広澤克実氏 阪神に輝と大山の“W4番”のススメ 状態見極めて調子の良い方を使っていけばいい

[ 2022年2月24日 05:30 ]

膝をついて構える阪神・佐藤輝(撮影・椎名 航)
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 【広澤CHECK】阪神の沖縄・宜野座キャンプは最終クール初日の23日、予定していた広島との練習試合が雨で流れた。発表された先発オーダーで4番には佐藤輝明内野手(22)の名前があり、大山悠輔内野手(27)との日替わり起用が継続中。ヤクルト、巨人、阪神で4番経験を持つ本紙評論家・広澤克実氏(59)は2人の特性をもとに“ダブル4番”の運用を提言した。

 5度の練習試合を終えて、4番は大山が2試合、佐藤輝が3試合。中止になった広島戦は佐藤輝が4試合目の予定だった。注目の4番争い。現時点で決める必要はない、という見解だ。

 1年前の春は新人だった佐藤輝が公式戦でまだ1本も打っていないのに、外部では4番に推す声があった。プロ野球の常識では考えられないことで、4番を打ってきた大山には失礼な話だった。1年がたち、2人で競わせていい土壌ができた。

 せっかく、いい競争をしている。3月に入ってからの内容や結果を見て誰もが認める形で「開幕4番」を決めればいい。オープン戦の最後3試合が開幕オーダーだろう。高いレベルで争ってほしい。
 むしろ考えたいのは開幕後のことだ。「開幕4番」の意味は、決める側にも、決められる側にも大きく重いもの。ただ現状での2人の特性を考えれば「開幕4番」に決めたからといって固執することはないのではないか。

 佐藤輝の爆発力は昨季証明された。後半戦であれだけの不振があっても24本塁打はチームで一番多い。大山も20年終盤に本塁打王を争ったように打ち出したら止まらない。同時に、2人とも調子を落とした時の底が深い。

 人間だから調子の波はあって当然だ。その波の上下が大山と佐藤輝の場合は大きい。ならば日々の状態をしっかり見極め、好調の波にある方を4番に置く柔軟な運用が、今季は有効だと感じる。

 1番は近本で2番候補は中野や糸原。左が3人並ぶことを避けるためにも3番はマルテに固定し、4番は大山と佐藤輝で分ける。2人の調子の波形が一致せず、うまくズレれる形になれば理想的だ。

 いまの打撃を見る限りでは、大山が一歩リードしている。投手側へ重心が突っ込む悪い時の傾向が大きく改善されている。昨季セパで首位打者になった広島・鈴木、オリックス・吉田正に共通するのは軸足に重心が残り、頭が前へ出ないこと。それに近くなってきた。これができれば、好調の波にある期間も長くできる。4番の経験値があり、チームのことを考え、責任感もある。一日の長があるのは、やはり大山だ。

 佐藤輝は今春の練習試合でまだ本塁打がない。心配ない…とは言い切れない。彼に求めるのは長打だ。昨季後半に打てなくなったのはタイミングの問題だと見ている。まだ右足の着地がバラバラで、ポイントが近くなったり遠くなったりする。打撃でいう「間」は下半身と上半身の捻転差から生まれる。右足が着地して下半身の腰を回しながら、両肩のラインは地面と平行に保つこと。連続写真を撮った際に、この形ができるようになればいい。(スポニチ本紙評論家)

 《あのONも》○…シーズン中に2人の打者が故障、不調などによる欠場を除いて4番打者として併用された代表的なケースとしては、巨人の長嶋茂雄、王貞治がある。1965年から73年のV9時代は3番・王、4番・長嶋で固定した68、69年を除き、おおむね長嶋主体で王との併用だった。特に67年は長嶋67試合、王60試合と拮抗(きっこう)しており、比較的短い間隔で4番が入れ替わった。また84年の広島も山本浩二74試合、衣笠祥雄55試合の併用。入れ替わりの4、5番コンビが打線をけん引し、4年ぶり優勝へと導いた。

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