孔明 初の賞金王、プロ15年目悲願に思わず男泣き 父に恩返し

[ 2014年12月8日 05:30 ]

日本シリーズJTカップ最終日18番、バーディーパットを沈めガッツポーズする小田孔明

男子ゴルフツアー 日本シリーズJTカップ最終日

(12月7日 東京都稲城市 東京よみうりカントリークラブ=7023ヤード、パー70)
 ビッグタイトルに小田孔明(36=フリー)が男泣きした。上がり3連続バーディーを奪うなど終盤に爆発して66をマーク、通算6アンダーで3位に入り、プロ15年目で初の賞金王となった。福岡の実家で見守る病気の父・憲翁さん(69)に最高の親孝行で5年シードを獲得。6位で出た宮本勝昌(42=ハートンホテル)が65で回り、通算9アンダーで3打差を逆転。今季2勝目、ツアー通算10勝目を飾った。
【最終R成績】

 締めくくりは勝者のようなガッツポーズだ。最終18番。上り6メートルのバーディーチャンス。既に賞金王を確定させていた小田孔は1万人のギャラリーが見守る前で「弱気でショートしたら恥ずかしい」と強気に出た。きつい傾斜を駆け上がった球はスライスラインを伝ってカップイン。国内屈指の難ホールでこの日ただ一人バーディーを奪った。国内最強を誇示するフィニッシュに大きく右拳を振り下ろし「最高でした」と白い歯を見せた。

 グリーンを下りると、「賞金王」と大きく書かれた横断幕を掲げる地元・福岡の仲間から祝福され「恥ずかしくて泣けなかった」と涙をこらえた。だが、直後のインタビューエリアで賞金王5度の青木功(72)からねぎらいの言葉を掛けられると、表情は一変。声を詰まらせ「泣かないようにと思ったけど、駄目でした」と涙が頬を伝った。

 前夜、父・憲翁さんから珍しくメールが届いた。内容は「教えません」と伏せたが、名前の由来である三国志の諸葛孔明の言葉で送り出され「結果を残して連絡しようと思った」という。脳の病に侵されて何度か倒れているという父は、地元・福岡で行われた8月のKBCオーガスタも体調不良で来場できなかった。その父と小2から二人三脚で始めたゴルフを極めたプロ15年目。「少しは恩返しできたかな」。初タイトルは、父への最高のプレゼントとなった。

 今季はメジャー2試合に出場し、ともに予選通過。「体はでかいけど、ノミの心臓っす」とおどけるが、世界を経験して「自信」を持ち帰り「最強の40代」藤田との賞金王争いに決着をつけた。また、股関節の可動域を広げるストレッチで柔軟性を追求。終盤12連戦でも闘志はなえなかった。

 賞金王の資格で「一番行きたかった場所」という聖地セントアンドリュースで行われる来年7月の全英オープン出場権を手にした。「4年前に予選落ちしてるから、予選通過して経験をしたい」。成長をやめない36歳の挑戦は、海の向こうへと向けられている。

 【小田孔明アラカルト】

 ☆生まれとサイズ 1978年(昭53)6月7日、福岡県生まれの36歳。1メートル76、85キロ。名前の孔明は「三国志」のファンだった父・憲翁さんが諸葛孔明にちなんでつけた。東京学館浦安高を経て00年にプロ転向。08年のカシオ・ワールドオープンで初優勝。通算8勝。

 ☆スパルタ教育 怪童と呼ばれた地元の手嶋多一に憧れ、小2でゴルフを始める。当時からコーチの父に過酷なトレーニングを課され、週5日は腕立て伏せ、腹筋、スクワット、鉄亜鈴を使ったメニューを各300回。その後、素振りを300回。「全てやるのに4時間。夕飯を食べるのは夜10時くらい」

 ☆趣味 ゴルフ界随一の釣り好きで、オフには船で海に出る。一見飲めそうで、アルコールは一切口にしない。

 ☆涙 13年日本オープン3日目に首位に立ち、インタビューで感極まって大粒の涙を流すほど涙腺は緩め。

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