通算305本塁打「球界屈指のナイスガイ」が見たイチロー氏と大谷

[ 2021年12月14日 08:45 ]

大谷(左)とイチロー氏
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 今季、超人的な活躍を続けた大谷翔平選手は、ア・リーグMVPを受賞したのを始め、今オフは受賞ラッシュ。スポーツのファン、関係者の間でその名前が語られることも多い。MVPを獲ったので当然といえば当然だが、少なくとも今季の“MLBの顔”であったことは間違いない。

 ワールドシリーズ期間中、現役時代に305本塁打を放った元スター選手、ラウル・イバネス氏が、目を細めてこんなふうに述べていたのを思い出す。

 「今の大谷はメジャーリーグにとって非常に重要な存在になったと思う。全てのことを適切にこなしてくれるから、いわばベースボールのアンバサダー。メジャーリーグの顔になるには申し分のない存在だよ」

 現在のイバネス氏はMLBのオン・フィールド・オペレーション部門で、トップに次ぐ役職の「バイス・プレジデント」を務めている。「私はベースボールという最高のゲームを発展させたい。国際的に拡大し、世界中でより多くの子供たちがプレーするようになってほしいんだ」と目標を語っていた。そんなイバネス氏にとって、二刀流の成功によって球界の枠を超えた存在になり、清廉潔白でイメージも申し分がない大谷は、頼もしい存在に思えるのだろう。

 イバネス氏はマリナーズ、ヤンキースでイチロー氏のチームメイトになり、極めて親しい関係を築いたことでも知られる。イチロー氏自身が米メディアの取材に対し、「好きなチームメート」の一人として挙げていたくらい。そんなイバネス氏には、同じく日本からやって来て、それぞれの形でセンセーションになり、MVPも受賞した大谷とイチロー氏はどのように映っているのだろうか。

 「大谷も本当にとてつもない能力を持っており、あんな選手を私は見たことがない。イチローも史上最高級の選手で、私は畏怖の念を抱いていた。準備、規律、安定感は飛び抜けていたし、素晴らしいチームメートでもあった。投手を務められるだけの強肩を持つイチローはいつかメジャーリーグのマウンドに立つという夢を持っていて、ついに1イニングだけ登板した。この2人を比較すると…」

 球界屈指の好漢としても定評を勝ち得ていたイバネス氏は少し考えて、そこで言葉を止めた。

 「いや、やはり私はイチローと大谷を比較したいとは思わない。それよりも2人の巨大な才能にもっと感謝するべきなのだろう。これだけの能力を持った選手が出現し、MLBにとって貴重なアンバサダーの役割を果たしてくれているのだから」

 プレーヤーとしてのタイプは大きく違う大谷とイチロー氏だが、確かにそのユニークさゆえにそれぞれ国際的な存在になったことには共通点があるのだろう。魔法の杖のようにバットを使いこなしたイチローも、独創的なプレースタイルとカリスマ性で球界の範疇を超えたビッグネームとなった。大谷のスター街道はまだ始まったところだが、今季のような超越的な活躍を続けた場合の後進への影響は計り知れない。

 聡明なイバネス氏の言葉はおそらく正しい。2人の革命者が異国の地でこのスポーツの魅力をアピールする大使になってきたことに、日本以外の国の関係者からも、これからもっと感謝されることになるのかもしれない。(記者コラム・杉浦 大介通信員)

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2021年12月14日のニュース