G1地区選手権

【大村G1九州地区選手権】注目株・榎幸司 地元でG1制覇だ

[ 2016年2月8日 05:30 ]

地元でのG1制覇を狙う榎幸司
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 ボートレース大村の「第62回G1九州地区選手権」があす9日、九州を代表する52戦士によって激戦の幕を開ける。初日メーンの12Rドリーム戦は深川真二、瓜生正義、赤坂俊輔、岡崎恭裕、篠崎元志、仁志の6人で争われる。枠番は前日に決定。今回は瓜生VS篠崎元の様相を呈している。連覇に挑戦は川上剛。昨年ブレークしたのは池永太。シリーズ通して沸かせるのは女子5人の存在だ。迎え撃つ地元勢は総勢10人。その中でも今、一番エンジンを出すのが榎幸司だ。今回はその榎に一肌脱いでもらおう。

 ~評価は伏兵扱いでも燃える「大村完全V男」~
 早々と大村を制した者は、今年の「九州」を制する。とも言われそうな「ボート発祥の地決戦」の開幕を前にアドバンテージ抜群な漢字一文字の男が長崎支部にいる。榎だ。1月5日に最終日を迎えた正月の新春特選レースで3コースから捲り差して優勝。単純に見れば16年の1V目と思うだろうが、九州の頂点を決める大会の舞台となる大村プールで誰よりも先に勝っているというのが肝だ。長崎支部からは10人が参戦するが「大村」に限って言えば直近のリズム、勢い最上位は榎。さらに自身初めての地元開催での九州地区選となれば当然、燃えるし我々も騒がずにはいられない。

 「他場では走ったことはありましたけど、実は初めて走る地元地区選なんですよ。大村開催のときは、いつも違う場所を走っていた印象です。そりゃあ、気合は自然と入りますよね。地元っていうところで有利に運べることはあると思います。16年の出だしは良かったですから、この調子で行きたいですね」と笑顔だが、語気には力がこもる。

 実は「16年大村初V男」だけではない。15年6月のタイトル戦で9連勝Vをやってのけた「大村完全V男」でもある。「あのときは正直(他艇の)引き波を2つしか越えてないんですよ。常に前にいました。伸び、出足ともに良くて伸びていました。エンジンにも恵まれていましたね」。選手としての素性は、スリット果敢な長崎のS野郎。そこに好素性機という相棒が加わるだけで大村では、まさにノンストップ船。誰も手をつけられなくなるのだ。

 大村では「かなり走らせてもらったし、育ててもらった」との思いも強い。02年の5月一般戦でデビューも3着1回であとは5、6着に終わった。そこから5年半後の07年9月のタイトル戦では、追加参戦すると1走目の転覆から、その後一気のオール2連対でプロ初Vを飾った。「長崎には親せきもいますから」と笑うが、いつもピン(1着)ラッシュをする気満々で、スリット戦から目立ってくる。昨年だけで7走し3優出1優勝。大村は「走り慣れている」どころではない。いつも以上に目の色が、ガラリと変わってくる。

 16年一発目のG1戦、からつ周年では惜しくも予選敗退。ここまでG1を114走したが優出はない。さらに08年若松大会で九州地区選デビューも予選敗退。09年芦屋、13年若松、15年からつと準優進出はいずれもお預けとなっている。ただ、地元では勝手が違ってくるはずだ。「地区選で(成績は)良くないけど地元ってことでコンスタントに着をまとめて予選は突破したいですよね」と、まずは地区選で初の予選突破を最低ノルマに掲げる。有利に運べる大村では「強欲」さはいつも以上にアップ傾向。乗れている榎ならば初優出初優勝も可能とみている。

 同じ90期には同県同期のやまとチャンプ、G1からつ地区選覇者の赤坂俊輔やSG、G1覇者の石野貴之、吉田拡郎と、若手から中堅クラスへ移行中のキレキレの「アラサー」がそろう。同期の石野同様に実は榎も「2世選手」。登録番号2227の父・榎精(つとむ)さんの影響もあって、ボート界に乗り込んでいる。大村巧者ぶりを発揮すれば、一気の仲間入り。このチャンスを生かさない手はない。

 エンジン情報も調整も、すでに頭には入っている。「正月開催で引いた65号機、完全優勝したときの70号機、あとは27号機を引きたいんですよね。あと最近、56号機の勢いは落ちてきてると聞いてます」。当然、今年も瓜生正義、篠崎ブラザーズに深川真二、地元の赤坂、石橋道友と男女のSG常連も勢ぞろいする。大会前の評価はまだまだ伏兵扱いとなるのは十分、承知している。ただ水陸ともに知り尽くす今の榎には下馬評をあっさりと覆す勢い、気概があると思っている。得意水面は「大村」。さらにはレーサーとしての目標には、こう記している。「地元の記念を勝ちたい」。

 ◆高田明 魅せる「快速じゃぱねっと」
 ~「ジャパネット―」社長と同姓同名 高レベルの九州で「真っ向勝負!!」~
 「がばい軍団」からの刺客は、長崎県人にとっては見覚えのある、親近感がわく漢字3文字かもしれない。高田明。佐賀県唐津市出身で佐賀支部の若手だが、長崎県平戸市出身の実業家で佐世保市に本社のある「ジャパネットたかた」の代表取締役社長、高田明氏(67)と同姓同名だ。水上のレーサーは「たかだ」で陸上の社長は「たかた」。読み方こそ違うが漢字はまったく一緒。本人も「雑誌などで『快速じゃぱねっと』とか言われてます。印象的な名前なので、もっと覚えてもらえるように頑張りたい」と初めての九州地区選参戦を前に、聞き慣れたおなじみの甲高い長崎弁風ではなく、聞きやすいスピードでの唐津弁で意気込む。

 今期、デビュー11期目で初のA1級に昇格。以前、B1級だったときの12年のG1からつ周年で5日目から追加参戦し、初戦で4コースから捲り差してA1級を倒し3連単11万舟券を提供する衝撃を残したことはあったが、107期唯一のA1級としてG1の正規あっせんが入るまでに成長。すでに19走を消化し、1月のからつ周年では5日目にイン逃げでG1初勝利も上げた。そして迎える16年G1・2戦目。「九州はレベルが高い。真っ向勝負を挑んで、何かをつかんで帰りたいですね」と、より一層のレベルアップを狙う。

 師匠は今大会不在の佐賀のエース峰竜太。「師匠と同じところで食らい付いていないといけない」と己を大舞台で試す構えで、実際に成長も感じ取っている。「テクニックは変わってないが、メンタルは強くなったと思う。レース前に『大丈夫かな~』と思うことがなくなり、どんと構えられている。いい意味で緊張しなくなった」という。

 高田には選手としての強みもある。1メートル72の長身だが47キロ。師匠ばりのスレンダー体形は減量を苦にしないという。「体重が変わらないので苦労しません。その節の体調で48~50キロに合わせます」。ストレスフリーでレースに集中できる。

 通販番組の顔だった「ジャパネット」の高田社長はテレビから姿を消すことを表明したが「快足じゃぱねっと」の水上での名調子は、大村で見られる。長崎で生き生きすると見ている。

 ◆小野勇作 怖いぞ癒し系スナイパー
 ~昨秋「Fを切らない男」で注目 験担ぎ“トイレ掃除”でツキ呼ぶ~
 「徹底して切らない男」として話題となった小野勇作は、大村巧者の1人。唐津市出身、からつデビューの「がばい軍団」だが大村でプロ初優出、初優勝を決めており、直近の優勝が15年5月の大村タイトル戦。加えて地区選には10年12月の大村大会以来の参戦となった。物腰の柔らかい佐賀の癒やし系スナイパーの急浮上には警戒が必要となる。

 「大村はデビューしてから、何かとよく走ってましたね。からつと一緒くらい走ってましたよ。いい成績も出ていたかもしれませんね。前回大村で優勝してから、冬場にポンポンと優出できた。何かあるんですかね」と笑う。G1優出は1回あるが、それが10年2月の地元からつでの地区選。「地区選は5年くらい走ってないけど、最近はG1を連続で走ったりして自信になってます。A1級もキープもできたし、何より、昨年から、まずまずいいエンジンを引き続けられているんですよね」という。

 実際に、前々節の芦屋G3戦ではレース足強力な31号機を引いて優出、前節のG1からつ周年では伸び抜群なエース15号機をゲットしている。理由は、家で続けている験担ぎにあった。

 「トイレの神様」を味方に付けるという。「水回りは大事っていうじゃないですか。だからトイレをこすってるんです。家族での掃除係は、僕の仕事にさせてもらってます。そこから抽選運が良くなった。もう、ゲンですよ。ゲン」とにやりと笑う。自宅のパワースポット清掃で大村でもツキが巡ってくるか気になる。

 小野のデビュー時を知る選手は「0台S連発する若手が出てきた」と騒いだというが、今はS勘的確なオールラウンダーだ。昨年秋にはスタート無事故3000走で表彰され「Fを切らない勇作」として注目された。「もう3100走は行ったかな。先輩に『攻めて行け』と言われたこともありましたが、安全に冷静に勝つことが大事ですから」と意識している。普段は脱力感満点に映るがスリットでの集中力は、職人芸だ。

 「エンジンなりにしか走れない選手なので、うまく対応できるようにしたい。でも大村、好きなんで」。小野なら、Fも切らないし期待も裏切らないだろう。

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