先発投手になりたい 仙台育英の左腕・仁田陽翔が刻んだ今大会最速146キロ 須江航監督「これでいい」

[ 2022年11月21日 16:57 ]

明治神宮大会第4日・高校の部準決勝   大阪桐蔭5―4仙台育英 ( 2022年11月21日    神宮 )

<大阪桐蔭・仙台育英>4回、無失点で抑え、先発の仁田(左)に迎えられる仙台育英の2番手・高橋(撮影・木村 揚輔)
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 明治神宮大会高校の部の準決勝が行われ、今夏の甲子園で東北勢初の日本一となった仙台育英(宮城)は大阪桐蔭に4―5で敗れた。2―5で迎えた9回は大阪桐蔭のエース左腕・前田から2点を奪って1点差に迫るも反撃はここまで。今春の選抜王者に対して10月の栃木国体に続く連敗を喫した。

 先発した最速147キロ左腕・仁田陽翔(2年)は3回1/3を投げて3安打1失点。力感のない、しなやかなフォームから今大会の投手で最速となる146キロをマークした直球にスライダー、カーブを織り交ぜて強打戦から4奪三振。勝利につながらなかったものの、名門相手にゲームをつくり「野手がしっかり点を取ってくれて気楽に投げられたので、このようなピッチングができたのかなと思います」と振り返った。

 自身初となった今夏の甲子園では衝撃の147キロをマーク。東北屈指の左腕としてスカウトからの注目度は一気に高まった。夏までは層の厚い投手陣の中、リリーフを公式戦での主戦場としていたが、チーム内の最上級生となった秋からは本格的に先発転向を目指した。

 短いイニングで140キロ中盤の直球で圧倒していくスタイルから緩急を駆使した投球へ。「言うは易く行なうは難し」である。練習試合では力の入れ具合を誤り持ち味の直球が130キロ中盤まで落ちてしまうこともあった。須江航監督からは「このままポテンシャルだけで“ドーン!”といくみたいな荒々しさ、“150キロを投げよう!”みたいな感じでもいいし、ある程度ゲームをつくれるような出力や組み立ての仕方をしてもいい」と選択肢を与えられた。それでも仁田がこだわったのは先発投手として成長する道。秋季宮城県大会、栃木国体、優勝した東北大会で試行錯誤の投球が続いた。

 前日はクラーク(北海道)相手に6回で12点を奪った強打の大阪桐蔭を相手に先発。100キロ台のカーブ、切れ味鋭いスライダーで狙いを絞らせず、直球は140キロ台を連発と新スタイルは光り輝いた。継投策のため3回1/3で降板となるも、可能性を感じさせる内容に須江監督は「素晴らしい。求めていた安定感と力強さ。だいぶ2つを獲得できそうな感じになってきた。あとは四球を出しちゃいけない時に1個、我慢できるようになればいいんじゃないですかね」と成長を称えた上で、「ただ、成長を焦って求めたりすると本来の良さがなくなってしまうと思うので、今はこれでいいと思います」と慎重に見守る考えを示した。

 冬を迎える前に大きな手応えを得た仁田は「自分の良さをつぶさないように出していこうという考えで、いつでも変化球で(ストライクを)取れるように練習してきた。組み合わせをしっかりやってきました」とかみしめるように言った。夏から身長が1センチ成長した仁田。投手としてのスケールはそれ以上にデカくなった。(柳内 遼平)

 ◇仁田 陽翔(にた・はると)2005年(平17)6月10日生まれ、岩手県大船渡市出身の17歳。猪川小3年から野球を始め、大船渡第一中では軟式野球部に所属。仙台育英では1年春からベンチ入り。50メートル走6秒4。遠投100メートル。憧れの選手はロッテ・佐々木朗。1メートル75、74キロ。左投げ左打ち。

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