日本ハム・栗山監督 新型コロナ禍の今だからこそ「プロ野球の意味を示さなければ」

[ 2020年3月17日 09:00 ]

札幌ドームの監督室の日本ハム・栗山監督(撮影・高橋茂夫)
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 野球にできることがある――。日本ハムの栗山英樹監督(58)がスポニチ本紙の単独インタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大で先行き不透明な状況下でプロ野球、そして選手の使命について激白。同ウイルスの感染者が増加の一途にある北海道への思いも熱く語った。4年ぶりのリーグ優勝へ、いつか来る「開幕」を信じて準備を進める。(聞き手・秋村誠人、東尾洋樹)

 ――全国的な新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が延期となり、先行きも不透明な状況が続いている。

 「選手には“3月20日に開幕したつもりで全力で行く”と伝えてある。開幕が3週間後なのか1カ月後なのか分からないけど、その時期(開幕)は必ず来るわけで、そういう捉え方をしてくれ、と。“いつ開幕するのか”ということに引っ張り回されてはいけない」

 ――開幕が延期となったのは開幕直前の3月11日に東日本大震災以来が発生した2011年以来、9年ぶり。

 「東日本大震災の時はこうなった現象を一緒に何とかしながらいくということだったけど、今回は先が見えていないから違った難しさがある。その中で、たくさんの方々が感染しているのであれば、その方々に喜んでもらう、元気を与える責任がある」

 ――国難でもある状況下でのプロ野球の存在意義は?

 「プロ野球は国民のもの。もう誰かのものではない。どういうふうに我慢するかを国民の皆さまと共有する方向性を示すものだと思っている。こういう時こそ野球がもっている力、プロ野球の意味を示さなければいけない」

 ――プロ野球以外でも大きな大会が延期や中止に追い込まれる中、栗山監督にとってはキャスター時代に熱を入れて取材していた高校野球も選抜大会が中止になった。

 「世の中の流れだったので判断が大変だったと思う。一度“(無観客試合で)できるかもしれない”という方向になっていたから、やらせてあげたかったという思いは正直ある。球児たちは納得いかないかもしれない。でも、甲子園で試合こそできなかったけど、出場校に選ばれたことを誇りに思って頑張れば、長い時間がたった時にいい思い出になるはず。いろんな思いを背負って頑張っていってほしい」

 ――02年に「栗の樹ファーム(※1)」を完成させるなど2012年の監督就任以前から北海道での生活の拠点としている栗山町では、有名なコロッケ製造業者も倒産した。

 「(栗山町に)来た頃から何かイベントをやるとか、子供の野球大会をやるって言ったら差し入れしてもらっていた。(倒産した)最後のきっかけがコロナであることは間違いないわけだからね…。頑張っている方であるのは知っていただけに、とてもつらい…」

 ――感染拡大防止に向けてリーダーシップを発揮する北海道の鈴木知事とは、夕張市長時代から旧知の仲。

 「凄く信念を持ってやっている。特に大変な状況になればなるほど、リーダーとして責任を持って指針を示す人が必要。やったことが良いか悪いかは別として、先にああやって動ける(※2)のはとても凄いこと。命を大事にしようと思って一生懸命やっていくということだと思う」

 ――同じ北海道に拠点を置く日本ハムの指揮官として思うことは?

 「自分が“こう思う”ということだけは心の中ではっきりさせておかないと、揺らいでしまう。この立場は自分の本質がないと、といつも思っている。北海道の皆さんが少しでも苦労しないようにファイターズはあるべき。球団が“ファイターズとおやくそく”(※3)をやってくれたのは誇りだし、ファイターズにいてよかったと思う。一番大事なところで全部投げ出せなかったら意味がない。そこで臆していたら何も生まれてこない。人の命は一人でも重い。それを防げることがあるなら皆で努力すべき」

 ――監督就任9年目で4年ぶりの頂点を目指す今季に向けて。

 「ここまで万全の準備をしてきた。今はただ、野球をやる上で必死になるしかない。調整が難しかったり、外出を制限されたりしているけど、我々は“大変”なんて言葉を言ってはいけない。もっと大変な人が、たくさんいるわけだから。野球ができることに感謝して、北海道の皆さんの生活の指針となるよう、共存して道を歩いていきたい」

 ※1 栗山監督が北海道栗山町の協力を得て私財を投じ同地に建設した全面天然芝の野球場やグッズを展示するログハウスなどの施設。99年に観光大使に招かれたのが縁で町民との交流が始まり、映画「フィールド・オブ・ドリームス」を見て「いつか天然芝の野球場を造りたい」と抱いていた夢を02年に実現。野球場では毎年夏に少年野球大会を開催している。

 ※2 コロナウイルス感染拡大を受け、鈴木直道知事は「やりすぎではないかという批判もあるかもしれないが、政治判断の結果責任は私自身が負う」と宣言し、2月27日から全国で初めて私立も含めた道内全ての小中学校を一斉に臨時休校とするよう要請。翌28日には道民に週末の外出を控えるよう呼び掛ける「緊急事態宣言」も発令するなど迅速な対応を見せた。

 ※3 球団はコロナウイルス感染拡大を受け、長期間の自宅待機を強いられている全国の子供たちに向けて「ファイターズとおやくそく」プロジェクトと題し公式SNSを通じて、さまざまなメッセージを発信中。選手が正しい手洗い、うがいを実践したり、公式ユーチューブでは栗山監督が出演する「寺子屋ファイターズ」が開校し、指揮官自ら分かりやすく「論語」を解説した。

 【取材後記】北海道の生活は栗山監督の活力といってもいい。毎朝の散歩。自宅のある栗の樹ファームの裏山を歩き、四季を感じる。雪が解けて春になれば、リスや鳥など多くの動物たちと出合う。自然の息吹に身をさらすことで心身が洗われ、感性が研ぎ澄まされるという。

 「歩いていると、いろんなことを考えられるんだよね」。監督就任当初の12年は札幌市内でホテル住まいだったが、ほどなく栗山町に拠点を移した。北海道の自然をより感じられる場所。「やっぱり落ち着くから」と。それが今、こよなく愛する北の大地が新型コロナウイルスで揺れている。インタビューでも心を痛めているのが端々に伝わってきた。

 まだ先は見えてこない。でも、実りの秋には「裏山で採れたよ」と言って、栗と落葉(北海道などで採れるきのこ)をお裾分けしてくれる栗山監督の姿を見たい。もちろんチャンピオンフラッグと一緒に。(専門委員・秋村 誠人)

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