エンゼルス・キャンプ地ルポ 一気に不安広がる 球音が消えた…仕事も消えた

[ 2020年3月17日 05:35 ]

エンゼルスのキャンプ地では一斉に荷物出しが行われた(撮影・柳原 直之)
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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、26日(日本時間27日)の開幕を延期した大リーグは15日(同16日)、12日午後4時以降のオープン戦を中止にしてから初めての日曜を迎えた。大谷翔平投手(25)が所属するエンゼルスのキャンプ地・アリゾナ州テンピで取材する柳原直之記者(34)が現地をリポートした。

 抜けるような青空が広がる、絶好の野球日和だ。だが、球音は聞こえない。エンゼルスのキャンプ地「ディアブロ・スタジアム」は静寂に包まれていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響でレギュラーシーズン開幕の最低2週間の延期と、オープン戦の中止が発表されて初めての日曜を迎えた。球場は施錠され、遠めから無人のグラウンドをのぞくことができるだけ。ファンがやって来ては外観を背景に記念写真を撮っては去っていく光景が何度も続いた。

 30年来のエ軍ファンで毎年、キャンプ地を訪れるというゲーリー・ルイスさん(61)はダニーズ夫人とともに記念撮影し、物憂げな表情を浮かべていた。「昨年11月頃にオープン戦のチケットを買ったけど、お金を失って悲しいのではない。野球をはじめ、いろいろなスポーツが中断されて悲しい」。大リーグは米国でナショナルパスタイム(国民的娯楽)と呼ばれ、避寒地のアリゾナとフロリダの両キャンプ地には全米の野球ファンがこぞって訪れる。ルイスさん夫妻も自宅のあるカリフォルニア州ハンティントンビーチから車で5時間かけてやって来た。「選手たちの健康が大事。仕方がない」と話すものの、そのショックは大きい。

 球場のパート従業員への影響も大きい。顧客サービスなどを担当する女性のデビー・デービスさんは「残りの仕事がなくなり、1500ドル(約16万円)ほどの給料を失った。生活費は週100ドル(約1万600円)だけど、今後は週50~60ドル(約5300~約6400円)ほどで過ごさないといけないのよ」と嘆いた。この日、球場外周の花壇の整備を終え、今月はもう仕事がないという。

 アリゾナやフロリダの空港では洗浄作業が目につき、テンピ近郊のスーパーでも日用品を買い占める動きが広がっている。キャンプ当初、大リーグは新型コロナウイルスに対して「対岸の火事」の印象が強かったが、ここ数日で一気に不安が広がっている。

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