すれ違って

[ 2019年10月28日 09:00 ]

考える藤井七段(撮影・我満 晴朗)
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 【我満晴朗 こう見えても新人類】10月21日に行われた将棋の第69期大阪王将杯王将戦・挑戦者決定リーグ。すでにご存じの通り、初出場の藤井聡太七段(17)が永世七冠の資格を持つ羽生善治九段(49)に快勝した。

 対局の内容や棋譜などは当日の速報や翌日の紙面に詳しいのでここでは触れないが、藤井にとっては単なる1勝ではない。並み居るA級棋士を相手に6戦中4戦して3勝1敗の好成績。21日時点では暫定首位、つまり渡辺明王将(35)への挑戦権を得る最短距離に立った。しかも残る2局はいずれも先手番。来年1月初旬予定の七番勝負開幕戦では17歳5カ月の史上最年少タイトル挑戦者となっている…というのもあながち夢物語ではない。

 ところで、羽生―藤井戦はこの日が公式戦2度目の対決。過去1度は昨年2月17日の朝日杯オープン戦準決勝だった。この日は冬季オリンピック平昌大会でフィギュアスケート男子フリーが開催されており、羽生結弦が2大会連続の金メダルを獲得。一方で将棋の羽生は藤井に敗れた。「羽生が勝って羽生が負けた」というややこしい1日として記憶に残っている方も多いと思う。

 2016年10月1日付でプロになった藤井にとって、以降3年少々で羽生と対戦したのは以上の2回だけなのだが、過去の記録をさかのぼってみると、羽生または藤井が「あと1勝」していれば激突していたケースが3回ある。

 最初は17年10月31日に指された叡王戦段位別予選Aブロック決勝の羽生―深浦康市九段戦。羽生は勝てば本戦トーナメントで当時四段の藤井と当たることが決まっていたが、深浦の前に敗れ去っている。

 2度目は18年5月24日の王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦。勝者が藤井と対戦するこの手合も羽生―深浦で、またもや深浦の勝ちだった。

 そして3度目。今年の6月3日に行われた王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦の藤井―佐々木大地五段戦だ。ここで藤井が勝ち名乗りを受ければ、次戦の相手はなんと羽生。担当記者としてはかなり色めき立ったのだけど、勝ったのは深浦の弟子でもある佐々木だった‥。

 つまり、過去3度のニアミスで直接対決(という表現も変?)が成らなかった2人。次の黄金カードはいつになることやらと悶々(もんもん)思いを巡らせていたら、あらら両者とも王将リーグに勝ち進み、マッチアップが再現されてしまったではないか。前述の朝日杯とともに現場で取材していた筆者は、大げさかもしれないが歴史的現場に立ち会えた幸運をジワリとかみしめている。

 と、そんな自己満足に浸りながら2人を追いかけていた当日。感想戦中にふと周囲を見渡すと、テレビの取材カメラが皆無だった。なんでだろう?今後長きにわたって語り継がれること必至の名局だったのに。

 もったいないなあ。(専門委員)

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