「厳しいスタート」も…藤井2冠は前を向く 史上最年少3冠へ次戦“天敵”豊島を討つ

[ 2020年9月23日 05:30 ]

王将戦 挑戦者決定リーグ

羽生九段に敗れ、肩を落とす藤井2冠(撮影・吉田 剛)
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 藤井聡太2冠が王将戦挑戦者決定リーグの初戦で羽生善治九段に敗れた。棋聖、王位に続く高校生での3冠に向けて黒星スタートとなったが「いい状態で次の対局に臨みたい」と前を向いた。

 敗色濃厚の73手目▲3七王を指し終え、外していたマスクを再装着した藤井は形づくりの逃避行を終えて駒を投じた。しきりに首をひねり、そしてうなだれる。視線は焦点を定めないまま虚空をさまよっていた。

 「(羽生の)△4八歩(54手目)から△8六飛車(56手目)というのはちょっと見えてなかったので…」。苦悩の表情を微妙に隠しつつ衝撃の告白だ。中盤の出口で仕掛けた53手目の▲4四角で4筋の歩を払ったまではよかったが、その代償として4八に歩を打つ可能性を羽生に与えてしまった。読みにない手。痛すぎる失着。「飛車をさばかれてみると少しこちらの角が働く形が難しいので、苦しくしてしまっているのかなと思いました」。形勢は徐々に永世7冠資格保持者へと傾いていく。以降は亀裂の修復どころか、差は広がる一方だった。

 対局開始30分前。特別対局室に入った藤井は規定通り、迷うことなく上座に就いた。未放映対局を除く過去3度の対決ではいずれも下座。新旧天才棋士のつばぜり合いは、この日で立場が入れ替わった。盤上に置かれた駒箱から駒を取り出すしぐさに、ぎこちなさはもう見られない。

 苦手なはずの横歩取りの誘いを堂々と受け入れる。2冠のプライドと探究心の極みがあえて困難な道を選ばせたのだろう。つい10日前、JT杯で豊島将之竜王(30)に敗れた同じ手順にもかかわらず、だ。しかし誤算があった。「その後、変化が多い。難しいのかなと思いました」。29手目の▲3三飛成は意表を突く角との交換。その直前、羽生の2三に浮いた金が問題だと主張する意図だ。そこに軽微な誤算があった。「こちらがその形をとがめるというのも具体的には難しいのかなと」。方針転換で9筋の端攻めも敢行したが「不発になってしまって」。35手目には角2枚を横に並べ、一見迫力ある布陣を敷いたが、これも空振り気味。序盤の細かいやりとりから羽生のプレッシャーを受け続け、はね返す体力は徐々に失われていった。

 これで羽生戦は初黒星。6局で争う挑決リーグとしても痛い始動だ。しかも次戦(10月5日)の相手は過去5戦全敗の豊島。ここで連敗してしまうと、高校生3冠への道は極端に狭まってしまう。「厳しいスタートにはなりましたが、またいい状態で次の対局に臨めるようになんとかしたいと思います」と締めた藤井。痛恨の敗戦後にもかかわらず、口調には活力が残されていた。この程度でくじけてはいられない、と。 (我満 晴朗)

 《藤井と王将戦》藤井は第69期の昨年11月、挑戦者決定リーグに初出場し、広瀬章人八段と同じ4勝1敗で最終日を迎えた。勝てば渡辺明王将への挑戦権をつかむという大一番は126手で広瀬が勝利。詰将棋解答選手権5連覇で抜群の終盤力を誇る藤井が広瀬の盲点を突く攻めを受け損ない、タイトル初挑戦を逃した。
 翌12月、地元名古屋市であったイベントでは2019年の印象的だった将棋としてこの広瀬戦を挙げ、「現状の課題を知った。来年に生かせれば」。序中盤偏重のままきた、持ち時間の使い方を再考するとした。

 第67期はデビュー以来の歴代最多29連勝を樹立後、菅井竜也八段と1次予選7組決勝で対戦し、公式戦では自己最短81手での敗戦だった。第68期は1次予選6組初戦で元王将の南芳一九段に自己最長230手で逆転勝ちし杉本昌隆八段との千日手指し直しの末の師弟戦を経て、準決勝で井上慶太九段に137手で敗れた。その3月28日は、中学生棋士として最後の対局だった。

 ▼王将戦 王将と挑決リーグ優勝者が例年1月から3月にかけて7番勝負で激突。持ち時間は8時間。タイトル戦では名人戦に次いで歴史が長く1951年から始まった。番勝負の各局で勝者が会場のご当地色をヒントにした仮装で記念撮影するのが恒例。ユニークな構図から棋士やファンの間で「勝者の罰ゲーム」と称されている。

 ▼王将戦の挑戦者決定リーグ 例年9~11月に実施。シードされた前期リーグ上位4人(順位1~4位)と、予選を勝ち上がった3人(同5位)で争う。リーグ戦で同率首位が複数出た場合は原則として順位上位2人による1局だけのプレーオフが行われ、挑戦者を決める。
 

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