【阪神・大山-亀山氏対談(下)】自分が打たないから悪い「そういう気持ちでずっとやっている」

[ 2023年2月18日 07:01 ]

亀山氏(右)と対談した大山(撮影・岸 良祐)
Photo By スポニチ

 ※対談(上)から続く

 亀山氏 ところで、昨シーズンは打撃の方でもそれなりの数字(打率・267、23本塁打、87打点)が出てきているけど、キャンプで打撃練習を見ていても、バットをしっかり止めているところからスタートさせている。

 大山 ここ数年、無駄を少なく、シンプルにいきたいというのはずっと思っていました。でも、なかなかうまくいかなくて…。バットのヘッドを少し投手寄りに入れてみたりしていたんですけど、たどり着きたいところはそこ(シンプルさ)なので、今は無駄を省くことをしっかりやっています。シーズンに入ってから、体重や季節によって体の状態は変わってくる。臨機応変に、今持っている引き出しの中から、その時々の自分に合った打撃フォームを探していけばいいのかなと思います。

 亀山氏 タイガースというチームでクリーンアップを打つ選手は、キャンプでどうしても長打を意識させられる。大山選手も長打を打てるから、長打を期待され始めた時期から少しバランスを崩したかな。ただ、ここ何年かを見ていると、ボールカウントとか相手投手に応じて大きく振れるときは(長打を)狙うけれども、センター返しや右打ちなど、状況に応じた打撃もできるようになった。だから今年は、得点圏打率や打点にこだわってほしい。

 大山 いろいろ考えられるようになったというのは、経験をしてこられたから。ホームランを打って、打点を稼いで…というのが一番理想なんですけど、そんな簡単ではないですし、セカンドゴロでも打点はつきます。自分の引き出しの中に、その時々に何個かの選択肢を持つようにすることで、打席での焦りもなくなる。ここ数年はちょっとした余裕というのができてきたので、もっともっと引き出しをつくってもいいのかなと思います。決めるところは決める、そういうところは意識していきたいと思います。

 亀山氏 ここ何年かは、外国人打者が打ってくれれば何とかなった試合も多かった。ただ、打たなかったときに、大山選手に重圧が乗っかってきたイメージがすごくある。これは苦い経験?それともすごくいい経験?

 大山 外国人選手の成績は関係ないですね。結局は自分が打たないから悪い。そういう気持ちでずっとやっているので、外国人選手が打てなかったから…というのは言い訳にしかならない。そこで言い訳をするようでは、その先はない。もちろん、打ってくれるのが一番ですけど、そこは自分がしっかりやらないと。自分で何とかしよう、というのは常に思っています。

 亀山氏 昨シーズンのお立ち台でも「チームが勝つために」ということをよく言っていた。岡田監督は本当に勝ちにこだわる。だからこそ、大山選手の常に全力でプレーする姿勢というのは、シーズンを戦っていく中で大事。さらに今季からは甲子園での声出し応援が解禁される見込み。それも大きなモチベーションになりますか。

 大山 入ったときからあの大観衆の大声援の中でプレーさせてもらっていたので、無観客試合や声出し不可というのは寂しい気持ちもありました。でも、その期間って声援がない分、野手同士の声が通りやすかった。声出し応援が解禁されると、声だけではなくて、ジェスチャーやアイコンタクトも必要になってくる。そういう話し合いがより大事になってくるので、頭に入れながら臨みたいです。でも、やっぱりあの大声援の中でプレーできる幸せを感じながらやりたいと思います。

 亀山氏 野手のキーマンは間違いなく大山選手になる。ぜひ、たくさんマウンドにも声をかけに行ってほしい。

 大山 頑張ります。

 《取材後記 一つのアウトにこだわり続けた先に》

 対談終了後、大山がポツリと言った。「僕、(GG賞の)記者投票の数がかなり少ないんです」。昨季の得票数を見ると、一塁での出場試合数は同じ100でも、固定かつ日本ハム時代に4度受賞の中田(巨人)は守備率.998で1位の123票。一方の大山は同.995で5位の16票で、「該当者なし」の11票と大差はなかった。複数ポジションを守った事実を差し引いても少し寂しい。

 「守備位置固定」や「堅守のイメージ」は厳密な数字以上に大きな意味を持つことを、大山は身をもって知る。だから守備の勲章も「“ついてくるもの”と思った方がいい」とあえて目指すことはしない。追うのは技術向上だけ。一塁に専念できる今季、一つのアウトにとことんこだわり続けた先に、“ついてくるもの”がきっとある。(八木 勇磨)

続きを表示

2023年2月18日のニュース