二階堂ふみ 若きカメレオン女優 「特別なことはやらない」自然体の役作り

[ 2016年7月12日 11:00 ]

ナチュラルな存在感が印象的な二階堂ふみ

 若くして、その演技力に不動の評価を得る女優二階堂ふみ(21)。華やかなヒロインはもちろん、血まみれ、泥まみれの猟奇的な役柄や動物役まで、何でもござれの変幻ぶりは圧巻の一語だ。「至って普通の21歳」という言葉とは対照的な落ち着きと風格。好きな女優として「日本映画界の至宝」と言われる高峰秀子さんの名を挙げた。

 「日々ロック」(14年)でトップアイドル、「脳男」(13年)で連続爆弾魔。「蜜のあわれ」(16年)では、なんと金魚!見るたび、まるで別人だ。「私の男」(14年)では激しい濡れ場や流氷に入っての撮影も辞さず。「イメージは壊していきたい。同じ人だと思わなかったと言われるとうれしいです」と笑う。

 さぞ凄い役作りをするのだろうと水を向けると「特別なことは何もやらない」と、拍子抜けするほどの回答。「特別なノートとか、何かしててほしかったですか?記事書きづらいですよね、ごめんなさい…」と、済まなそうな表情を浮かべる。

 なのにどうして卓越した演技ができるのか。しかも若い。そこでルーツに着眼点を移した。映画好きの母親に連れられ映画館によく行っていたのは有名。「故郷(沖縄県那覇市)に桜坂劇場という名画座があって。単館系から大きい映画までやるところなので、いろんな作品を見ました」。

 当時、好きだった作品を聞いた。「日本映画だったら高峰秀子さんが凄く好きだったので、よく見てました」。高峰秀子さんといえば「二十四の瞳」(54年)など数多くの名作に主演。1979年に55歳で引退するまで、国内外の映画賞を多数受賞し、「邦画史上最高の女優」との呼び声高い。

 2つの意味で驚いた。はるか昔の大女優の演技を愛し、その名を挙げる映画への深い造詣。そして、図らずも2人には、符合する点がとても多いということだ。

 役者としての個性や存在感を放つのでなく、どんな役柄の色にも染まるスタイルは、高峰さん最大の特徴だった。決して「絶世の美女」というわけではないが、役を選ばないほどよいルックスも共通する。エッセーなどを手掛ける文才まで、奇妙なほどにピッタリだ。

 「高峰さんで一番好きな作品?どれもですが…“浮雲”が凄い好きですね」。55年に上映された不朽の名作。この作品で高峰さんが見せた一世一代の演技に、二階堂の原点が垣間見える。

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2016年7月12日のニュース