G1地区選手権

【G1中国地区選】中国No.1は譲らない!

[ 2014年2月10日 05:30 ]

強い気持ちで難病に打ち勝った大賀広幸
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 ボートレース下関「G1第57回中国地区選手権競走」は11日に開幕、16日に中国地区No.1を決定する。3月に尼崎で行われる「第49回ボートレースクラシック(総理杯)」の出場権をかけての熱い戦いとなる。“三国一”の座は誰か。山口、岡山、広島の3県から総勢50人が覇を争う。昨年の徳山では今村豊、白井英治、寺田祥の地元3人が優勝戦に名を連ねたが優勝したのは平尾崇典だった。地元勢は借りを返す意気込みで挑む。病気療養を経て復活した大賀広幸は10年9月浜名湖周年以来となるG1出場に胸を高まらせている。

 2度目の初陣だった。12年の炎熱、下関8月1日。大賀広幸は10年の浜名湖以来、ピットに姿を現すこととなった。その年9月の浜名湖周年。大賀は(1)(1)(1)(3)(2)(1)(1)と破竹の勢いを見せた。優勝戦では6着と大敗を喫し、それ以降は出走表から大賀の名は姿を消した。「その時あたりから腰に違和感を感じていたんです」周年を終えて病院に駆け込んだ。「ショックでした。美空ひばりさんと同じ病名(大腿骨頭壊死症)と聞いて…。もう走れなくなるかと覚悟もした」痛い胸の内を披露した。2カ月の入院。それからはリハビリにも励んだ。「引退も考えたが走りたいと思う気持ちはどうしようもない」強い気持ちが難病にも打ち勝つ姿勢を支えた。

 「緊張しました。デビュー戦でもこんなに固くなることはなかったのに」。雌伏1年10カ月、復帰した12年の再デビューでの戦いを終えた大賀は肩で息をついた。そして復帰2戦で長らく味わっていなかった1着ゴール。終わって見ればシリーズ3勝の成績は再起に自信を与えることとなる。

 走りたくて、勝ちたくて…。その思いが勇み足となって復帰後にはF2。しかし12年の1月にはその足カセを吹っ飛ばす勢いを見せて下関で優勝戦に進出。インからコンマ12のSを決めての優勝は圧巻だった。91期生に松下一也がいる。09年にはびわこの新鋭王座を制した期待の選手だ。彼も大賀と同じ病気で約1年半のブランクを味わった。「大賀さんに励まされて復帰する力も与えられました」と大賀に感謝の念を忘れない。今年1月からはA1へと昇格し浜名湖周年以来、約3年5カ月ぶりにG1の舞台を踏むこととなる。「あまり息込んでもね…。でも走れる限りは目一杯頑張りますよ」と全力投球を誓う。そして最後に熱い思いをこう付け加える。「ボートはハートなんですよ」涼しい顔をして…。

◇【下関】寺田、紅き旋風を巻き起こす

 今回の中国地区選手権競走には女子選手4人が出場する。寺田千恵、海野ゆかり、田口節子、守屋美穂だ。寺田は01年のからつグランドチャンピオンで女子として初めてSG優出を果たした。結果は5着に終わったものの準優の1号艇を獲得し女子選手として新たな風を呼び込んだ。07年の徳山に10年の下関で女子王座決定戦も制している。

 海野は04年の多摩川女子王座で優勝している。インが利かなかったそのシリーズ。優勝戦ではそれを逆手にとって逃げを決めた。コース不問で強みを発揮するのがこの海野だ。昨年の賞金女王決定戦ではイン平山智加の後じんを浴びたとはいえ優勝戦で2着の成績を残している。前回の下関でも寺田千恵を破っての優勝と水面相性もいい。備え付けペラ制度になってから勢いを増している。

 田口は01年の三国に02年の多摩川で女子王座を連覇した。男子顔負けのスピードで魅了する。コーナーのテクニックも抜群だ。守屋は岡山の新興勢力。昨年に大ブレーク。年末の芦屋賞金女王に出場しファイナルの舞台を踏んでいる。強豪女子4人が紅き旋風を巻き起こす。

◇【山口】覇権は他県に渡さない

 中国地区選手権は下関、児島、宮島、徳山の4場で持ち回りの開催となる。下関での開催は4年に1度の割合。53回以来となる。その時の優勝者は前本泰和。そして前々回にさかのぼれば49回で優勝者は川崎智幸。地元下関開催の優勝選手となれば45回の今村豊と言うことになる。その今村は昨年、足並みが乱れた。不調と言うわけではない。8月に徳山でF。続く丸亀のMB記念で2本目のF。悪夢の夏となってしまったのだ。平和島の総理杯では3日目に負傷し帰郷となった。年が変わってツキも変わる。地元の雄として、覇権は他の県に渡したくはない。

 白井英治、寺田祥、谷村一哉が続く。白井は下関の正月レースでV。低勝率のモーターを手にしながらさすがに貫禄を見せつけた。地区選は51回の宮島で優勝を飾っている。寺田は48回徳山での優勝選手。今期は事故点を抱えているもののSで決着をつけるタイプではない。ご当地で気合倍増は谷村。いつものいい走りが期待できそうだ。徳山の正月レースでは節間10勝を挙げて白井と同様にいい滑り出しを見せている。02年の下関地区選がG1デビュー。今度はG1初Vの大魚を釣り上げるかも知れない。

◇【広島】山口“剛”快まくり差し決める

 サンフレッチェ。戦国武将・毛利元就が説いた「三本の矢」を意味する。安芸のサンフレッチェは山口剛、市川哲也、前本泰和の3人だ。山口は昨年のびわこ周年で捲り差しを決めてG1で4回目の優勝を飾った。10年の平和島総理杯では6回目のSG優出で念願のSGVを果たしている。名前の如く“剛”のレースが身上だ。52回の徳山での地区選も制している。

 中国地区選と言えばまず市川の名を挙げないわけにはいくまい。44回の徳山で優勝。そして46回の児島に47回の宮島を連覇し地区選V3の実績を残している。前回の下関は昨年の11月一般戦。凡機を手にしながらの優勝は貫禄だった。

 近況の好調度なら前本がリードする。昨年の11月、宮島の周年記念を制した前本。勢いに乗って臨んだ住之江の賞金王シリーズでは初のSG優勝を手に入れている。53回の中国地区選は下関で行われたがインから優勝を飾っている。今の勢いを堅持すれば優勝まで手が届きそうだ。

 昨年はV7と突っ走った山下和彦。前回下関のオール女子戦で優勝したのが海野ゆかり。昨年末の賞金女王では優勝戦で2着。男子相手でも力負けはない。

◇【岡山】実績十分、平尾連覇へ燃える

 徳山で行われた56回の中国地区選手権の覇者は平尾崇典だ。ディフェンディングチャンピオンと言うことになる。この平尾は一昨年の児島で開催したチャレンジカップでSG初Vも果たし、その年には賞金ランクを第8位にまで押し上げて賞金王決定戦に出場した。地区選においても56回のVの他に45回と49回の下関で準Vが2回と実績十分だ。55回の宮島では川崎智幸が優勝とここ2大会は岡山勢が優勝を飾っている。

 その川崎は49回の下関地区選で優勝。44回の徳山に45回の下関ではともに優出3着。地区選に下関水面とともに相性良しだ。注目したいのは山口達也。昨年の平和島全日本選手権ではシリーズ3連勝もあって初のSG優出を果たした。今シリーズは昨年に結婚した同県の後輩でもある守屋美穂と夫婦で出場となる。夫婦対決が見られるかも知れない。

 一昨年徳山で開催された新鋭王座を制した茅原悠紀や当地周年記念Vもある柏野幸二が近況好リズム。S力ある吉田拡郎にそろそろG1優勝の予感が漂う。女子は寺田千恵に田口節子、守屋美穂が出場する。寺田は10年に当地での女子王座決定戦を制している。相性もいい。田口も女子指折りのテクニックを持つ。

◇下関モーターとペラ

 下関は今節の中国地区選手権から新モーターの使用となる。ヤマト321型(減音型)は従来通りだ。直線150メートルの航走タイムを計測し検定をパスしたモーターがレースで使われる。検定時の乗艇者は体重60キロ以下の地元選手。プロペラはレース場備え付けのモノによる。検定タイムの善しあしで一概にモーターの性能を判断するのは早計だが前回の使用モーターを振り返ってみたい。

 航走時計が一番だったモーター(6秒68)はおろし立てにいきなりパワーを発揮して井上大輔が優勝を飾っている。2連対率は40%台を残して“卒業”した数機のモーターも最後まで優等生を務めた。前回も新モーターと更新したのは今回と時季を同じくして2月。温水パイプの付いた時の状態だ。この方程式が当てはまるかも知れない。検定タイムは一考の余地ありだ。場内で配布されている出走表にもこのタイムは記載されているので参考にしたい。

 時計は右回り。ボートレースのプロペラは逆に左回りだ。以前はナカシマにヤマトの2種類があり選手の好みによって選択が可能だったが、平成25年11月1日以降の開催を初日とするレース場からヤマト製1枚を使用することとなった。もちろんレース事故などにより破損が生じた場合には新たなペラが手渡される。今節はモーターと同時に新ペラでの戦いとなる。一度使ったペラは前使用者のクセが付いているが一からのスタートとなるわけで、ペラ巧者の多い記念選手はペラ戦争とも言える。海水、淡水で水の硬さの違いもある。走り慣れた地元選手にとってはいくぶんのアドバンテージもある。下関が新ペラ制度になってからの最速タイムは1分44秒8をマークした毒島誠だ。なお、モーターと同様にボート(ヤマト730型)も新しくなる。

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