【斎藤隆氏サミーレポート】NoMore不祥事 人間性見極め育てる米ドラフト

[ 2018年9月21日 10:30 ]

 日本球界は今年、若手選手による残念な不祥事が何件かありました。そのたびに球団の教育や管理態勢が問われますが、そもそも、球団の責任以前に、その選手は入団する前からそのようなトラブルを起こす素性があったという見方もできます。日本は来月25日にドラフト会議が行われますが、私がパドレスで仕事をしていて驚いたことの一つが、ドラフト候補選手への、いわゆる「身辺調査」です。

 ドラフト指名する際、一番の決め手となるのは、もちろん、選手の能力です。投手、野手でそれぞれいくつも項目があり、細かく数字をつけて評価しますが、同じくらい重視しているのが、「人間性」の欄。基本的な性格にとどまらず、例えば投手なら味方の失策でピンチを迎えた時にマウンドでどのような態度を示すのか、チームメートといい関係を築けるタイプか、あるいはトラブルを起こしたことがあるか――などが、ぎっしり書かれています。野球の能力だけでなく、人間性も把握していることで、成功への道筋もつけやすくなります。

 米球界では有名な話があります。現在もメジャーで活躍している某投手は、ドラフト候補と目されていた大学時代に大きな過ちを犯しました。仲間とともにある高校に忍び込み、ノートパソコン29台を窃盗。彼は運転手役でした。多くの球団が指名を回避する中、某球団は「仲間に誘われてついやってしまったが、十分反省している。更生する可能性はある」と判断して指名。マイナー時代からしっかり選手と向き合って教育し、オールスターにも出場する一流の投手に育て上げました。

 失敗に厳しい球団もあります。ドジャースは私が在籍していた時、バーでケンカした若手選手をすぐ翌日に解雇しました。これが「ドジャース・プライド」。でも、必ず受け皿になる球団があります。MLB全体として、若い才能を摘まずに、育てていこうとする意識は強く感じます。

 選手の運命を決めるドラフト会議。人間性を知った上で指名し、責任を持って育てる。それが本当の意味での「育成」だと思います。(パドレス球団アドバイザー)

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2018年9月21日のニュース