チームUSA主砲ゴールドシュミットに最適のバットを提供したハイテク・ラボとは

[ 2023年2月12日 12:45 ]

米国のゴールドシュミット(ゲッティ=共同)
Photo By ゲッティ=共同

 22年のナ・リーグMVPで、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のチームUSAでも主砲となるカージナルスのポール・ゴールドシュミット(35)は去年から、アイスホッケーのパックをくっつけたようなグリップエンドの大きなバットを使用、打率・317、35本塁打、115打点の好成績をあげた。そのバットを薦めたのがルイジアナ州バトンルージュにある「ベースボール・パフォーマンス・ラボ(BPL)」。スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者がそのハイテク・ラボについて詳しく報じている。

 ゴルファーが自分に合うクラブを探すように、科学的に打者に合うバットを選ぼうという試みで20年1月にスタート、他にもムーキー・ベッツ、ノーラン・アレナド、フリオ・ロドリゲス、ルイス・アラエスなど一流打者が利用している。プロの打者はバットについて一家言を持ち、お気に入りの長さ、重さ、形が決まっている。しかしながら、そのバットが、その打者にとってベストの打球速度と、打球角度を生み出し、スイングでいろんなコースに対応できる最適なものかどうかは定かではない。これまで打者たちは自らの感覚、感触に頼ってきたが、BPLは科学の力で最適のバットを見つける手助けをする。約3時間、お値段7500ドル(約98・6万円)のセッションでは、まず映画「ターミネーター」のサイボーグのように、12個のセンサーを身体のあちこちに付け、細かい身体の動きと、バットの動きを計測する。打者によって、手の大きさ、腕の長さ、可動域、お尻や肩の回転、胸椎の動き、骨盤の制御の仕方など、それぞれ異なる。続いて、選手の馬力をテスト。下半身、体幹、上半身の強さを計測する。これらによりその打者の最速の打球速度を見積もることができる。バットについては長さ、重さ、重量配分で「バランス・ポイント・インデックス(BPI)」を設定している。バットを振るのにどれくらいエネルギーが必要かで1から100まで。「1」は子供用の小さなバットでエネルギーがかからない。「100」は例えば35インチ(約88・9センチ)、35オンス(992・25グラム)のネルソン・クルーズが使うような振るのに最もエネルギーが必要なバットだ。とはいえより長く、より重ければ、エネルギーがよりかかるとは限らない。重量配分により、重心がバットの先にあれば長く重く感じるし、反対であれば短く軽く感じる。バットの先端が重い方が力強く飛距離の出る打球を打てるが、反対だと飛びにくい。とはいえコンタクトヒッターでもBPIの高い、よりエネルギーを必要とするバットを使うこともあれば、パワーヒッターでもBPIの低いバットを使用することもある。どの数字が最適かは個々の打者の体の使い方、打撃技術に左右される。

 BPLのセッションでは普段から使っているバットに加え、BPIの異なる複数のバットをテストさせる。身体の動き方の変化をモニターしながら、打球速度、角度、打球方向を記録する。加えて選手に、1球1球打つたびに感触を10段階で評価してもらう。打者自身の主観的評価も、総合評価の約15%を占める。こうして打者に理想のバットを推薦する。1年前、ゴールドシュミットはホッケーのパックのようなグリップエンドのバットを気に入り採用した。通常グリップエンドが重くなると、バットを軽く感じ手首も安定する。35歳のベテランにとってはちょうど良かったのかもしれない。

続きを表示

この記事のフォト

2023年2月12日のニュース