ブラインドサッカー女子日本代表の“メッシ”、菊島宙が見る夢

[ 2020年2月23日 17:45 ]

試合に臨むブラインドサッカー女子日本代表の菊島
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 視覚障がいの選手が対象のブラインドサッカー女子日本代表には、“リオネル・メッシ”がいる。菊島宙(そら、17=埼玉T・Wings)は、世界中から恐れられる存在だ。代表最年少ながら「自分が突出している選手だという自覚はある」と語る。

 ブラインドサッカーは04年アテネ・パラリンピックから正式種目入りした」。40メートル×20メートルのフットサルコートで、アイマスクを着用した4人のプレーヤーと、晴眼(視覚に障がいなし)もしくは弱視のゴールキーパーの計5人でプレーする。5人制サッカーとも呼ばれ、転がすと「シャカシャカ」と音がするボールを使用。ゴールキーパーや相手ゴールの裏に待機するガイド、コーチの指示を頼りに試合を進める。パラリンピックに出場できるのは、現状では男子のみ。にもかかわらず、女子の菊島は世界に名をとどろかせてきた。

 2月22日にさいたま市内で行われたノーマライゼーションカップ決勝では、日本はアルゼンチンを8―0で下し、優勝。全得点を挙げた菊島は、MVPに輝いた。後半6分には、ゆかに頭を強打するハプニングで一時ピッチを離れる場面もあったが、再び戻ってくると怒濤(どとう)の5連続得点。「8点も取れたのはうれしい。でも同じコースを何回も外してしまったから、しっかり入れないといけない」。普段は明るく柔らかい笑みを浮かべるが、エースとしての自覚があるからこそ自分に対する評価は厳しい。

 18年から行われているノーマライゼーションカップは、今年で第3回を迎える。第1回ではダブルハットトリック、19年の第2回ではトリプルハットトリック。圧倒的な得点力を見せつけてきた。女子日本代表の村上重雄監督は菊島に対して「花丸のプレー。世界的に見てもスーパースター」と信頼を置く。敗北を喫したアルゼンチン代表の監督も「別次元の選手。まるでメッシだ」と称賛した。

 記者が初めて菊島のプレーを目の当たりにしたのは、2月8、9日に富士通スタジアム川崎で行われたクラブチーム選手権KPMGカップだった。全国24のクラブチーム日本一を決める大会で、男女混成のチーム編成が認められているが、出場選手のほとんどは男子。その中で菊島は輝いていた。ボールを持てば、華麗なステップとドリブルで相手をかわしシュート。フィジカルの強さを生かし、相手にボールは渡さない。まるで見えているかのような鮮やかなプレーで得点を量産していく姿に、思わず感嘆のため息をもらした。

 先天性黄斑低形成により、生まれつき両目に障がいを持つ。社会人クラブでプレーする父・充さんの影響で、小学2年生からサッカーを始めた。充さんは「僕はずっとDFだったので、攻撃をやらせたかったんです」と振り返り、1番最初に教えた技術はインステップシュート。ボールを蹴ってシュートする感覚の虜(とりこ)になった菊島は、サッカーにのめり込んだ。視力低下に伴い中学1年時にブラインドサッカーに絞って活動。17年に発足した女子日本代表の第1期生として、結果を残してきた。

 そんな菊島が夢見るのは「パラリンピックに出場すること」。20年東京パラリンピックは「自国開催だし、今でも出たいと思っている」と胸の内を語る。「男子は今もパラリンピックに向けて、合宿や練習をしている。自分たちのためにもいい成績を残してほしい」。パラリンピック初出場の男子日本代表に、思いを託した。

 東京の大舞台には出場できないが、国際視覚障がい者スポーツ連盟(IBSA)は2月上旬、今年11月にナイジェリアで第1回の女子W杯を開催することを発表した。17年にオーストラリア遠征をしているが、海外での公式戦出場はまだない。「(W杯)はずっと目指してきたところ。新しい目標ができたし、そこで優勝できるように練習していきたい」。名実ともに世界一の称号を目指し、菊島の戦いは続く。(記者コラム・小田切 葉月)

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