江波杏子さん急死 76歳、女賭博師「昇り竜のお銀」役で人気

[ 2018年11月3日 05:30 ]

りんとした美しさが光った「女賭博師」(67年) (C)KADOKAWA 1967
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 映画「女賭博師」シリーズの“昇り竜のお銀”役などで知られた女優の江波杏子(えなみ・きょうこ、本名野平香純=のひら・かすみ)さんが10月27日午後9時6分、肺気腫(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪のため東京都内の病院で死去した。76歳。東京都出身。葬儀、告別式は故人の遺志で近親者で執り行った。60年代にヌードを披露するなど時代を先取りした大スターだった。

 江波さんの死は所属事務所もショックを隠せないほど突然に訪れた。10月26日に呼吸が苦しいと訴え、知人が救急車を呼んで病院に緊急搬送。そのまま入院したが、回復せず、最後は弟ら親族がみとった。

 関係者は「肺を患ってはいましたが、日常生活に支障もなく、仕事もこなしていました。酸素ボンベを携帯することもありませんでした。突然のことで驚いています」とスポニチ本紙に語った。その言葉通り、同22日までNHKのラジオドラマ「FMシアター 罵詈(ばり)雑言忠臣蔵」(12月8日放送)の収録に参加していた。生涯独身を通し、事務所には「亡くなった時は密葬で」と伝えていたという。

 父は飲食業を営み、母は戦前の東宝女優だった江波和子。5歳の時に亡くなった母が女優だったことは15歳になるまで父から知らされなかったという。その母の後を継いで女優を目指したのは16歳だった高校在学中のこと。1959年6月に大映の第13期ニューフェイスに応募。「17歳以上」という規定があったものの「17歳」で押し通して合格した。

 60年に「明日から大人だ」でデビュー。入浴中に転倒して負傷した若尾文子(84)に代わって主演した「女の賭場」(66年)が大ヒット。翌67年の「女賭博師」に結びつき、71年まで計17本に及ぶ人気シリーズになり、江波さんは大映の看板スターに躍り出た。ちなみに東映が藤純子(72=現・富司純子)主演で「緋牡丹博徒」を製作したのは「女の賭場」の2年後だった。

 大映倒産(71年)後の73年には「津軽じょんがら節」に主演。訳あって東京から帰郷したヒロインを好演し代表作の一つとなった。2011年には毎日映画コンクールで田中絹代賞を受賞している。60年代には上から89・57・90の見事な肉体美が篠山紀信氏(77)ら気鋭の写真家たちの人気の的となり、ヌードも披露するなどグラビアでも魅了した。

 最近は名バイプレーヤーとして活躍。NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」や「べっぴんさん」、今年も映画「娼年(しょうねん)」やテレビドラマ「限界団地」などに出演。年内放送のドラマも2本あり、来年1月11日スタートのNHK・BSプレミアム「小吉の女房」が遺作となる。

 ◆江波 杏子(えなみ・きょうこ)1942年(昭17)10月15日生まれ、東京都渋谷区出身。曽祖父は新選組の沖田総司をかくまった植木職人。「杏」は室生犀星の「杏っ子」から取った。「(映画監督の)衣笠貞之助先生から足袋をはくときの女の動きを教えていただいた」など貴重な証言者でもあった。

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