【世界陸上】高野進氏が見た100m 予選としては100点のサニブラウン、決勝進出&日本新のチャンス

[ 2022年7月16日 14:44 ]

陸上・世界選手権第1日 ( 2022年7月15日    米オレゴン州ユージン )

男子100メートル予選で9秒98をマークしたサニブラウン(左から2人目)(ロイター)

 第1日の15日(日本時間16日)に行われた男子100メートル予選で、9秒97の自己ベストを持つサニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)は9秒98(向かい風0・3メートル)で予選7組1位となり、16日(同17日)の準決勝に駒を進めた。坂井隆一郎(大阪ガス)も10秒12で予選を突破。男子400メートルの日本記録を持つ高野進氏が予選のレースを解説した。

 サニブラウンは世界大会で一番、良いスタートだった。スタートから14歩ほど前傾姿勢となるが、6月の日本選手権よりもしっかりしていた。体を起こした後も体幹が安定し、いつもより肩のブレも少ない。力みなくスタートから予定通りの動きができていたように見えた。多く積んできた経験を生かしていた。動きがまとまっており、予選としては100点。この舞台は、彼にとってチャレンジというより主戦場となっている。

 1メートルの風が吹かないと日本人は9秒台が出なかったが、今回は向かい風0・3メートルだった。日本選手が世界選手権で9秒台を出したのは初めて。さらに、世界中の選手と肩を並べる舞台で9秒台を出せたのが画期的。彼はベストの状態だと思う。

 準決勝、ここから先は彼自身の戦い。持っているパフォーマンスを発揮すれば決勝のチャンスはある。決勝に残る意識でなく、あくまで決勝でどう戦うかイメージする準決勝になればいい。過剰な意識より決勝へのステップとして整理できるか。準決勝というのは決勝とも違う独特の舞台。心理戦にもなるが、難しいハードルではない。冷静なスタートから接地の出力を高め、力まずに推進力を高め、アクセルを踏んでいくだけ。それができれば日本記録(9秒95)を超える可能性は十分ある。

 坂井は初出場で持ち味を発揮できた。日本選手は初出場で良いところを出せない選手も多いが、武器であるスタートからのハイピッチを出せていた。ここから先、どうすればいいか見えてきたのではないか。日本選手が相手なら逃げ切れるが、トップスピードをもう一段階、上げないといけないと分かったとも思う。

 坂井は準決勝でもスタートの飛び出しはトップになると予想するが、そこから他選手の圧力を意識しないで走れるか。地面を踏み続ける動きに集中してほしい。いきなり2人は決勝は難しいと思うが、チャレンジする姿を見たい。2人には決勝進出と自己記録を目指してほしい。(男子400メートル日本記録保持者、92年バルセロナ五輪8位、東海大体育学部教授)

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