市川中車 二代目・猿翁さんに届け「逆風でも進む」 天国の父へ…澤瀉屋一門で魂込め

[ 2023年9月17日 04:45 ]

藤間紫さんと笑顔で2ショットの市川猿翁
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 歌舞伎俳優の市川猿翁(いちかわ・えんおう、本名喜熨斗政彦=きのし・まさひこ)さんが13日に83歳で亡くなったことが公表されてから一夜明けた16日、京都・南座では長男の市川中車(57)や孫の市川團子(19)をはじめとした澤瀉(おもだか)屋一門が「九月花形歌舞伎 新・水滸伝」に出演した。また猿翁さんの元妻で女優の浜木綿子(87)は追悼コメントを発表した。

 猿翁さんが死去した13日以降も舞台に立ち続けている中車と團子。「逆風でも進むのだ!」という中車の力強いセリフが、大きな試練の中にある澤瀉屋と重なり観客の胸を打った。

 故人が2008年に初演し「三代猿之助四十八撰」のひとつに数えられる「新・水滸伝」。冒頭のタイトルコールでは「スーパーバイザー市川猿翁」と読み上げられ、会場からは「三代目!」「澤瀉屋!」の大向こうが飛んだ。猿翁さんの“代名詞”と言える宙乗りも登場するスペクタクル満載のステージ。主演の中村隼人(29)による飛龍に乗った宙乗りは、通常なら拍手喝采になる場面だが、この日はすすり泣く観客もいた。

 気丈に舞台に立ち続ける澤瀉屋一門。多くは猿翁さんが育ててきた弟子たちだ。猿翁さんは歌舞伎の家の出身ではない若い俳優を積極的に弟子に取り、自分の舞台に出演させることでその才能を磨いてきた。現在放送中のTBSドラマ「VIVANT」に出演し注目を集めている市川猿弥(56)、市川笑三郎(53)も猿翁さんの薫陶を受けた。観劇した70代女性は「皆さんの演技で猿翁さんの思い出がこみ上げてきました」と涙を流した。

 澤瀉屋関係者によると、猿翁さんは最近も一門の活躍を見守り続けていた。昨年3月には、歌舞伎座で上演された「新・三国志」をお忍びで観劇し、團子の芝居に熱視線を送った。ポスターのビジュアルのチェックなどもしており、歌舞伎界とも関わりを持ち続けていたという。同関係者は「体の自由は利かなくてもエネルギーは常にあふれていた。役者とも連絡を取り相談に乗ることもあったようです」と話した。

 今年5月には副将格として澤瀉屋を支えた弟の市川段四郎さんと、その妻が亡くなった。7月には、名跡を譲ったおいの市川猿之助被告(47)が自殺ほう助の罪で起訴された。澤瀉屋は崩壊危機にあると言われる。それでも中車と團子を中心に再出発した。その奮闘を天国の猿翁さんが見守っている。


 ≪トークショー 出演取りやめ≫ 南座では、18日に演者によるトークショーが予定されていたが、中車の出演が急きょ取りやめとなった。猿翁さんの訃報を受けての対応とみられる。猿弥、笑三郎ら他の出演者については予定通りとなっている。

 市川 猿翁(いちかわ・えんおう、本名喜熨斗政彦=きのし・まさひこ)1939年(昭14)12月9日生まれ、東京都出身。三代目市川段四郎の長男。47年に初舞台を踏み、三代目市川團子を襲名。63年に三代目市川猿之助、2012年に二代目猿翁を襲名した。68年から宙乗りを始め、5000回を超えた宙乗りはギネスブックにも登録。86年には「スーパー歌舞伎」も創設し、歌舞伎の新たな道を切り開いた。00年に紫綬褒章受章。10年には文化功労者に選出。屋号は澤瀉屋。

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