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長谷部&川口 予想以上に機能した2人のキャプテン

[ 2010年7月5日 12:44 ]

W杯全4試合でキャプテンマークを巻いたMF長谷部誠

 W杯南アフリカ大会で決勝トーナメント進出を果たした岡田ジャパン。ゲームキャプテンとしてチームを引っ張ったのは不動のボランチ、長谷部誠(26=ボルフスブルク)だった。これまではGK川口能活(34=磐田)、中沢佑二(32=横浜)らベテランが主将に指名されてきたが、26歳の中堅が世界の大舞台でキャプテンマークを巻くまでには何があったのか――。

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 長谷部がゲームキャプテンに任命されたのは5月30日のイングランド戦直前だった。岡田監督から伝えられた長谷部は驚いて声を失った。起用理由について岡田監督は「中堅どころでチームを引っ張っている。チームメートも信頼している」と話している。ただ中沢と違うタイプの長谷部には別の役割を期待していた。

 長谷部は自分を「いじられキャラ」と言う。浦和社長時代から知る犬飼会長は「おとなしい子」と評す。主将のイメージはない。実際プロでも、高校(藤枝東)でも主将を務めたことはない。そこが狙い目だった。

 2日後、闘莉王から「おまえがキャプテンになったら違うな」と突っ込まれた。ランニングも先頭で走ったが、長谷部は「みんなに言われるから。いじられるので」と苦笑した。リーダーというより“潤滑油”的な存在だった。ベテランと若手の間には距離があったが、ブンデスリーガで優勝を経験しベテランも一目置く実績を持ちながら、若手からもいじられる長谷部がゲームキャプテンになりその距離は縮まった。

 もう1つ期待された役割がある。長谷部は、同じ欧州組の本田と仲が良く普段から連絡をとっていた。本田を中心にすると決めた岡田監督は長谷部を緩衝材に溶け込ませようとした。また中村や楢崎を先発から外すにあたり主将も世代交代すれば「W杯は若手でいくんだ」という意思表示になる。狙いは当たった。

 長谷部がゲームキャプテンをこなす上で大きかったのがチームキャプテン川口の存在だ。川口が動いたのはスイス入り直後の5月27日に開いた選手ミーティングの時。同24日の韓国戦に惨敗しムードは最悪。川口は「みんなで集まらないか」と呼びかけた。15分程度の予定が話し合いは1時間以上になった。批判の応酬だった。攻撃陣が「前で守備しているのに一発で裏を取られる」と言えば「前がもっと追わないと守れない」と守備陣が返す。この場でまとまることはなかったが、本音をぶつけあう関係は築けた。

 川口はそれ以降裏方に徹したが、チームが苦しいときに手を差し伸べる存在として川口は誰からも認められた。その川口の後ろ盾を得て、長谷部は自分なりのキャプテンシーを発揮した。チーム崩壊の危機に追い込まれた中で岡田監督が敷いた二頭体制は予想以上に機能した。(特別取材班)

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2010年7月5日のニュース