2020年ロッテで驚いたベスト5!藤原、朗希、和田、マーティン、そして一番は!?

[ 2020年12月30日 08:30 ]

ロッテの安田尚憲
Photo By スポニチ

 新型コロナで思うような取材ができなかった一年。2020年はロッテ担当としてキャンプ、シーズン、ポストシーズンと例年よりも少し離れたところから見た。個人的にはリーグ優勝、日本一に輝いた05年以来、記者として久々に古巣へ戻った。そこで驚いたことを、1位から5位まで順位づけして独断と偏見で挙げてみた。

 では、5位から!

 (5)藤原のパンチ力
 石垣島の春季キャンプで、松本尚樹球団本部長と一塁ベンチで、「こんなに、いい若手がいると思わなかっただろう」と雑談した。安田、藤原、和田、種市、岩下、小島――。15年前はまだ30代半ばながら、すでに西岡、今江らを発掘した敏腕スカウトだった本部長の言葉には自信がみなぎっていた。

 その中でも、自分が「一番凄い」と思ったのは、藤原のスイングだ。実は18年夏の甲子園決勝「大阪桐蔭―金足農」を現地で取材した。試合前の囲みでは、藤原の隣りを陣取って聞いた。そのときから端正な顔立ち、筋肉質なのに細身なシルエット、プロでも人気が出ると確信した。

 一方で、甲子園で藤原の弾丸ライナーを目の当たりにしたが、プロでは俊足を武器にするのかなと想像した。中距離打者だと思ったのだ。ところが、実際にキャンプでフリー打撃を見たら印象は違った。2月8日の台湾・楽天との練習試合で放った右翼席後方の防御ネットに突き刺した一発で、いずれは30本塁打を狙えると思った。

 (4)佐々木朗が160キロ
 こんなに簡単に出るのか。5月27日のシート打撃に登板。先頭の菅野に157キロを右中間席へ運ばれた。高卒ルーキーが157キロを投げただけでも衝撃的なのに、続く藤岡の初球は160キロを計測。3球目も160キロをマークし、3球三振に打ちとった。

 自分の中ではダルビッシュ、大谷、そして佐々木朗を担当したことは、ちょっとした自慢だ。偶然とはいえ、メディアの中で自分一人だけだからだ。当然、大谷がプロで初めて160キロを投げた試合も目撃したが、入団2年目の6月だった。

 細かなコントロールを気にせず投球できれば、早い段階で大谷の記録を更新しそうだなと感じた。だって、本塁打を浴びた直後に、少し力を入れただけで160キロが出てしまうのだから…。今年、一度も実戦登板できなかったことも逆の意味で驚いたが、潜在能力はまさに末恐ろしい。

 (3)和田のスライディング
 育成から支配下登録された異色のスピードスターは、個人的に実家が近い同郷であることから、特別な親近感を持っていた。そんな経緯もあり、キャンプ中から注目。練習から気になっていたのは、二塁へ滑り込む姿だ。スライディングがベースに近いと感じていた。左利きの和田は左足を伸ばし、右足を畳むのだが、ベースに突き刺さる衝撃が凄まじかった。

 ところが、7月に「和田の盗塁企画」を取材すると、「なるべく強く、ベースの近くでと考えています」と意図したスライディングだと知った。それからは、練習中に一塁からスタートを切ってスライディングせずに二塁を駆け抜けるシーンを見ても、不思議に思わなくなった。スピードを落とさないで滑るための準備なのだろう。ファンの方には、来年は和田のスライディングの強さにも注目してもらいたい。

 (2)マーティンの鬼肩
 今までの記者人生で、一番強肩の外野手は糸井だと思っている。一方で稲葉篤紀によるバックホームの精度も圧巻だった。ストライクが来るから、間一髪でアウトにできるのだ。マーティンは強肩なのに、コントロールも抜群だった。

 二塁に走者がいて右前打が飛べば、かなりの高確率で本塁タッチアウトになった。あの肩だけでもゴールデングラブ賞に匹敵するレベルだと思ったが…、結果は残念だった。ちなみに、球団関係者によると、マーティンがマウンドから投げれば150キロは出るという。そういえば、糸井もプロ入り当初は最速151キロ右腕だった。

 (1)安田の4番起用
 2020年の一番の驚きは、安田を4番で使い続けた井口監督の我慢強さだ。開幕直後、絶不調で安田がベンチを温め始めた頃には、2軍に落とすのではないかと、正直思った。才能ある若手だからこそ、試合で使わないならば1軍に置く意味がないからだ。

 それでも、7月7日に安田が今季1号を放ち、復調気配が漂うと、同21日から86試合連続で4番に置いた。開幕4番だったレアードが腰痛で離脱し、井口監督は「他にいなかった。それならば、安田を育てようと思った」と振り返るが、安田の調子が落ち、チーム成績も下降しても打順は変わらなかった。

 他の指揮官だったら、できなかったかもしれない。事実、安田の今季成績は打率・221、6本塁打である。それでも、結果的には未来の4番候補に貴重な経験をさせながら、2位を死守した。勝利と育成の両立――。言葉にするのは簡単だが、これって限りなく不可能に近いミッションでもある。CS進出が危うくなった時期には、ファンの間でも賛否があったのは知っている。だた、個人的にはチームの将来を考えれば、これだけでも価値のあるシーズンだったと思う。(記者コラム・横市 勇)

続きを表示

2020年12月30日のニュース