玉川祐子師匠101歳 いまだ衰えぬ熱量

[ 2023年10月5日 13:42 ]

公演後は木戸口で観客を見送った玉川祐子師匠。ファンと記念撮影も。左は玉川太福
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 【笠原然朗の舌先三寸】東京・浅草の木馬亭で浪曲公演をみた。毎月1~7日は同所で「定席」として浪曲に触れることができる。途中に講談を挟んで7人の浪曲師が出演する。

 10月3日は「企画公演」の日で、「玉川祐子師匠101歳おめでとう会!!」だった。

 先日、放送された日本テレビ「笑点」に祐子師匠は玉川太福と一緒に出演。同番組への出演は今年に入って2回目ということで、100歳を超えてブレークの予感も。

 浪曲は、“歌と語り”を担当する浪曲師と、伴奏の三味線を弾く曲師との2人で作り出す芸。祐子師匠はこの日、曲師として2回、舞台に上がった。

 通常、曲師は黒子的な存在で、客席との間に立てられたついたてに隠れて演奏する。ところが祐子師匠は特別。「いつまでもお元気な姿を皆さんに見ていただきたい」と木馬亭スタッフや共演者らのはからいでついたてはなし。なので浪曲師との丁々発止の掛け合いを見ることができる。

 祐子師匠の出演の1席目は港家小そめの「四千両白浪草紙」。小そめは名古屋を中心に活動し、のちに東京進出を果たした“芸豪”港家小柳さんに入門。彼女の相三味線を務めていたのが祐子師匠で、小柳さんが亡くなってからは小そめを弟子として引き取った。そのあたりの経緯は映画「絶唱浪曲ストーリー」(監督・川上アチカ)で描かれている。現在も全国どこかの映画館で上映しているので興味のある方は見ていただきたい。私もこの映画で浪曲の魅力を知り、木馬亭通いを始めた。

 にこにこと笑っているときは可愛いおばあちゃんの祐子師匠も、三味線のバチを握り、弟子である小そめと掛け合いを演じるときは眼光鋭く、「はぁー」というかけ声に力がこもる。101歳、いまだ衰えぬ熱量で小そめを支える。

 小そめは、かいがいしく祐子師匠の身の回りの世話などもしているそうだ。師匠と弟子は持ちつ持たれつ。愛と情でお互い支え合い、支え合うがゆえに生まれる舞台だ。2人の姿に自然と涙が出てくる。

 浪曲は歌うでなく「うなる」という。うなるは漢字で書くと口偏「念じる」で「唸る」。人間の喜怒哀楽を情念に乗せて演じる芸なのだ。

 そしてこの日のトリが玉川太福。演目は「祐子のスマホ」。96歳にして携帯電話をスマホに機種変した祐子師匠と、一緒に携帯電話ショップを訪れた太福とのやりとりを実話に基づいて描いた新作浪曲。自らが主人公の話に曲をつける祐子師匠の顔に時折、笑顔がこぼれる。

 料金を分割払いにする際に太福が、「2年の12回払いにするか、4年の48回払いにするか悩んだ」の下りで観客は大爆笑。ご本人が目の前にいるからなおさらおかしい。

 最後にマイクを向けられた祐子師匠は「きょうが一番嬉しい。幸せだな。体に気をつけて皆さんに喜んでいただけるよう頑張ります。あと3年は生きていたいなぁ」

 付け加えて「太福さんと小そめはこんなおいぼれババアの面倒を見てくれていつも感謝。感謝の神様です。2人は私の宝物です」

 祐子師匠は公演後、木戸口まで出てきて観客をお見送り。

 義理と人情はかりにかけない、どちらも尊ぶ浪花節。

 祐子師匠、また会いに伺います。

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