小平奈緒 うれし涙の有終V「氷と親友になれたかな」 34年間のスケート人生に終止符

[ 2022年10月23日 04:10 ]

スピードスケート全日本距離別選手権第2日 ( 2022年10月22日    長野市エムウェーブ )

現役最後のレースに臨む小平(撮影・会津 智海)
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 18年平昌五輪金メダリストの小平奈緒(36=相沢病院)が引退レースで有終の美を飾った。女子500メートルを37秒49で制し、8年連続13回目の優勝。自身が17年にマークした大会記録には0秒24届かなかったが、この種目の北京五輪銀メダリストの高木美帆(28=日体大職)を0秒69差で抑えた。4大会連続で五輪に出場し金1、銀2のメダルを獲得。強い姿のまま34年間のスケート人生に終止符を打った。

 12組中11組に登場した主役がトップに立つと、満員6085人の観衆が沸いた。熱狂する観客に対し、小平は両手を抑えるジェスチャーでボルテージを下げるように要求。優勝を争う高木が滑る最終組への配慮だった。引退レースでも、気遣いは変わらない。優勝が決まると「氷と親友になれたかな。もっと涙でいっぱいになるかなと思っていたけど、凄く楽しかった。ワクワクして大好きなスケートを滑る。ありのままを表現できた。涙はうれし涙です」と目頭を押さえた。

 最終レースの舞台に選んだのは98年長野五輪が開催されたエムウェーブ。24年前にテレビ画面越しに熱狂を感じ、五輪を目指すようになった。ホームコースでもあるこの会場が満員となるのは、その98年五輪以来。「人生で初めて鳥肌が立ったのが長野五輪。(今日は)鳥肌を超えて心が震えて飛び出てきそうな感じでした」と感慨に浸った。全競技終了後には引退セレモニーを開催。19年秋の台風で被災した地元長野の農家からリンゴ1000個を自腹購入し、観客に配布するサプライズも実施した。

 今後は未定で「スケートリンクを超えたフィールドに元気よく飛び出したい」と説明したが、スケート界の発展に尽力したい思いは強い。今季はシーズン最初の大会で引退した利点を生かし、子供たちと積極的に氷上で交流する方針で「来週も1回は滑りたい」と意欲を見せた。現在使用するスケート靴は大学1年時に今は亡き祖父に購入してもらったもの。ブレードなどを交換しながら18年間も愛用している。現役を退いても「体の一部」と表現する相棒との付き合いは続く。

 ◇小平 奈緒(こだいら・なお)1986年(昭61)5月26日生まれ、長野県茅野市出身の36歳。3人姉妹の末っ子で、姉の影響で2歳からスケートを始める。伊那西―信州大を経て、現在は相沢病院に所属。14年ソチ五輪後から2年間、オランダ留学。五輪は4大会連続出場し、初出場した10年バンクーバーの女子団体追い抜きで銀。18年平昌五輪は500メートルで金、1000メートルで銀。趣味はコーヒー。座右の銘は「明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい」(ガンジー)。1メートル65、60キロ。血液型A。

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