異彩放つ“アフロあん馬職人”こだわりと決別、リオ切符誓う

[ 2015年8月9日 09:10 ]

アフロ時代の亀山

 6種目で争う個人総合を重んじる体操ニッポンで、その男の存在感は異彩を放っていた。5月、全日本選手権2日目。内村らがオールラウンダー日本一を目指す中、あん馬だけに出場した。他の種目で名前がコールされても演技はせず、一礼してから椅子に座る。その姿に、スペシャリストとしての自負がにじんだ。

 内村や白井は、プレッシャーや緊張とは無縁という。強靱(きょうじん)なメンタルを持つ選手がいる一方で、その男は自らのハートの弱さを認め、隠さない。「どんなに練習をしても、いつも怖い。緊張で肩と背中がビキビキになる」。13年の世界選手権で種目別金メダルを獲得したが、内に潜む恐怖心というライバルは常に手強い。

 外見や言葉でアピールするより、演技で語るタイプが多い体操界で、その男は稀有な存在だった。昨オフ、目立つためにヘアスタイルをアフロに。「スポーツは見てもらわないと意味がない。アフロも1つの手段。あん馬は地味だけど、自分が目立てば見てもらえる」。時の経過とともに、頭部の膨らみは着実に増した。

 6月、世界選手権代表の最終選考会となった全日本種目別。あん馬で大きなミスはなかったが、僅差で2位に敗れ、代表の座を逃した。アフロが採点に影響したわけではないが、「全体のバランスで見ると、頭が重く見えるかも」と指摘する関係者もいる。「やっぱり、世界の舞台に立てないと意味がないっすね…」。器具の片付けが進む会場で、その男は自嘲気味に笑った。

 失意から数日後、行きつけの美容院でアフロと決別した。カットを担当するアフロの店長も、どこか寂しげだった。「絶対にリオデジャネイロ五輪には行きますから、見ていてください」。その男の名は、亀山耕平。神に、いや、はらはらと舞う髪に、リオ切符を誓った。(杉本 亮輔)

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