東北の公立校が私学脅かす存在に “公立同士の横のつながり”で強化着々、今夏は県立の能代松陽が甲子園へ

[ 2022年8月24日 04:00 ]

公立校ながら甲子園に出場した能代松陽
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 東北の私学が県の枠を超えてつくった「みちのくフレッシュBリーグ」。1、2年生チームが実戦経験を積む取り組みが、東北地区全体の底上げにつながった。

 さらに重要だったのは、公立校のレベルアップ。13~18年の岩手県高野連理事長で現在、水沢(岩手)監督の佐々木明志氏(58)は「ここ何年かは公立校のレベルも上がっている。“私立の強豪校に負けないように”という気持ちの公立校の指導者も多い。私学だけでなく、全体のレベルも上がっていると思います」と証言する。

 今夏、東北勢では県立の能代松陽(秋田)が甲子園に出場。初優勝した仙台育英が戦った宮城大会では、仙台南が4強進出(仙台育英との準決勝をコロナ感染で辞退)するなど、16強の半数が公立校だった。選抜選考対象で、近年18校が参加する秋季東北大会は、昨年5校、20年6校など公立校出場が多い。

 私学に負けない取り組みを行う学校もある。昨春、選抜出場を果たした柴田(宮城)は、仙台大野球部の下級生と練習試合を行い、選手強化を図っている。さらに、以前は手の内を隠す意識が強かった公立校同士が積極的に交流。佐々木氏は「以前よりも公立校同士の横のつながりがあり、情報交換を多くしている」と練習内容などさまざまな情報共有が、公立校全体の強化につながっているとする。

 19年夏の岩手大会で準優勝した大船渡は県立。エースだった佐々木朗(ロッテ)は「私立高校を倒したかった。中学の時の、このメンバーなら行けるんじゃないかと。それで勝つことに意味がある」と大船渡中時代に強豪私学の誘いを断り、私学に立ち向かった。公立校の「打倒私学」は、間違いなく相乗効果を生んでいる。

 佐々木氏はある年、福島県で東北地区高野連の会議が行われた際「“白河の関越え”と言いながら、一回も行ったことがなかった」と私学の理事とともに白河関跡を見学したという。「優勝旗を持って帰りたいね」。仙台育英が当時、交わした言葉を実現。「そんなことも思い出しました」と感慨深げだった。(高校野球取材班)

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2022年8月24日のニュース