×

【伊東純也特別手記】「日本全体のために」先人の思い背負い、必ず目的地にたどり着けると信じていた

[ 2022年3月25日 05:45 ]

カタールW杯アジア最終予選B組   日本2ー0オーストラリア ( 2022年3月24日    シドニー )

<日本・オーストラリア>前半、シュートを放つ伊東(撮影・小海途 良幹)
Photo By スポニチ

 7大会連続W杯出場の立役者だ。森保ジャパンの立ち上げからメンバーに選出され続けたMF伊東純也(29=ゲンク)は、W杯最終予選最多タイの4試合連続ゴールなど日本代表の主軸に駆け上がった。苦難の連続だった最終予選を振り返って、スポニチ本紙に特別手記を寄せた。

 ホッとしている、というのが正直な感想です。初戦のオマーン戦を落として、出場停止だった(第3戦の)サウジアラビア戦でも負けて崖っ縁。これまで6大会連続でW杯に出場しているので、「自分がプレーしている代表チームでW杯出場権を逃したら」という重圧はありました。ただ、日本サッカー界の歴史を振り返ってもW杯出場の道のりは厳しいものと理解していたので、焦りなどはありませんでした。チーム一丸となって一つ一つ乗り越えていけば、必ず目的地にたどり着けると信じていました。

 支えてくれた周囲の人たちには「感謝」のひと言です。特に両親には一番のファンとして応援してもらっています。実家にはプロ入り後に履いたスパイクと同じモデル、色のものが全てきれいに飾ってあるんです。それだけではなくユニホームや写真、キーホルダー、新聞記事まで。でも、「熱狂的か」と言われたらそうでもない。今月の頭に久々に父からLINEがきたと思ったら「このユニホームのこのサイズを何枚送ってくれ」と。きっとミーハーなんですよ(笑い)。父は小学校時代に入っていたクラブでコーチをしていましたが、サッカーについて何かを言ってきたりしません。自分の成長を遠くから見守ってくれているんですかね。

 小学生の頃からとにかくボールに触っていた記憶があります。入っていた鴨居SCの練習だけでなく、放課後には校庭や公園でずっとサッカーをしていました。それこそ暗くなって、ボールが見えなくなるまで。家の中でも廊下で2つ下の弟とボールを蹴っていましたね。サッカーをして、晩ご飯を食べて、またサッカーをする。弟が先に飽きるから、本当はもっとボールを蹴りたいけど渋々帰るんです。でも、どんなに遅くまでサッカーをしていても両親に怒られた記憶はありません。ゲームも好きで、こっちはやりすぎで怒られましたけど(笑い)。

 今まで両親には、自分のやりたいようにやらせてもらいました。寮生活は嫌だったので実家から通える地元の高校を選びました。大学進学の際も自分で選択して、お金はかかるけど何も言われませんでした。お前のやりたいようにやれ、と。たしか高校の卒業アルバムだったかな。「プロになる」と書きましたが、周囲は誰も信じてなかった。家族も本当にプロ入りするなんて思ってなかったんじゃないですかね。自分も小学や中学の頃はそんなことを考えもしませんでした。高校になって“プロ”を頭に描きましたが、W杯や日本代表は夢のまた夢。意識したのは16年に柏に移籍して以降です。

 妻にも「ありがとう」と伝えたいですね(昨年11月23日に自身のSNSで結婚を発表)。栄養面などいろいろ考えて料理してもらっていますし、家のことでストレスはなくなりました。料理は何でもおいしいです。一番好きなのは唐揚げ。よくリクエストしていて、カロリーや脂質などに気を付けて作ってもらっています。話し相手が身近にいるので、メンタル面でも助かっています。

 周りへの感謝を忘れずに試合に臨んではいます。ただ、代表でのプレーは「家族や周囲の人のため」ではない。日の丸を背負っていて、6大会連続でW杯出場してきた先輩や、その礎を築いてきた先人の思いもあります。「日本全体のために」という気持ちで戦っています。日本代表はサッカーをやっている全員が目指している場所だと思いますし、そこで試合に出ている責任は重い。出場しているからには結果を出さなければいけないという覚悟があります。W杯カタール大会は29歳で迎えますし、年齢的にも一番いいチャンス。メンバーに選ばれるように、幼少期から憧れていた舞台で結果を残せるように、突っ走っていきたいです。(日本代表MF)

 《5戦連発逃すも好機演出》大雨の中、金色の稲妻・伊東が何度も相手陣を切り裂いた。「交代せずに起用してくれているのは信頼しているからこそ。そこで走らずサボってはダメ」。5戦連発こそならなかったが、ピッチを疾走して多くのチャンスをつくった。前半31分にクロスから決定機を演出すると、後半42分には右サイドでパスを受けて右足を一閃(いっせん)。29歳で迎える本大会への強い思いと覚悟をピッチで体現した。

 ◇伊東 純也(いとう・じゅんや)1993年(平5)3月9日生まれ、神奈川県横須賀市出身の29歳。逗葉高―神奈川大を経て15年に甲府に入団。16年に柏に完全移籍し、19年2月にベルギー1部ゲンク入り。21年11月23日には自身のSNSで一般女性との結婚を発表した。J1通算131試合23得点。国際Aマッチ通算32試合9得点。1メートル76、68キロ。利き足は右。血液型A。

続きを表示

この記事のフォト

2022年3月25日のニュース