アイツはプロ野球選手、オレは消防士 盛岡中央の捕手・小笠原颯汰が相棒の剛球を受けて決めた進路

[ 2022年5月9日 22:24 ]

消防士を目指す小笠原(左)とプロ野球を目指す斎藤(撮影・柳内 遼平)
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 今秋のドラフト候補に挙がる盛岡中央(岩手)の最速149キロ右腕・斎藤響介投手(3年)は、春季大会盛岡地区予選の3試合で17回1/3を無失点に封じて県大会進出に貢献。小学生の時からバッテリーを組み「投げたい球をサインにしてくれる」と信頼を寄せる捕手・小笠原颯汰(3年)のリードも光った。プロ志望の斎藤と違い、小笠原は今年の夏に野球を引退する。

 左手を真っ赤にして受けてきた直球が進路を決めた。盛岡中央で急成長を遂げた斎藤の直球は昨夏、ついに149キロを計測。中学時代は捕手で2年時から岩手県選抜入りし、大学でも野球を続けるつもりでいた小笠原の考えは変わった。

 「やっぱり(斎藤)響介が近くにいて、アイツが伸びていくのを見ると“こういう人が上の世界でやっていくんだな”と。自分は将来を考えて野球をきっぱりやめようと思いました。やめないと大好きな野球をいつまでも続けてしまうから」

 現実を受け止めた小笠原は消防士になることを新しい夢にした。「人のために役に立ちたい」と「体を動かす職につきたい」の二兎を追える職業だ。花巻東や盛岡大付など強豪ひしめく岩手で、夏の甲子園の切符をつかむために猛練習を続け、家に帰れば公務員試験の勉強に励む。学校でも授業の合間に参考書を開く。練習の疲れでまぶたが重い日もあるが、わずかな時間も無駄にしない。

 相棒と野球をする時間も残りわずか。小笠原は感謝の気持ちを胸に一球一球を受け止めている。「自分は上手いタイプではないが、響介のおかげで高校に来てからも成長できた。アイツの球は捕ることも、ボディーで止めることも難しかったけど“響介と組みたい”と思ったから成長できた」

 順調に地区予選を勝ち抜き、20日開幕の県大会出場を決めた盛岡中央。夏に同校2度目の甲子園出場を果たすためにも実力を高める場となる。小笠原は「甲子園に出て響介にプロに行ってほしい。自分はどんな形でもいいのでチームに貢献していきたい」と落ち着いた口調で言った。それぞれ違う夢を持つバッテリーが「あうんの呼吸」で打者に立ち向かう。(柳内 遼平)

 ◇小笠原 颯汰(おがさわら・そうた)2004年11月13日生まれ、17歳。小3で竹の子スポーツ少年団で野球を始める。滝沢南中では軟式野球部に所属し、2年、3年時に岩手県選抜に選出。盛岡中央では1年秋からベンチ入り。遠投100メートル。50メートル走7秒0。憧れの選手はロッテ・松川。1メートル75、76キロ。右投げ右打ち。

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2022年5月9日のニュース