からない。こんなに天才的な人はいないですよ。

 【遠藤】よう、言うわ(笑い)。自分もそう言われているから。

 【光石】いやいや、僕は全然違うタイプだから。

 【遠藤】光石さんは本当にいろいろなキャラクターをやっているしね。上手な人だなぁとずっと思っていました。若い時はまた「博多っ子純情」(※4)のイメージがありましたが(笑み)、いろいろな役をやって、名優の1人だなぁといつも思っていました。

 ――遠藤さんは2016年11月、当サイトのインタビューで「仕事量は多くなったのかもしれないですが、(演技については)まだまだです。まだ全然。まだですね」とおっしゃっていました(※5)。光石さんも17年12月17日付のスポニチ本紙「俺の顔」で「今の俺は俳優としてもまだ頑張ってないと思うんです。人間性も含めて、もっともっとスキルアップしていきたい。まだまだ全然足りないです」とおっしゃっていました(※6)。お二人の今後の展望を教えてください。

 【遠藤】みんな、同じことを考えているんだね。「まだまだ」というのは変わらないかな。頭の中にぼんやりと理想の芝居があるんだけど、まだできない。そういう意味じゃ、去年みんなと「バイプレイヤーズ」で久々に会って「みんな、凄いな」と。おのおのの凄い能力を、いろいろ発見しましたね。

 【光石】それはその通りで、本当に刺激になっています。「みんなで共演したいね」と言っていたのが15年ぐらい前なんですが(※7)、あの時やらずによかったと思いますね。

 【遠藤】よかったね。

 【光石】あの時だったら、こういう関係にならなかったかもしれない。15年経って、みんな年を取って、いい関係で、いい距離感でやれているのは、今だからこそじゃないかと思いますね。いい刺激を受けて。だから僕はすごく幸せですね。それで頑張ろうと思うしね。

 【遠藤】それぞれがそれぞれの現場で頑張っているのは励みになりますね。

 【光石】本当にそう思います。

 =終わり=

 ◇  ◇  ◇

 今回の遠藤&光石の対談形式によるインタビューは大杉さんが亡くなる前の2月20日に実施。最後に「バイプレイヤーズ」第3弾について尋ねると、遠藤は「まだ(第2弾の)撮影が終わっていないし、今はあまり考えたくないですね」としながらも「大杉さんはきっと、もう頭の中で(第3弾のことを)考えているんだろうけど」と笑った。光石も笑いながら「リーダーから招集がかかれば、その時にね」と結んだ。大杉さんが仲間との長年の絆の末に「たどり着いた寄港地みたいな作品」と表現し、思い入れもひとしおだった「バイプレイヤーズ」。今夜の最終回を目に焼き付けたい。

 【※1】鈴木浩介監督(56)。近年はWOWOW「空飛ぶタイヤ」「下町ロケット」「沈まぬ太陽」なども演出。

 【※2】1981年1月クールに放送されたフジテレビの連続ドラマ。ラグビー部の合宿所が舞台。光石は部員を演じた。

 【※3】2001年製作の映画。

 【※4】光石が高校在学中の1978年に主演デビューした映画。曽根中生監督がメガホンを執った青春群像劇の傑作。光石は主人公・郷六平を演じた。

 【※5】遠藤憲一が目指す“究極の芝居”「まだ全然」現状に安住せず(https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/11/10/kiji/K20161110013691580.html)16年11月10日配信

 【※6】【俺の顔】光石研「まだまだ足りない」 引っ張りだこの名脇役 1年で16作出演(https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/12/17/kiji/20171216s00041000362000c.html)17年12月17日配信

 【※7】ドラマ「バイプレイヤーズ」誕生のきっかけは2002年秋、東京・下北沢で開催された映画祭「6人の男たちフィルムズ」。遠藤、大杉さん、田口、寺島、松重、光石の6人それぞれが選んだ出演3作品、計18本を10〜11月の6週間にわたって上映した。その時から、共演作が待ち望まれていた。

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