入来智さん 事故死…信号のない交差点で乗用車と衝突 引退後は弁当店など経て故郷都城市で介護士に

[ 2023年2月12日 05:00 ]

入来智氏
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 近鉄、巨人、ヤクルトなどで投手として活躍し、通算35勝をマークした入来智(いりき・さとし)さんが10日、交通事故のため死去した。55歳。宮崎県出身。運転していた軽自動車が普通乗用車と衝突し、約2時間後に死亡が確認された。99、00年には弟・祐作氏(50=現オリックス投手コーチ)と同時に巨人に在籍し、ヤクルトでは01年の優勝に貢献。引退後は度重なる転職など波瀾(はらん)万丈だった元右腕が、衝撃的な最期を迎えた。

 事故は10日午後9時50分ごろ、宮崎県都城市野々美谷町の信号のない交差点で発生した。通りかかった人が「畑の中に車が落ちている。50代ぐらいの男性の意識がありません」と110番通報。入来さんは病院に運ばれたが、午後11時45分ごろ死亡が確認された。

 都城署によると団体職員の男性(33=東京都葛飾区)が運転する乗用車が、入来さんが乗っていた軽自動車の右側運転席に衝突。入来さんの車は衝撃で近くの畑に落ち、前部がへこんで大破していたという。NPBで最後に所属したヤクルトが、死因は重症頭部外傷と発表した。オリックスの投手コーチを務める弟の祐作氏は、宮崎市で行われているキャンプ地を離れ、都城市へ向かった。

 入来さんは89年ドラフト6位で近鉄入団。99、00年には祐作氏とともに巨人でプレーし、球団史上初の兄弟での現役選手同時在籍で「入来兄弟」として話題を呼んだ。01年にはヤクルトで自己最多の10勝。古巣・近鉄との日本シリーズでは第3戦に先発して勝利投手になり、日本一に貢献した。同年初出場したオールスターでは球宴史上初の兄弟リレーも実現。韓国、台湾球界を経て04年限りで現役を引退した。

 その後の人生は苦しんだ。浪費や離婚による慰謝料などで貯金は底をつき、コンビニのアルバイトや酒造メーカーでの短期雇用などで日銭を稼ぐ時期もあった。2度目の結婚後も、弁当店で唐揚げの揚げ方を注意されたのが耐えられずに店を飛び出すなど転職を繰り返した。「野球以外に何をしていいか分からない。プライドもあって心の調整ができなかった」とテレビ番組で吐露し、号泣したこともあった。

 現在は介護士として故郷の都城市で生活しており、1月31日には祐作氏がインスタグラムで兄、父親と3人での写真を投稿。「親父も兄貴も元気やった」などと母親の墓参りを報告していた。
 署によると、軽自動車と乗用車にはそれぞれ1人の同乗者がいたが、ともに軽傷。乗用車を運転していた男性にケガはなかった。現場は一時停止の標識のある交差点で、詳しい事故原因を調べている。

 ◇入来 智(いりき・さとし)1967年(昭42)6月3日生まれ、宮崎県出身。鹿児島実から三菱自動車水島を経て、89年ドラフト6位で近鉄入団。96年6月に交換トレードで広島に移籍したが、同年オフに近鉄復帰。98年オフに巨人に移籍し、弟・祐作とチームメートに。00年オフに戦力外通告を受け、ヤクルト移籍。01年は自己最多の10勝を挙げた。03年に韓国、04年に台湾でプレーし、同年限りで現役引退。日本での通算成績は214試合で35勝30敗2セーブ、防御率4.25。右投げ右打ち。

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