阪神・藤浪 お股ニキ氏から「復活助言」あった ダル、千賀が認めた“プロウト”が大分析

[ 2020年12月30日 05:30 ]

7月30日、ヤクルト戦で10三振を奪う快投を見せた藤浪。6回にスプリットで山崎から三振を奪った今季のベストボールが生まれた
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 大リーグで活躍するダルビッシュがその眼力を認め、ツイッターでプロ顔負けの鋭い分析を行うプロウト(プロの素人)の「お股ニキ(@omatacom)」が29日、阪神の藤浪晋太郎投手(26)を大分析した。今春から交流を図り、驚異的な落差と球速で新たな武器となったスプリットは同氏の助言があったという。ツイッターで「チャリコ遠藤(@sponichi_endo)」として活動する阪神担当記者が真相を直撃した。(取材・構成=遠藤 礼)

 ダルビッシュ、千賀……球界を代表するエースにも助言を送るお股ニキの目に「先発・藤浪」の完全復活は確かに見えていた。

 「まず平均151キロを超える速球の威力と制球が戻ってきたのが何より大きいです。スタミナも含めて、その馬力は、やはり並大抵ではないですよ」

 かねて「藤浪投手の大ファンで球界の宝」と評する。692日ぶりの白星を挙げたプロ8年目の今季。大きな光明があった。初登板となった7月23日の広島戦。6回にピレラに満塁弾を浴びた苦いマウンドで、新境地を開く一球を投じていた。

 「堂林選手に投げた144キロのスプリットに目を奪われました。実は14勝した15年も得意のカットボールを上回る空振り率を記録していて、元々スプリットの質が高い。投げ方的にも合っていてスプリットをしっかり低めに投げようとする意識も高いと見てました」

 著書なども読み込んでいた藤浪から今年に入って「データなど参考にさせてほしい」とSNSを通じて連絡を取り合うようになり、広島戦後も映像を交えて「このスプリットを増やせば、投球は確実に楽になり、相手は絞れなくなる。高めにあまり抜けないし、150キロを超えるフォーシームと似た軌道で落とせば、多くの空振りを奪える。カットボールとの差別化も図れる」とメッセージを送信。藤浪から「このボールでカウントをとったりすることはこれまで意識してこなかったですが、ブルペンで練習してみます」と返信があったという。

 実際、7回1失点だった1週間後の7月30日ヤクルト戦では、広島戦で約3%(3球)だったスプリットの割合を20%(23球)まで増加させ10奪三振。10月末に放送されたリモートでのテレビインタビューで、藤浪は今季の「ベストボール」として6回2死二塁で山崎を空振り三振に仕留めた148キロのスプリットをあげている。

 同氏も「その試合の空振り率は30%。千賀投手のお化けフォークでも約26%で、30%を超えるのは驚異的。山崎選手への一球はメジャー級」とうなった。その上で、理想の投球スタイルを提案した。

 「やや低めのアングルから、それほど多くない回転数でシュートする直球はツーシームのような性質で、ゴロを期待できます。その軌道を見せた上で強力なスプリットやカット、スライダーを左右に曲げ落とすことができれば“ピッチトンネル”を形成できます。打者は球種や左右どちらに曲がり落ちるか区別がつかないですよ」

 藤浪晋太郎の“夜明け”は間近と見ている。

 お股ニキは、藤浪の来季完全復活のカギの一つにブロッキング、フレーミングでそれぞれ球界屈指の能力を持つ梅野と坂本の両捕手の存在をあげた。

 「高いブロッキング能力を信じて低めにスプリットを投げ込み、フレーミングを生かして右打者の外から(ストライクゾーンに)入るバックドア、左打者の内角ボールゾーンから入るフロントドアのボールを、カットボールやスプリットを意識させつつ投げ込んでいけば、多くの見逃しを奪うことが可能です」

 時折投じるスライダーにも着目。「ぜひ投じてほしい。緩急や奥行きも出るし変化量が大きいボールも有効。相手が速球狙いのところで変化球で入るような余裕を持てれば、追い込めば強力なスプリットの決め球もあるので、より投球が楽になります」と期待した。

 ≪藤浪「記事読んで生かしたい」≫取材にあたり、お股ニキは藤浪に連絡を取った。配球面などのやりとりをどこまで明かしていいか悩んだが「ありのままを書いてください。自分も記事を読んで今後に生かしたい。楽しみです」と返信があったという。藤浪はすでに著書「セイバーメトリクスの落とし穴」「ピッチングデザイン」も読破。先発としてフル回転を期す来季も活発な意見交換がありそうだ。

 ◆お股ニキ 生年月日、出身地は非公表。「ニキ」はネット用語で「兄貴」の意味。本格的な野球経験は中学の部活動までながら独特の視点で選手らを分析する「つぶやき」が人気を呼んでいる。

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2020年12月30日のニュース