G1地区選手権

【三国G1 第60回近畿地区選手権】V候補筆頭 地元の雄・今垣

[ 2017年2月9日 05:30 ]

今垣光太郎
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 立春を迎えたとはいえ、北陸の冬本番はいま。日本海の荒波に雪景色…。やけに演歌がよく似合う。「嗚呼…しみるね…」。そして、福井県にあるボートレース三国では、極寒の影響で回転がバリバリのハイになってパワー対決が期待される近畿王決定戦が4年ぶりに開幕。「G1第60回近畿地区選手権」があす10日から15日までの6日間で開催される。今回の特集では活躍が期待される近畿地区のスーパースター・レーサーをピックアップ。どこかで聞いたことのあるような演歌の名曲!?に乗せて紹介する。題して“演歌の舟道”。栄えあるVに向けて、ハリキって、どうぞ!!

 三国の春―

 あのふるさとへ勝って帰ろかな…とばかりに、北陸の虎が目覚めた。長年、福井・三国軍団のトップを走り続ける今垣光太郎が昨年末の住之江グランプリシリーズで10年からつチャレンジカップ以来、6年ぶりとなるSGタイトル奪取に成功。本紙評論家・中道善博氏の持つSG通算8Vを抜く、いわゆる“レジェンド超え”の9Vとした。

 「もうひとつ上にはい上がれるかどうか。中道さんの8冠を超えられるかが自分のカベでした。これで、これからは力まずに走れると思います」

 自身の中では、すごく意義のあるSG9回目の優勝だったという。さらなる高みにステージアップして、モットーの平常心により磨きがかかったということだ。

 「ペラをもうちょっと勉強して、節間の初日や2日目に仕上げられるようにしていきたい」

 調整面での課題も忘れなかったが、その住之江グランプリシリーズでは優勝戦直前にはバッチリと合わせていた。じっくりと正解を導いただけに方向性は間違っていないはずだ。

 「自分も50歳手前なのでだいぶ衰えてきましたね。老眼鏡をかけるようになったのはショックでしたね(笑い)」 

 体力的な老け込みは仕方のないことだが、気力の面ではまだまだ衰えるところはない。今回のSG優勝の美酒はやめられんとばかりに改めてうま味を味わった。がぜんヤル気は出まくる。

 地元・三国では正月戦で優出して、ファンの前ではSGV報告のがい旋は果たしている。今度はG1戦できっちりと人気に応えたいところ。

 「地区選では変なレースをしないように、リラックスして臨みたい」

 もちろんV候補筆頭。地元の雄として全国屈指の実力者が集う近畿地区の精鋭たちを迎え撃つ。15年3月の周年記念以来の地元G1優勝で「光チャン」が賞金獲得レース名乗りを上げるか。10年の中島孝平に続く悲願のグランプリ優勝を決めてまた三国に最高の春を届けたい。

◎萩原 鋭発からの一気攻め

ハギ燦燦―

 福井で攻めハダといえば速攻派の萩原秀人だ。鋭発から一気に攻める。その持ち前の走りで待望のG1ウイナーにさんさんと輝いたのが昨年12月の福岡周年記念。3コースからコンマ07トップスタートを放ち、捲っていった篠崎元志の背後をズブリと勢いよく差した。

 「ここ何年かは記念戦で優勝できるなんて考えたこともなかったです」

 目の前の1戦に集中するスタイルを貫く萩原らしいコメント。それもこれも自己分析ができているからにほかならない。

 「自分は気負うとダメなんですよ。前回、三国で開催された近畿地区選手権では地元で気合が入り過ぎてフライングしましたからね」

 4年前の当競走での事故をきっかけに、どんなレースでも、いつも通りを心がける。あれからFはゼロ。いかに成長しているかが分かるエピソードだ。勢いそのままに当地正月戦でもVとアドバンテージは十分。気負わず1戦集中で今度は地元G1で、さんさんと輝いてみせる。

◎石野 “原点の地”から大暴れ

 地元レーサー以上に準地元の三国で顔になるのが石野貴之。やはり15年7月に当地で久しぶりに開催されたSG戦・オーシャンカップでの圧倒的な強さで優勝したのが印象的。当時のエース33号機のパワーをいかんなく発揮して節間7勝3着1回という素晴らしい成績でのV。あの勝利をきっかけとして“石野全盛期”を呼び込むことになったといってもいい。いわば三国は石野の原点なのだ。

 昨年は3月の戸田周年記念優勝戦で痛恨のF。ペナルティーによるG1戦線欠場を余儀なくされて念願のグランプリ出場に暗雲が垂れ込めたが、なんのどっこい。G1がダメなら、SGでなんとかすればいいといわんばかりに、7月の鳴門オーシャンカップで優勝。一昨年の三国SGで優勝した時をほうふつとさせるハイパワーぶりを発揮してのV劇だった。

 それだけでは終わらない。8月の桐生メモリアルでは菊地孝平との艇史に残る激闘劇で惜しくも準Vとしたが、確実に賞金加増。極めつきは大一番直前の11月大村チャレンジカップでも優勝を決めて年間でSGタイトルを二つもゲットして余裕の賞金ランク1位でのグランプリ出場を決めたのである。

 最終決戦・グランプリでもファイナルに進出。惜しくも準Vとなって黄金ヘルメットは瓜生正義の手に渡ることになったが、強い石野を前面に押し出した。窮地に追い込まれながらも、持ち前の底力でトップ戦線で大活躍した16年だったが、その契機となったのも三国の地なのかもしれない。

 それは昨年7月の5日間シリーズで開催された三国一般戦。節間7勝、2着1回、4着1回という圧倒的な内容で危なげなく優勝した。おそらくSG優勝を決めた思い出の舞台から大きな勢いをもらったのだろう。その直後の鳴門SGオーシャンカップでの大活躍については前述したとおり、説明するまでもない。これも何かの縁だと言い切っても大げさなことではないか。

 三国よ今年もありがとう―。

 年の瀬に今年を振り返ってみれば、やはり三国での活躍が後々に効いてきたということになっているかもしれない…。

◎松井 年男が真の王者証明!

 王者の名前で出ています―。

 今年ものっけから松井繁が、泰然自若とオレが”王者”と言わんばかりに存在感を見せつける。1月に地元住之江で開催されたバトルトーナメントで貫禄の優勝劇を披露したのだ。

 余裕たっぷりの走りに加えて、グランプリで苦手としていた抽選運も何のその。白玉を2回も引き当てて、そのチャンスをしっかりとモノにした。

 「今年は“年男”なんで、もう1回、がんばってみたいと思います」

 JRAでは武豊騎手が京都金杯で、いきなり31年連続重賞勝利記録を達成すれば、蛯名正義騎手もAJC杯で26年連続重賞勝利記録をマークしている。両者とも年男なのだ。特有の強運ぶりを発揮していることは、紛れもない事実。

 年男・松井にも見えざるパワーが作用するかのよう。実力は言うに及ばず。それに大きなツキが伴えば、まさに鬼に金棒状態。三国G1でも結果を出して年末の大一番への足ががりとしていく。すべては改めて艇界の”真の王者”であることを世に知らしめるために。

◎魚谷 ターン力武器に前へ前へ

そこで、神戸―

 大阪支部とともに最多の16人の参戦となった兵庫支部。まさに多士済々の近畿地区きっての実力者ぞろいだ。それを反映してか、北陸の地・三国で活躍する傾向にある“巧者”がズラリ。とりわけ当競走前年度覇者(舞台は尼崎)の吉川元浩は05年MB大賞を皮切りに08年周年記念、09年近畿地区選手権と三国でのG1タイトルを総ナメにする猛者ぶり。だが、今回は昨年10月びわこ周年記念優勝戦でのFペナルティーにより、その姿はない。

 ディフェンディングチャンプがいないのは残念ながら、兵庫のツートップのもう1人、魚谷智之がスタンバイ。昨年はSG戦線で優出してグランプリにも出場し、強い魚ちゃんが帰ってきた。三国では06年周年記念のタイトルもゲットして、15年周年記念では優出(5着)と、当地ビッグ戦で欠かせない存在。今回もピチピチと跳びはねるようなイキのいいターン力を武器に前へ前へと押し進める。

 G1ウイナーのキャリアある金子龍介、山本隆幸、吉田俊彦も当地は地元・尼崎センプルばりの相性の良さを見せる。なんといっても金子は昨年9月の当地前回戦・G3特別タイトル戦で安定感抜群の王道Vが記憶に新しい。しかも2節連続優出中と光る。ここぞの速攻力もあるだけに、真冬の北陸で大暴れの予感も…。山本は当地に1月に来たばかりとアドバンテージは相当か。しかも、近5節で4優出と常に優勝争いに加わっている。吉田は当地優勝歴もあり目下、2節連続優出中。今回は初日ドリーム戦6号艇にも選ばれて、点増し効果もありそうだ。

 層の厚い兵庫・尼崎センプル軍団。まだまだ三国巧者はいる。昨年10月の福岡ダービーでSG初優出を決めた芝田だ。45歳ながら、ますます勢いは盛んになる。当地でのV歴があるのはいうまでもない。加えてただいま2節連続優出中ときた。

 フレッシュなところで三国がうまいのは高野哲史。山本とともに1月戦に来たばかり。5節連続となる当地での優出は逃したが、しっかりと予選突破を決めた。今年はワンランク上のG1戦線での活躍をするためにも、得意の三国で腕試しといきたい。

 兵庫県の県庁所在地は神戸。神戸に少なからず縁のある三国との相性のいい魚谷、金子、山本、吉田、芝田、高野ら“クールな6人”が寒風吹きすさぶ北陸でVハーモニーを奏でるか。これでもかとばかりに念を押しておこう。今回、優勝するのなら三国巧者の多い「そこで、神戸」からだ。

◎守田 頂上決戦まで魅せる

 獲れる、獲れると言われ続けて21年。天才レーサー・守田俊介がようやく、15年の浜名湖ダービーで悲願のSG制覇を成し遂げた。しかも、その賞金の全額にあたる3500万円を東日本大震災の被災地へ寄付。陸の上でも常人にはマネのできない優しい天才ぶりを発揮する。

 そんな男がSG戦線で活躍しないとなれば寂しいものだ。昨年はチャレンジCにも出場できず、2年連続でのグランプリ出場はかなわなかった。だが、決して守田自信はスランプだとは思っていない。

 「いい時もあるし、悪い時もあります。決して不調だとは思っていないし、いいエンジンが引けた時にはしっかりと稼いでいけばいい。明日には明日の風が吹く、という感じでやっていけばいいでしょう」

 さすがは、天才鬼才。達観している。じっと、チャンスの時をうかがっていたのだ。一言一言のコメントに味があって、いろいろとホットな話題を提供してくれるだけにファンをはじめ、報道陣の中でさえ、特に昨年末に物足りなさを感じていた者がいたに違いない。だからこそ今年は年末の頂上決戦まで魅せ続けてほしいのだ。

 「年末が近づいてきた時にグランプリに乗れるか乗れないかというような勝負ができる状況にはしたいですね。そのためにも、SGで活躍しないといけないし、G1でも確実に賞金を上積みができるかでしょう」

 本人も大一番のことは意識する。そういう意味でも、今年初のG1戦である思い出の地・浜名湖周年記念に、今回の三国近畿地区選手権がポイントになってくるだろう。特に、地区選手権で優勝すれば直近のSGである3月児島で開催されるボートレースクラシックへの最後のキップを手に入れることができる。SG戦線の舞台へ戻ることこそが頂上への早道であることは言うまでもない。

 俺ら児島さ行ぐだ― “雪國”三国でV祝杯の“酒よ”で景気づけ。今年初のSG決戦の地・岡山の児島へ、いざ向かわん。

◎吉川 兄貴の分も!弟・喜継が飛躍期す

兄弟舟―

 昨年は篠崎元志と仁志によるグランプリ史上初の兄弟レーサー対決が話題となった。いまや艇界には親子、兄弟、姉妹レーサーと多くはなってきたが、かつては身内が選手同士というのは希少な存在。その走りとなったのが滋賀の昭男、喜継の“吉川ブラザーズ”だ。

 今回、兄貴の昭男はA2降級のために参戦はならなかった。滋賀支部の頼りになるリーダーマンの不在は寂しい限りだがその分、今年の飛躍を期す弟・喜継が頑張ってみせるはず。

 今年は早くも1月の戸田周年記念でG1開幕戦を迎えた。その記念戦線突入への足がかりとしたのは、前期勝率が7・01とデビュー以来、初となる7点オーバーが効いているに他ならない。地力は着実に上がる。今年はG1タイトル奪取へ本格始動とばかりに、極寒の三国の地で「オレと兄貴のよ〜熱き走りだよ」と兄貴譲りの激闘でチャレンジだ。

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