勝負のポイントを谷川九段が解説 羽生九段、こん身の踏み込み 印象に残った4八歩

[ 2020年9月23日 05:30 ]

王将戦 挑戦者決定リーグ

A図(54手目△4八歩まで)
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 羽生善治九段と藤井聡太2冠の対局で開幕した王将戦挑戦者決定リーグを谷川浩司九段(58)が展望した。勝負のポイントを「羽生九段の踏み込み」と指摘。7人が総当たりで6戦するリーグ、挑戦者争いの本命を豊島将之竜王、2番手を羽生、3番手藤井とした。 (構成・筒崎 嘉一)

 羽生九段の誘導で横歩取りの最新型に進みました。28手目△2三金の飛車取りに▲3三飛成は一番強い指し方でした。もちろん▲3五飛と穏やかに指す手もある。でも長考とも言えない19分での決断ですから藤井2冠の想定内の進行でしょう。

 印象に残ったのが羽生九段の54手目△4八歩(A図)です。8四の飛車の横利きを通す△6五歩も有力で、曲線的な指し回しがいかにも羽生九段らしいのですがしばらく中盤戦が続く。4九の金をつり上げてから△8六飛。さまざまな選択肢がある中で一直線の寄せ合いを選んだ気持ちの強さが勝利を呼び込んだと感じました。

 渡辺王将以外の全タイトル保持者がリーグにそろいました。タイトルホルダー以外の4人も全員経験者。「死のリーグ」と呼ばれるレベルの高さが証明されました。

 注目の藤井2冠が引っ張る存在であることは間違いなく、21日に叡王を獲得した豊島竜王との差もそんなにはありません。ただ、羽生九段が19日に2年ぶりのタイトル戦となる竜王戦挑戦者に決まりました。そしてこの日の緩みない指し回し。予想は豊島竜王を本命に2番手羽生九段、3番手藤井2冠とします。

 羽生九段は数年前までなら本命でしたが今月27日で50歳になる。大山康晴15世名人は50代で王将3期など通算11期を獲得しました。59歳で獲得した第31期の王将位はタイトル獲得の最年長記録。その通算80期を超える99期の羽生九段がどう50代を戦うのか。

 竜王戦7番勝負と日程が重なるリーグを6局戦うのは大変ですが、相乗効果を期待できます。羽生九段は記録にこだわるタイプではありませんが通算100期を意識しないはずがない。リーグをのびのび戦えるでしょう。楽しみになってきました。

 藤井2冠とは9日の順位戦で対戦しました。持ち時間各6時間の対局の50手目、1時間44分の長考は藤井2冠にとってデビュー以来の自己最長記録だったとか。手洗いに行く以外は前傾姿勢でずっと集中していたのが印象的でした。

 若いからできることでしょうが「頭の体力もあるんだ」と感心しました。想像ですが、考えれば考えるほど浮かんでくる指し手を追求することが楽しくて仕方ないのだと計11時間あまり、将棋盤を挟んで感じました。

 今日は負けましたが羽生九段が練り込んできた横歩取りを体験できた。通算勝率8割超えの藤井2冠ですが、こと横歩取りでは4勝6敗。それでも受けて立った姿勢はまさにタイトルホルダー。長い目で見れば収穫はあったかと思います。

 《過去の羽生VS藤井》
 ▽朝日杯オープン戦準決勝=藤井五段○―●羽生竜王(18年2月17日) 公式戦初対局となった一戦。先手は藤井で、中盤すぎまで互角の展開が続く。藤井の妙手から流れが変わり、終盤は一気の寄りで勝利。決勝戦でも広瀬章人八段を下し、史上最年少での一般棋戦優勝と同日付での六段昇段を達成。

 ▽第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグ=藤井七段○―●羽生九段(19年10月21日) 先手は羽生で、飛車先の歩を突き合う相掛かり戦法を選択。羽生の攻めを藤井が受ける展開が続くなか、形勢は徐々に藤井へ。最後は羽生の激しい抵抗を落ちついてさばき藤井が勝利。

 ▽第61期王位戦挑戦者決定リーグ=藤井七段○―●羽生九段(20年2月18日) 先手の藤井は得意の角換わりに進行。中盤で早くも角金交換を決断して攻めに転じるも、羽生の柔らかい対応に手詰まる場面も。それでも飛車をしつこく追い回して捕獲し、そこから一気の寄りで勝利。

 ※肩書、段位はいずれも当時

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