【甲子園】満塁弾の仙台育英・岩崎 病気乗り越え「甲子園という舞台で恩返しできた」すべての人に感謝

[ 2022年8月22日 19:11 ]

第104回全国高校野球選手権大会・決勝   仙台育英8ー1下関国際 ( 2022年8月22日    甲子園 )

<仙台育英・下関国際>7回1死満塁、仙台育英・岩崎は左越えに満塁本塁打を放ち、ガッツポーズ(撮影・坂田 高浩)
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 ダイヤモンドを一周する間、胸に押し寄せたのは「感謝」の二文字だった。

 仙台育英の岩崎生弥(3年)が、4-1の7回1死満塁から左翼席へ本塁打。試合を決定付ける一発は同校にとって今大会初アーチ。春夏通じて宮城県勢として初めての満塁弾となった。

 「打席に入る前に天国にいる爺ちゃんに“力を貸して”とバットに思いを込めて打席に入ったんですけど、その後のタイムで須江先生(監督)から“スクイズの場面じゃないから”と伝えられ、自分のスイングをしようと思いました。打った瞬間は入ると思わず“行けっ”という感じでした。皆が応援して支えてくれなかったら、ここでの1本は出なかった。ありがとうという気持ちでした」

 野球を始めるきっかけをくれた祖父、野球を続けるために支えてくれた母、須江航監督、仲間すべてに感謝した。

 2年生だった昨年6月、突然、短い距離を走るだけで呼吸がしづらくなった。中学まで大病もなく、すぐに母・千春さん(43)に「自分はぜんそくかな…」と連絡。病院に向かうと運動に伴い発作が誘発される気管支ぜんそくの一種「運動誘発ぜんそく」と診断された。その後に胃の一部が横隔膜から突出する「食道裂孔ヘルニア」と「逆流性食道炎」も次々に発症。約2カ月は寮から自宅に帰り、10種類もの薬を服用しながら療養した。

 咳も出ず苦しくない状態で練習に臨めたのは今年の6月。最上級生となった今年、レギュラーへの道は遠かったが、ベンチ外だった宮城大会期間に行われた紅白戦で活躍。甲子園でのベンチ入りを勝ち取った。

 療養中は須江監督から電話をもらい「心配の声だったり、やり方はいくらでもあるからと話を聞いて野球に向き合えた」とベンチに戻ると熱く抱擁。練習中やアップで苦しくなると「チームメイトが水を持って来てもらって支えてくれた」とアルプスへ向けてガッツポーズ。母・千春さんにも「本当に自分が苦しい時に支えてくれた」と感謝を忘れない。

 「最後の甲子園という舞台で恩返しできた。まさか最後の夏に日本一を獲れるとは思ってなかったので幸せです」。背番号14にとってすべての人への「感謝」の一発となった。

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