G1地区選手権

【徳山G1 中国地区選手権競走】長州VS安芸VS備前 中国NO.1はオレだ

[ 2017年2月8日 05:30 ]

 舞台は4年ぶり開催となる、徳山だ。9〜14日まで「第60回G1中国地区選手権競走」が山口県周南市にある海水場で行われる。地元山口、広島、岡山の3支部のA級50人が“中国チャンプの座を競う。中でも初日から3日連続で長州、安芸、備前の厳選された実力者が12Rに集結するトリプルドリームは注目だ。昨年の宮島大会覇者で現タイトルホルダー谷村一哉(山口=38)は初日の長州ドリーム2枠で登場。G1初優出、初優勝を刻んだ水面からの好発進で、連覇こそ意識はしないが地元SG下関チャレンジC出場への足がかりとする。ただ各支部から乗り込んでくる“刺客”たちも黙っていない。

◎谷村 絶好舞台

 スタートダッシュに成功した地・徳山から、谷村が仕切り直して再出発を切る。「また勝ったらしいよ」とイケイケでボート界の話題をさらったのが16年の始め。1月31日が優勝戦の徳山周年で、選手生活17年9カ月目にして念願のG1初制覇をイン逃げで決めると、その16日後の2月16日、翌節の宮島・中国地区選優勝戦では5コースからの捲り差しで2節連続の“G1ダブル取り”に成功。すでにSG、G1優出は決めていた男は正式に長州の実力者の仲間入りを果たした。

 「昨年は1、2月が良すぎたって感じです。そのあとが、いつも通り。自分の力かな、って思います。エンジンを出し切れなかったし、気持ち良くレースを走れなかった感じで、しんどかった。燃え尽き症候群?そんな感じもあったかも。もともとG1を勝つのが目標だったし達成できましたから」

 快挙達成後も水上を走り続けており、決して燃え尽き症候群ではないだろうが、ポン、ポンと勝ったあとはまさかの停滞ロードとなった。宮島地区選を制したあとから16年12月末の住之江グランプリシリーズまで28節を走ったが、からつ一般戦での1優勝のみ。SG5節、G18節走ったが予選突破したのは、ともに1回のみだった。

 ただ、地元下関一般戦から始まった17年のリズムは上々だ。優出3着とし翌節の鳴門一般戦では優出4着。下関周年では予選敗退となったが、新たな目標を掲げて徳山で再び“景気”をつかみにかかるとみる。

 「連覇ってのはあまり考えていません。急にはリズム、流れは変えられませんから。だから、常に必死。今年の抱負はSGを走ること。下関でチャレンジカップが開催されますから。SG常連の人は毎年“チャレンジカップに乗る”と思っているかもしれないけど、地元で開催される大会。めったにないし1年間のモチベーションになります」

 プロ初出走、初1着は下関だがG1優勝への足がかりを刻んだ地は徳山だ。05年の周年で初優出も6着。悔しさから始まったが11年後に徳山で頂点に立った。

 「徳山の相性はいいし自分の中では好き。同じ地元の下関よりも徳山の方が好きですね。Sする感じや、進入の景色が自分に合ってる感じがあるんです。エンジンは出し切れないことがあるけど、走りやすいのがいいですね」。全国24場で江戸川ボートとともに対岸の大型映像装置がない特殊な条件のもと選手は走るが、開幕前から地の利でのアドバンテージは十分ある。

 トリプルドリームの初日9日12R・長州ドリーム2枠から、谷村はエンジン始動となる。「調整で求めているのはターン出口の力強さ。乗り味が良くて、そこから伸びが付けばいい。それが好みの仕上がりです。そのコメントが出ていれば、エンジンは100点でしょう。徳山はタイム計測が機械式で正確だし、間違いがない。タイムがいいときは感触もいい。そこを見てもらえれば」。地元愛が強く、舟券ファンにも優しい谷村。年末に向け、あとはもう一度、花丸、100点満点の結果を残すだけだ。

◎西島 ベテランの意地

 感謝を胸に走る、広島のベテランには初の中国チャンプの座がかかる。西島義則(55)は、17年の初G1が中国地区選となる。G1優出63回、優勝16回の実績はあるが選手生活37年目で意外にも“中国王者”の経験はない。ただ本人の気持ちは冷静。大けがでの戦線離脱からのA1復帰、SG、G1戦線で走れる喜びを感じつつ、常に水面で期待に応えようとしている。

 「今やん(今村豊)もそうやけど、この年齢でSG、G1で走らせてもらえる、まだまだこうやって若い子たちと一緒に走れる。ありがたいこと。SGに戻って来られたこと。それは、自分を褒めてやりたいなと思うときもありますよね。勝つこともそうだけど、精いっぱい、与えられた場所で走ることを考えてますよ」

 4年ぶりのSGダービー復帰戦となった昨年10月の福岡ピットで、すがすがすがしい表情で感謝、思いを口にした。13年6月27日の常滑グラチャンで頭部を強打し落水。外傷性くも膜下出血で2日間意識不明となり、危篤状態から手術、懸命なリハビリを経て4カ月半後の同年10月の福岡一般戦で復帰。「助けてもらった感謝の気持ちを込めて走れる間は走ろうと決めた」とレース勘が完全には戻らない状態ながら復帰7節後の芦屋一般戦で優勝。SG3連覇を含む7冠の男は16年の尼崎クラシックでSGにも戻った。意地の西島、気合の西島は帰ってきている。

 「お客さんが、見ていて面白いでしょ。応援してくれているお客さんのために、あきらめず走るだけよ」。進入から3周2Mまで、ゾクゾクさせる男は、何枠だろうが進入からインを奪いにかかり、深くなっても強気のスリット。インが取れなくてもスロー域から百戦錬磨の差しハンドルで食らい付き、道中でも執念で着を上げる姿で確実にスタンドを沸かせてくる。

 徳山には昨年9月の一般戦以来の登場で2日目12R安芸ドリームにも名を連ねる。94年には徳山クラウン争奪戦を制しており、23年ぶり、お久しぶりの当地G1制覇もかかる。春から西島が確実にかき回して、面白くしてくるとみている。

◎森定 S力発揮だ

 備前の伏兵が、徳山のコンマ00=“キワ”にこだわり、メークドラマを狙う。森定晃史(岡山=34)は、15年の児島大会以来の地区選参戦。昨年5節走ったG1で手応えをつかんだSを駆使して3度目の優出、G1初Vからの地元SG出場を目標としている。

 「記念レベルでもみんなのSは早いとは思わなかった。自分のSレベルは通用すると思ったし、そこをまだまだ伸ばしたいと思う。また、自分で(タイミングが)早いと思ったら冷静になって自分との駆け引きができるようにもなった」

 近年の成長点に、スタートを挙げる森定。ただ「昨年は優勝5回を目指していたが、夏場はエンジンが全然出せずに苦戦しました。G1でも活躍できなかった」。2優勝はしたが、当然ながら収穫だけでなく、課題も付いてきている。

 「通用しなかった」と反省する理由の一つを、ターンとみている。「もっとスピードを付けたい。ブン回るのではなくて鋭角にして行きたい」。平均Sタイミングはコンマ14と安定し、コース別ではインと4カドで最速の同12と攻め込んでくるタイプなだけに、17年バージョンのターンに磨きがかかれば、徳山での主役奪取の可能性は十分ある。

 17年はS力を武器に、どん欲にも行く。「優勝回数をもっと増やしたい。あと1、2、4コースではけっこう1着が取れているので、外枠からでも1着がとれるようにしたい」と言う。

 対徳山は「あまり良くないです。乗り心地などではなくて、いいエンジンを引けていないのもあると思うんですが」。歯切れこそ悪いが今節優勝の快挙達成となれば、地元児島でのSG初出場となる。「岡山の選手は、皆さん当然、目指していると思います。まずはしっかりスーパーエンジンを引きたいですね」。岡山の実力派たちがFで地元SG出場権を失っているだけに、ボート王国・岡山から森定のようなニューヒーローが誕生してもおかしくはない。節序盤のスタートダッシュに期待している。

◎海野 豪快ターン

 重量級ボディーから繰り出すキレのある豪快ターンで狙うは“徳山経由SG行き”だ。地元山口支部の海野康志郎(29)は、初出走、初1着を刻んだ地でSGデビューを目標に掲げた。

 「昨年は比較的、好調だったと思います。いいエンジンを引けば、しっかり機力を引き出せていた。クラシックもダービーもあと一歩で届かなかったので、今年こそはSGの舞台に立てるように頑張りたい」。

 昨年は4優勝でそのうちの1回が徳山での初優勝。「徳山でようやく優勝できたけどその時はエンジンが良くて最後までノーハンマーでした」と言う。良機ゲットという“天運”も味方にしたいところだがもう一つテーマが海野にはある。

 「あとは体重ですね。どうやっても51キロにはならないので少なくとも勝負になる56キロ前後にしたい。もう少しレースでの思い切りというか、イメージするところのギャップを埋める必要もある」。重量級と自認し、課題を口にするが、むしろ56キロならOKサインだ。今節でG1初優出、初優勝を決めれば3月の児島クラシック出場権が得られる。海野が主演のSG初出走への“快進撃ドラマ”は徳山から始まるかもしれない。

◎麻生 好相性の地

 安芸の伏兵が“大好物水面”で好結果にこだわる。麻生慎介(広島=31)は、通算優勝12回のうち3回を徳山でゲット。直近優勝も16年10月の当地一般戦だ。

 「水面は大好きです。初優勝は宮島だけど優勝回数が一番多いのが徳山ですから。前回の優勝はいいエンジンを引けたのが要因として大きいけど自分の中では、全国でも一番って思えるほど走りやすい印象があります。いいエンジンを手にできれば、しっかり仕上がるイメージはあります」。

 徳山ステージに絶対の自信をみなぎらせるだけでなく、10年の下関大会から今節で7回目の参戦となる中国地区選のイメージもいい。「地区選は(一緒に)走り慣れた選手ばかりなので、走りやすいのはあります。走り方や癖も分かる選手が多いですから」という。

 SGデビューはまだないが、G1では12年の地元宮島周年での優出歴(5着)はある。「G1で優出したのも、ずいぶん前ですからね。とにかく今年は記念で結果を出したいです」。そうそうたるSG覇者がそろっており、扱いはまだまだ若手、急浮上キャラとはなるが好相性の地で好エンジンと巡り合えば、G1初優勝への“下克上劇場”で麻生が沸かせてくれそうだ。

【徳山の水面】

◎スタートが鬼門

 徳山プールの特徴は地元の選手もスタートに苦戦している難しい水面。ホームに向かって大半は追い風となりインが幅を利かせる。しかし大会の2月は一変して北風が吹きカマシ勢の出番も十分可能となる。

 さらに大会期間中は大潮とも重なり干満差は午前中は3メートルを超え選手を悩ませるプールと言える。イン有利とは言え、冬場特有の北風と潮位にもちろんスタート力も試されることになりそうだ。

続きを表示

バックナンバー

もっと見る