羽生結弦 トリプルアクセルは武器であり原点 小学生から教え込まれた「王様ジャンプ」で世界へ

[ 2022年7月21日 05:31 ]

都築章一郎コーチ
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 【緊急連載 羽生結弦のレガシー(2)】多彩な技を持つ羽生の最大の武器と言えば、アクセルジャンプだろう。6種類のジャンプで唯一、前向きに踏み切り、半回転多く回る。今後もプロとして挑み続ける超大技クワッドアクセル(4回転半)は現行のジャンプ基礎点で最も高い12.5点。北京五輪で世界初認定となり、スケート界に新たな扉を開いた。

 小学2年から指導した都築章一郎コーチ(84)は、羽生のアクセルについて絶賛する。「アクセルを跳ぶ前の動きも凄く自然。構えないで、ごく普通の優しいジャンプを跳ぶような感じで跳びきるところが、なかなかできない」。空中で鋭い回転を生み出すためには、体にしっかりとした軸がなければならない。1回転半の習得時から教え込んだ。

 最も難度が高く、成功すれば得点も上がる。都築コーチは世界を制する「王様のジャンプ」と力説し続け、練習の4分の1の時間を費やしてきた。羽生は頭の中にある動きのイメージを体で具現化する能力も高く、メキメキ上達。「僕の武器」となったトリプルアクセルは中2で初成功し、中3の10年世界ジュニア選手権のフリーで2本成功して優勝するなど成績として表れた。都築コーチは「トリプルアクセルから世界に羽ばたいた」と評する。

 12年からカナダ・トロントに拠点を移した。新たに師事した元世界王者のブライアン・オーサー氏は現役時代「ミスター・トリプルアクセル」と呼ばれていた。高難度の4回転ジャンプを習得しながら、加点を引き出すトリプルアクセルもさらに磨きがかかった。19年10月のGPシリーズ・スケートカナダSPでは現行ルールでGOEを含め満点の12点をマーク。4回転半への飽くなき挑戦が続く根底には、強いこだわりとプライドがある。

 高く跳び上がり、美しい軌道を描く唯一無二の羽生のアクセル。昨季の世界ジュニア優勝の17歳、イリア・マリニン(米国)が4回転半に挑戦するなど、こじ開けた扉に続く選手も現れている。新たなフィールドでは、表現の一つだけでなく生きた教科書としても人々を魅了し続けていく。

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