二階堂ふみ 自由で自在、本質を見る才能…高峰秀子さんに重なる

[ 2016年7月12日 11:02 ]

ナチュラルな存在感が印象的な二階堂ふみ

 若くして、その演技力に不動の評価を得る女優二階堂ふみ(21)。華やかなヒロインはもちろん、血まみれ、泥まみれの猟奇的な役柄や動物役まで、何でもござれの変幻ぶりは圧巻の一語だ。「至って普通の21歳」という言葉とは対照的な落ち着きと風格。好きな女優として「日本映画界の至宝」と言われる高峰秀子さんの名を挙げた。

 「放浪記」で知られる林芙美子氏の小説が原作。高峰演じるゆき子は女にだらしない既婚の同僚と関係を持ち、翻弄(ほんろう)され流浪の人生を送る。長年のただれた関係にうんざりしつつ、情愛を断ち切れない微妙な女心を濡れ場なしで、表情とセリフで演じきった。

 「浮雲」はこの年の賞を総なめ。80年代、吉永小百合(71)が「私にはできない」とリメークを断った逸話もある。

 それほど奥行きある演技に子供のころから触れた。でもそれだけで同じようにできるものではない。二階堂の素地はどこから来ているのか。その鍵は、自由な家庭環境から学んだ「分け隔てのなさ」が握っていた。

 両親は、家の隣の児童館で読書したり、一輪車に乗ったり好奇心旺盛だった娘の興味が赴くままさまざまな習い事をさせた。お説教もせず、大切なことは背中で伝えた。「実際に見たり聞いたこと以外のものには、それぞれの考えやフィルターが入っている場合だってあるんだよ、という考えを、何となく幼い頃から感じて育った」。幅広い吸収力と、他人に先入観を持たない気質が育まれた。

 「表だけでは見えないものが、その人の人生にはたくさんある」。だから、いわゆる“役に入る”こともしない。「俳優部の一人として、現場でみんなと作品を作ることが一番好き」と、共演者や監督らに助言を仰ぎながら役を磨き上げる。

 「なるべく自由に人と触れ合っていきたい」という。私生活でも「バスが好きなんです。乗り合わせた客の会話に耳を傾けたり、小学生を観察するのが楽しい」。友人も多い。自分の性格を「ひょうきん」と分析。「基本的に明るいし外に出るのも好き。コミュニケーションから得られる創造性とか、ワクワクは大事にしたいし、仕事に反映してると思います」。

 高峰さんもまた「全ての男女に“人間”として付き合い、その“人間”をかぎ分けた」と評されることがある。これも二階堂と重なる。菅田将暉(23)らと“デート報道”が相次ぎ、そのたび「友達です」と説明するのも、独特の人付き合いの産物なのかもしれない。

 「浮雲」に並んで好きな映画として、対極のような米のホラーコメディー「アダムス・ファミリー」(91年)を挙げ「エンターテインメント大好き」と笑うのも幅広さの表れ。読書などの趣味に加えサブカルチャーやアート、メークも勉強中だ。

 「何事もあまり深く考えないんです。とにかく、ごく普通の日常を大切にしています」と話す姿は本当に普通の21歳。しかし、その足取りは憧れだった大女優と重なる道を踏みしめつつある。 

 ◆二階堂 ふみ(にかいどう・ふみ)1994年(平6)9月21日、沖縄県生まれの21歳。12歳のときフリーペーパー「沖縄美少女図鑑」のグラビアに掲載されたのをきっかけにスカウトされ芸能界入り。07年、日本テレビ「受験の神様」で女優デビュー。11年のベネチア国際映画祭で、映画「ヒミズ」の演技が評価されマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞。1メートル57、血液型O。好物はかぶ。

続きを表示

2016年7月12日のニュース