コリジョンルールで野球が変わった 走攻守で求められる頭脳プレー

[ 2016年4月5日 09:20 ]

3月26日の巨人対ヤクルト2回戦、2回無死二、三塁でタッチアップした三走のヤクルト・畠山は本塁憤死する。捕手は巨人・小林誠

 プロ野球が開幕し、セで27試合、パで24試合の計51試合を消化した。今季から導入された本塁上の衝突防止ルール「コリジョンルール」が適用されて判定が覆った事例はない。ルール順守へ、春季キャンプ、オープン戦を通じ、審判員、球団での意思統一を図った一定の成果が出ているとの見方もできるが、「本塁の攻防」を巡って野球は確実に変わっている。 (取材=プロ野球取材班、構成=倉橋 憲史)

 捕手は走路を空けなければならない。ブロックも禁止された。本塁ベースの前に捕手が立ち、手でタッチにいく。広島の石原捕手が「ブロックできる前提なら、ポジショニングや技術というものがあるが、あそこ(本塁ベースの前)に立つ時点でタイミングだけの問題になる」と語る捕手の立ち位置の変化は、攻守、作戦面に、さまざまな変化を起こしている。

 (1)中継プレーの変化 3月26日の巨人―ヤクルト戦(東京ドーム)の2回無死二、三塁から坂口の左邪飛で三塁走者の畠山がタッチアップ。亀井→坂本の中継プレーでアウトにした。注目すべきは坂本の立ち位置だ。

 巨人・坂本「ランナー(の走路)がかぶるので、ずっと頭に入っている」

 亀井が捕球したのは左翼のファウルゾーン。昨年までなら「捕手と一直線上」にあたる三塁ベースよりもファウル寄りに中継に入るが、坂本は三塁ベースの内側、フェアゾーンに位置した。「逆くの字」を描いた中継プレー。捕手からしても、一直線上にいた場合、送球と走者の走路がかぶる。コリジョンルール適用になる危険性が増すことを考えた変化だ。

 さらに外野手は、中継プレーが増えると口々に断言する。

 ヤクルト・坂口「明らかに送球の意識は変わった。基本は(内野手の)カットまで。本塁でセーフになる可能性が高い。勝負して後ろの走者(打者走者含め)を二塁に行かれるのはまずい」

 巨人・亀井「今のルールでは、(本塁に)近い人が正確に投げてくれた方がいい。無死でもむちゃして走ってくることが多いので、送球の正確性が大事になる」

 守備位置の指示を出す守備コーチも繊細だ。ヤクルトの福地外野守備走塁コーチは「(打球方向が)左翼から右翼にいくにつれ、走者が本塁に生還する可能性は高まる。右翼からの送球では、捕手は走者に背中を向ける形になる」。肩の強さ、相手走者の足の速さによる守備位置の変化は当然だが、右翼の守備位置はさらに「プラスアルファ」が要求されている。

 (2)内野の守備位置はより繊細に 無死か1死三塁の場面では「ゴロゴー」(ゴロになった瞬間にスタートを切る)作戦が増える。失点したくない場面では前進守備となるが、楽天の真喜志内野守備走塁コーチは「ギャンブルスタート(バットに当たった瞬間に三塁走者がスタートを切る)ではなく、ゴロゴーだと極端に前で守る必要はない」と語る。

 巨人は開幕戦となった3月25日のヤクルト戦(東京ドーム)で0―0の2回に前進守備を敷いた。エースの菅野が投げていた上、三塁走者は俊足ではない畠山。序盤に前進守備を敷いたのも異例だが、しっかりと相手走者の足も考え、オープン戦で試した超前進守備ではなかった。高橋監督も「(前進守備は)相手バッターにもプレッシャーがかかると思った」と説明したが、攻撃側が「コリジョン」を強く意識することも想定し、繊細に対応した事例だった。

 (3)積極走塁は成功の裏にリスクを伴う 攻撃側から見れば、一、三塁での重盗の仕掛けが目立つ。DeNAは3月30日の巨人戦(横浜)で、重盗を試み、三塁走者の筒香が本塁に生還。一方で、4月2日の阪神戦(横浜)では逆に二塁で刺され、三塁走者も動けずに終わった。ラミレス監督も「(阪神捕手の)梅野がうまくステップした。(三塁から)スタートする隙がなかった」と話したが、積極性は暴走や失敗と隣り合わせにある。

 各球団とも三塁走者は大きなリードをとっている。だが、同時に帰塁する意識も強く持たないといけない。西武の奈良原内野守備走塁コーチはオープン戦で三塁走者のけん制死したシーンに「打者の動きや反応を見て、打たないと思った時点で戻らないと。ミットに入ってからでは間に合わない。(リードを大きくとる分)瞬時な判断が求められる」と言う。これまで頭になかった部分の意識向上も求められる。

 監督は「勝負の潮目」を見極める判断力が求められる。1死三塁の場面で、投手は「犠飛」だけでなく「内野ゴロ」でも1点を取られるケースがあるため、配球も変化があるだろう。監督、コーチ、選手は敏感に対応策を練っている。

 「中途半端な判断でプレーするとオールセーフになる」と西武の炭谷。繊細な判断とともに、決断力も問われる。「コリジョン導入」により、野球のより精緻な部分が、クローズアップされようとしている。

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