侍・湯浅に独立L富山時代の恩師・伊藤智仁氏がエール 「思い切って腕を振れ」

[ 2023年3月18日 05:25 ]

WBC史上初めて独立リーグ出身の投手として侍ジャパンに選出された湯浅

 侍ジャパン・湯浅京己投手(23=阪神)に心強いエールが届いた。BCリーグ・富山時代に監督だったヤクルト・伊藤智仁投手コーチ(52)が当時の思い出を明かし、米国での準決勝以降の奮闘を願った。(取材・構成 青森 正宣、阪井 日向)

 湯浅はWBC史上初めて独立リーグ出身の投手として侍ジャパンに選出され、1次ラウンドでも2試合に登板して計2回無失点で役割を果たした。独立・富山時代を誰よりも知る伊藤コーチは当時を懐かしげに回想した。

 「真っすぐは良かった。めちゃくちゃいい子ですよ。練習もよくするし、性格も良くてみんなから好かれる」

 聖光学院(福島)から最短1年でのプロ入りを志し、大学進学ではなく独立リーグの門を叩いた気概と、持っている素質を認めて思考を巡らせた。

 「どうやったら、この子がNPBにいけるかなと。故障明けで体も強くなかった。すぐケガするだろうなと。ゆっくりゆっくりやってましたね。1年間ある程度計画的にというか、夏ぐらいに、いいパフォーマンスが出せればスカウトの目にも留まるだろうと」

 高校、大学に比べて視察される機会が少ない環境を踏まえ、勝負どころを見極めた。初登板は5月4日。夏場はミニキャンプで投球のキレを出させて、実戦で阪神・筒井和也スカウトの目に留まるアピールに成功した。

 18年ドラフト6位で阪神入団後も3度の腰椎分離症を発症。順風満帆ではなかった道のりに「本当にタイガースさんがよく面倒を見て、いい育成をしてくれた」とうなずいた。2度目の腰椎分離症発症後には「焦るな 怒るな 威張るな 腐るな 負けるな」の頭文字を取った「青い熊作戦」を伝えた。

 「僕も経験あるけど、やっぱり、しんどいから。パワーアップして帰ってきなさいって意味で。いろんな人の話を聞きながら、ああいう覚え方が一番楽やろな、と」

 故障とリハビリを繰り返した現役時代の経験から込められた思いを、湯浅はグラブに青い熊の顔をデザインした刺しゅうを入れるほど大切にしている。

 昨季ヤクルト戦は11試合で防御率0・00で“恩返し”された。「去年はベンチで密かに応援していましたけど、今年はもうやっつける気持ちでいきますよ」。かつての恩師はにやりと笑いつつ、準決勝以降の戦いへ「結果を気にするのは監督とコーチだけでいい。こういう経験はなかなかできないから、少しでも自分が上達すればいいと思う。思い切って悔いのないように、腕を振ってくれればいいんじゃないですか」とエールを送った。

 ◇伊藤 智仁(いとう・ともひと)1970年(昭45)10月30日生まれ、京都府出身の52歳。花園高から三菱自動車京都を経て92年ドラフト1位でヤクルト入団。93年に4完封を含む7勝、防御率0・91で新人王。通算成績は127試合で37勝27敗25セーブ、防御率2・31。03年の引退後は05年から17年までヤクルトのコーチを務め、18年はBC・富山監督。2年間の楽天コーチを経て21年からヤクルト投手コーチ。右投げ右打ち。

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